No.1 江渡春美様「普段からのコミュニケーションが重要」2/2

インタビュー

シンカナース・スペシャルインタビュー。1/2に続き、元・昭和大学附属烏山病院師長の江渡春美(えと はるみ)様のお話をお届けします。この<後篇>では、看護師採用活動の際に心がけていることや、マネジメントの極意、これからの看護業界はどうあるべきかなど、示唆に富んだ内容が満載です。

〜 看護師採用活動とは、主にどういうことをされていたのですか?

江渡:はい、看護大学や専門学校へお伺いして、就職担当教授やキャリアセンターの担当者向けに病院紹介をします。1年間の訪問校は約160校で就職フェアは70回ほど参加をしてきました。病院紹介のパンフレットの作成やホームページの作成にも関わり、学生がイメージしやすい工夫をしてみました。現場の生き生きした新人の写真は 欠かせませんね。これも楽しみながら出来た仕事です。

学生や教員に話す内容は主に “教育” のことです。学生さんはやはり知りたいんですよ、自分が実際に看護師になった時に、どんなことをやるのか、卒後1年間をどうやって過ごすのか。そのイメージをできるだけ具体的に持ってもらえるようにすることが大事です。職場の雰囲気であったり、上下関係や先輩のことだったり、お休みの日数だったり、もう色々。もちろん、病院がどんな看護をしているのかということは当たり前です。仕事に就いてから1年間のカリキュラムを月ごとに分けて説明し、チーム編成や役割分担がどうなっているのかを、かなり具体的にお話しますね。さらに病院はどんな看護師を育てて行きたいかという将来のイメージも重要なことです。

そこまで詳しく話すのですか?

江渡:はい、そうですね。30分以内で説明することを心がけていました。なんとなくのイメージはあるけど、自分が具体的に何をするのか分からない学生は結構います。だからこそ、病院が新人の皆さんに施す “教育体制” のことを中心に、看護師の心づもり、姿勢なども入れるようにします。看護師の仕事は患者さんの健康問題を解決することですから。そうは言っても限られた時間の中で全てをパーフェクトにこなすなんて難しい。でも、そんな中でどうやったらベストな答えを出せるのかを考えて実行していくのがすごく重要ですね。看護師は人の気持ちを汲み取れる人であってほしいと思っています。今は核家族が多く、身近に高齢者がいない中で成長していく人がほとんどですから高齢者への対応はイメージできるように具体的にしていくようにしました。

それでも入る前と入った後のギャップに戸惑う人もいるのではないですか?

江渡:そうですね。学生にとって、今は売り手市場な環境ですから、入る前にはチヤホヤされていたのに、入った後は一転、厳しい態度の先輩に戸惑ったりすることもあります。そして実際、相当量の業務をテキパキとこなさないとなりません。だから重ねて申し上げますけれど、最初の1年間の過ごし方、病院はあなたをこんな風に育てていきますよ、ということをきっちり新人に向き合ってアナウンスすることがとても重要になってきます。

大変な職場ですね。

江渡:はい。安全性や透明性の徹底はもちろん、コンプライアンスに則った対応など、今まで以上の確認項目も多くなりましたからね。周辺業務の仕事量も増えました。

そんな中、どうやったら明るく、モチベーションを保って働けるのでしょうか?

江渡やはり、普段からのコミュニケーションが重要でしょうね。上司と部下、同僚、医師など様々な立場にいる人同士が、お互いの立場や気持ちと向き合えるかじゃないでしょうか? 私は師長という立場で、現場のスタッフ一人ひとりと向き合って、その声をきちんと受け止めることや、その場その場での的確なアドバイスをするように心がけて。もちろん、師長として、どういう看護体制を目指しているか、そのヴィジョンを語れるかどうかも非常に重要な要素ですね。

モチベーションだけで続けていくことも難しいですよね?

江渡:はい、おっしゃる通りです。もちろんそれだけではなく、今までの日本では “看護師がなんでもやる” と言う暗黙の前提があったんですね。チーム医療が言われている今日では、多職種で協働する事が重要になります。協働には相手の業務を理解することから始まるという理解も浸透させていかないとなりません。看護師が必要以上に消耗しないような、安心して安全に働けるような仕組みを作っていくことがこれからの医療に求められると思います。

<シンカナース編集長 インタビュー後記>

看護が安心し、安全に働けるような仕組みを作っていくということがこれからの医療に求められるというお話しをいただき、看護の3A(安全、安心、明るい)を実現することはやはり大事であると実感しました。看護師の採用を、看護を知らない紹介会社に任せることは危険だというお話しも江渡師長とはさせていただきましたが、現状では多くの病院で紹介トラブルがおこっているのも事実です。江渡師長は、自らが病院の受け入れ体制、看護の価値観を160校もの看護学校、70回もの就職フェアで直接看護学生に語りかけることにより、なんと年間で400名もの学生を確保するという結果を出されました。看護師の採用に困っている多くの病院が参考に出来るポイントが詰まっているのではないかと感じます。就職先を考える時「こういう人のいる病院で働きたい」「この価値観に共感出来る」という基準が増えることで、看護の離職率低下にも繋がるのではないかと祈念しています。江渡師長さん、貴重なお話しをしていただき、本当にありがとうございます。

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