前編に引き続き、セコメディック病院の看護部長をされている伊東都様のインタビューをお届けします。
後編では、看護部長の考える看護や看護助手さんについてなどをお伺いしています。
一言一言を大切に、患者さんを守る看護
部長のされたい看護というものは?
伊東:患者さんが言ってることの一言をすごく大事にしていく、と言う事ですかね。
でも患者さんが良いって思うことを何でも受け入れるのとは違います。
例えば患者さんが「その手術は怖いから治療を受けたくない」と言った時に、「じゃあ手術辞めちゃえばいいね」もしくは「ああそう怖いよね、でも頑張って」、って終わりしない。その一言にも色々な気持ちが含まれているはずなので、何が怖いのか、情報が足りてないのか、先生の説明が悪いのか、など、かなり探っていくのです。本人だけじゃなくて家族にもアプローチしてみます。
そうやって患者さんを守る事を一番看護としては大事にしたいかなと思ってます。
セコメディック病院で目指されている“心温かで愛情ある看護ができる看護師”の精神的な部分に関しては、どのように伝えていらっしゃいますか。
伊東:臨床現場では看護師は常にいろんな人とチームで仕事をして居ます。その中に先輩もいれば後輩もいる。チームで働いている以上、絶対どこかで看護を振り返る場面が出てくると思うんです。
例えば、「こういう風にして話をしたら、患者さんはこんな反応でした」という申し送りに対して「そういう風に言ったら誰だって怖がるから、ちょっともう一言あった方がよかったんじゃない?」とか、「この患者さんはこういうことが心配だから、ここまでは一緒にくっついて歩いていったらいいよ」とか、そういう風に患者さんのことを話す中で、先輩から自然に後輩に伝わるものだと思うんですね。技術ではないところを学ぶという意味合いも臨床はあると感じます。
病院全体で軸となる精神を共有していることにより、自然と先輩から後輩への指導方法や内容も、その軸に沿ったものになっているということですね。
伊東:看護って本を見たら全てがわかるものでもないと思うんです。
根幹は同じかもしれませんけれど、多分国や宗教、育った環境等によっても看護の価値観や人との距離感に違いが出てくるでしょうから。
そして、その違いは臨床に出てすぐの時は、表出しやすいと思うんです。
でも、臨床経験を積む中で、様々な理念や価値観というものを自分の中に段々と取り込んでいき、「どうしたら患者さんが一番喜んでくれるのかな」と考えて、自分で自分なりに料理していく、それが看護じゃないかなと思います。
業務、文化、価値観の多様化も柔軟に
こちらの病院には看護助手さんはいらっしゃいますか?
伊東:今は看護助手30名ほど居ます。
看護助手と看護の関わり方はどの様なものでしょうか。
伊東:看護助手の方には看護師の手が足りていないところを助けて貰っています。
業務の内容的には法的な問題もあるので任せられるものは限られていますが、看護師も看護助手も病院内では同じサービス提供者ですので、患者さんに嫌だなーって思わせないような対応をするっていう点では患者さんに対する向き合い方は一緒なのかなって思いますね。
制度が変わって役割の拡大がされていくとしても、トレーニングを積めばできるものも結構ありますので、看護助手さんのできることが増えるのは良い事だと感じます。
今後、海外の方と医療現場で患者と看護師、もしくは同僚として関わることも増えてくると思います。その時、どの様にコミュニケーションをとっていったら良いでしょうか。
伊東:やっぱり言葉が一番問題ですよね。
当院では中国出身の看護師が4人、回復期、手術室、脳外科、消化器外科で働いているんです。みなさん日本語が結構上手で、気持ちも伝えられるんです。
中には旅行者ですとか、日本語は喋れないけれども日本で働いていらっしゃる方も入院していらっしゃることがあるので助かっています。彼らが通訳をしてくれたことで、ちゃんと治療まで結びついたってこともあります。
今後は外国の方と一緒に働くこと、患者さんが外国人といったことは当然起こり得ることですので、その時にちゃんと医療が提供できるように、通訳できる人が院内に何人かいるといいなって思います。
やはり、看護師も変わり続けなければなりませんね。知識にしても経験にしても、看護師が進化する必要性に関してはどのように考えられますか?
伊東:最近はモチベーションが高くて、認定看護師や専門看護師をなどを目指している人が最近多い様に感じます。なので、それを最初から意識して自分の配置ですとか研修の希望を出してくる人が増えました。
以前までは、上を目指すにしても自分の希望ではなくて周りからの推薦があってなるものだと言う認識が多かったと思うんですよね。でも今は、自分はこの分野で活躍したいので異動させないでくださいとか、そういった人が結構増えている気がします。
ナースも自分のキャリアを考える時代になってきているのですね。
伊東:そうですね。もうかなり変わってきています。
採用面接をしていても、5年後にはこの認定を取りたいと思っていますとか、より専門性を極めたいって思う看護師が増えていますね。
個人的には、既往歴がいくつもある人がオペを受けることも現実にありますし、色々な科を経験してするとその分、先生も含めて色々な人、職種と働けますしから、そういう意味ではいろんなことを知っていた方がいいんじゃないかなって思います、でもその反面、どっかに長けていれば、足りないところはそのチームで補ってくれるっていう今の医療の仕組みがありますから、皆がすべてのことを知らなくても、どこかに長けてればより良いチーム医療が提供できるのかなと思うこともあります。
私自身、実は緩和ケアの認定看護師でもあります。
例えば緩和ケアを目的に患者さんと関わる時にでも、本当に痛みだけに注目してたらいいかっていうとそんなことはないんですよ。痛み一つ取っても、身体が痛いこともありますが不安が痛みとして表出されていることもありますから、色々なところを見ていかないといけない。
なので、一番の理想は色々知っていながらも、何か長けている分野を持っている状態ではないでしょうか。
看護師も生き生きと
ユニフォームが特徴的ですね。重要な役割があるんでしょうか?
伊東:前まではうちも白のユニフォームを使っていたんですが、数年前に偶然見つけまして、ちょっとうちの看護師さんに着せたいなと思って導入しました。
色々なところで白以外であったり、スクラブ型のユニフォームは導入されていますが、やっぱり看護師さん達がきれいに、生き生きとして見えますよね。
その人の顔の色、雰囲気に合う色ってやっぱりありますから色も青と赤と2種類、好きなのを選んで貰っています。
素敵。結構いい気づきですね。
新人看護師に向けてメッセージ
伊東:看護は社会的にすごく意味がある仕事だと思っています。学ぶこともいっぱいあるので、新人のみなさん、一緒に学んでいきましょう。
シンカナース編集長インタビュー後記
伊東部長は、お会いした瞬間に周囲が明るくなるような笑顔で取材スタッフを迎え入れてくださいました。
インタビューの冒頭から「プサマカシ」という助産師の話をきっかけに、この職業を選ばれた!ということで「私と同じだ!」と心をつかまれてしまいました。
常に学びを止めることなく、資格もたくさん取得され、更に伊東部長自ら「必要かな?」と思われたことは積極的に新たな知識を獲得されている。
学びを止めないだけではなく、それを現場に活かしたい!という思いの強さを感じさせていただきました。
やはり現場があってこその看護!だということを実感させていただくお話であったと大変感銘を受けました。
看護は、看護管理者の意識で絶対に明るい未来に向かう!と信じていた通りの看護管理を実践されている伊東部長にお会い出来たことは、大変有り難いことだと感謝しております。
伊東部長、この度は明るく楽しくお話をお伺いでき、本当にありがとうございました。
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No.25 伊東都様(セコメディック病院)前編「人の縁に導びかれて部長へ」