「バイタルとってきて下さい」と言われたら、体温・脈・血圧・SpO2などを測定していると思います。
呼吸数って、学生の実習では測定していましたが、臨床ではあまり測っていないのが現状ではないでしょうか。
呼吸数を測定しないのは何故か?
SpO2を測定すると酸素化の状況を観察することができます。
SpO2が正常範囲内だからオッケーと言いたいところですが。。。
はたして、これをもって「呼吸数の測定をスキップしても良い」と考えて良いのでしょうか。
酸素化とSpO2の低下のメカニズム
肺で酸素が血液中に取り込まれて酸素化され循環していくことは、説明するに値しないほど当たり前の話ですが、 SpO2が下がる前にその兆候を知ることができたら、もっと早期に対応できるのではないでしょうか。
それが、呼吸数なのです。
SpO2が下がり始める前後に呼吸数の増加を認めることがあります。
この代償機転の働きによって、呼吸数が増加しSpO2が正常範囲に保たれ、一見、SpO2の値だけ見ていると「異常なし」となってしまうのです。
その後、呼吸状態が悪化すると代償機能が破綻して呼吸不全の状態へと変化していきます。
つまり、呼吸の観察は、呼吸機能の異常早期発見の重要なカギとなるのです。
SpO2は、最終的な結果でしかないのです。
呼吸の何を見るか
1)呼吸数
呼吸数は、極めて重要な観察項目の一つであることは前述した通りです。
1分間あたりの呼吸数を数値化して記録しておくことで、前回との比較ができます。
・正常範囲(15~20回/min程度)
・頻呼吸(24回/min以上)
・徐呼吸(12回/min以下)
・無呼吸(呼吸が10秒以上停止した状態)
2)呼吸音
肺雑音やエアー入り、左右差はないかなど
3)呼吸様式
努力呼吸:呼吸補助筋使用の有無、肩呼吸の有無、陥没呼吸、胸郭の動きなど
チェーンストークス呼吸、ビオー呼吸、クスマウル呼吸など
※死戦期呼吸(下顎呼吸、鼻翼呼吸、あえぎ呼吸)の場合は、心肺停止前後に見られるもので、直ちに心肺蘇生が必要となります
4)SpO2測定
終わりに
呼吸は、生命維持に欠かせない機能の一つです。
呼吸停止となれば、数分後には心停止がやってくることは言うまでもありません。
心肺蘇生は、人的リソースや使用する薬剤、機械も沢山必要となります。
また、タイムプレッシャーも大きくかかります。
そのような状況を回避するためにも呼吸は十分に行いたい観察の一つになるのではないでしょうか。
この呼吸の観察を含むトレーニングができる研修コース(ナースのための心停止回避コース(INARSコース))についての記事も合わせて読んで頂けますと幸いです。
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