No.1 江渡春美様「やはり現場スタッフの力はすごい」1/2

インタビュー

記念すべき第一回目のインタビューは、元・昭和大学附属烏山病院師長の江渡春美(えと はるみ)様です。人材不足が加速していく医療・介護の現場において看護師の役割とは? そして、その業務環境をより進化させていくためにはどのような取り組みが必要なのか。看護の現場から看護師の採用事情までを知り尽くした江渡師長よりお話を伺います。

〜江渡師長が看護師になろうと思ったきっかけは何でしょうか?

 

江渡:中学生の頃から “ナースになりたいな” と思っていました。祖母が乳がんで入院し、手術をしたことがあり、学校帰りに病室に寄ることも多かったので、医療の現場を間近で見たことが影響しました。祖母の術後ケアを丁寧にしてくれた看護師さんの事は今でも覚えていますし、看護師の役割に興味を持ったことが最初の動機となっています。今はこうして師長として管理職についていますけど、当時は師長という役割があるなんて思ってもみなかったですね(笑)。

では、看護師になられてから現場スタッフとして接していた師長さんの姿はどのように見えていましたか?

江渡:一番の印象は、“患者さんのベッドサイドにあまり行かないんだ?” という印象でした。その頃はマネジメントの知識はないのでそのように思ってしまったのでしょう。しかし、私たちが患者さんに、どう接して、何をどうやっているのかを師長は常に知っていたので当時は不思議でした。今となっては、その理由もよく分かります。師長は患者さんからの情報や評価・反応等多くのことを知っています。そして、病棟の特徴や役割に沿って病棟運営をしていた訳ですね。そうした中で、30代の前半で主任となり38歳で師長職を担うことになりました。

師長歴の方がスタッフ看護師を行っていた期間より長くなるんですね。師長としての立場から見た臨床現場はいかがですか?

 

江渡:一言で言うと、やはり現場スタッフの力はすごいと思います。限られた人数の中で、その日のうちにやらなきゃいけないケアは確実にやり切らなければなりません。病棟にはリーダーナースがいます。日々うまく緩急をつけながら指示を出していますし、医療安全や倫理の視点を持ちながら24時間患者さんを見守っています。

看護職の活動の場は病院や地域・訪問看護など多岐に渡っていますがどこでも人材不足が続いています。そのような中で江渡師長は採用のご担当も任されていたそうですが、それはどういった経緯でしょうか?

江渡:昭和大学では当初、人事課に専門の担当者を配置し行なっていました。しかし、看護ってどういうものなのか、学生にきちんと説明しないと就職先として選んではもらえない時代になってきた時に診療報酬改訂があり7対1看護加算が導入され、どの病院も看護師の獲得に力を入れざるおえなくなりました。 採用にはブランド力・広報力・資金力の3つが必要であると言われています。その中の広報力の1つとして昭和大学附属病院の看護の広報活動について看護職が直接携わることで、採用に貢献しようということになりました。それから8年間、採用担当をやっています。そして毎年約400名の新人看護職の採用を続けて来ました。

今回はここまでとなります。<前篇>では江渡師長が看護師になるきっかけや、師長になるまでのストーリーを中心にお話ししてもらいましたが、後編は看護師の採用をどのように実施してきたなど具体的な内容になります。そして、マネジメントの極意、これからの看護業界はどうあるべきかなど、看護師が進化していく上で参考になる情報が満載となります。

<シンカナース編集長 インタビュー後記>

江渡師長と初めてお会いしてから既に8年ほど経ちました。最初にお会いした時の印象は「看護界にビジネスマインドを持ちながら採用活動をしている綺麗な師長さんがいるなんて凄い!」ということでした。その後、お話しを伺うたびに、常に前向きで看護、看護師の未来を明るく育もうとされており、看護師、看護管理職だからこそ出来る採用活動があるということを学ばせていただいている、尊敬する看護界の先輩です。看護師不足が起こる背景には、3K(きつい、汚い、危険)と言われる職場環境が慢性化しているということも事実です。ただ、それを看護管理者が放置し、諦めながら看護を実践することをスタッフに求める環境と、スタッフの能力を認め、どうすればより良い看護が提供出来るのかを常に模索されている管理者の元で勤務する環境では、看護師としての成長、希望に大きな影響があるのはいうまでもありません。江渡師長のように穏やかでありながら、熱く看護の未来を語っていただける方は看護界を明るく照らす光だと感じます。

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