No.18 溝呂木大介様・鈴木夕輝様(ローズ療養通所介護)「あったかい家庭的な場を作りたい」1/4

インタビュー

11月から始まったシンカナースインタビューも、今回で18回目を迎えました。

第18回目のインタビューは、ローズ療養通所介護の施設長を務める介護福祉士の溝呂木大介(みぞろぎ だいすけ)様、看護主任の鈴木夕輝(すずき ゆき)様のお2人です。

皆さんは介護保険サービスの1つである「療養通所介護」をご存知でしょうか?

通所介護、いわゆる「デイサービス」の1つではありますが、一般的なデイサービスとは異なり、呼吸器や吸引、難病など医療依存度の高い方が利用できるという特徴があります。

2006年に始まったこのサービス、利用者や家族の思いに添ったケアを可能にする一方で、様々な課題も抱えています。

療養通所介護で働く方たちが抱く在宅医療への思い、これまでのキャリア等、現場で奮闘するお2人のお話を伺うとともに、今後の在宅ケアに求められるものについて考えます。

vol.1では、お2人が現職につくまでのキャリア、お2人の出会いについて伺っています。

療養通所介護までのキャリアの変遷

これまでの介護福祉士としてのキャリアを教えてください。

溝呂木:2000年に東京YMCA医療福祉専門学校を卒業し、実習先であった老人保健施設(以下老健)に就職しました。

3年目で1つの現場を任される立場になり、4年目で新宿に新しい老健を立ち上げるということで、立ち上げメンバーとして異動しました。

そこで6年間勤務してトータルで10年強、老健に勤務しました。

そこから現職へつながるきっかけはどのような経緯だったのでしょうか?

溝呂木:10年目を過ぎたあたりから、「これまでの経験と知識をどこかで使えないか」という思いがだんだん大きくなっていって、自分で何かを始めるということも考えましたが、ご縁があってここで勤務することになりました。

2011年の立ち上げから携わっているので、もう7年になります。

最初に老健を選択された理由は?

溝呂木:当時は何も考えていなかったというのが正直なところです。

ただ、高齢者と関わる仕事をしたいとは思っていましたので、実習先であった老健から声をかけていただいたいたこともあって就職を決めました。

そもそも介護福祉士になったきっかけは?ご自身の体験などあったのでしょうか?

溝呂木:実は高校に4年間行っているんですね。

3年生で退学して4年目に通信制の高校に入り直したんです。

通信制の高校でしたので、比較的時間に余裕があって、アルバイトを始めることにしました。

高校を退学した僕を見る母の目が悲しそうだったこともあって、母に胸を張っていえるような仕事はないかなと思い、重症心身障害者のデイサービス(高校を卒業した障害者が通うところ)で働き始めたのがきっかけです。

まわりから「大変だよ」と言われて入った世界でしたけれども、1年間やってみて自分の中では全く大変だとは思いませんでした。

今もそれは変わりませんね。

利用者さんたちと一緒の時間を過ごすことでお給料が出るというのはむしろ幸せなことだと。

それならば将来はこの道に進もうと思った時に思い浮かんだのが介護福祉士でした。

老健で働いてみた印象はどうでしたか?

溝呂木:ここ療養通所介護も同じですが、老健という施設は多職種が関わり合っているところで、考え方や知識を得られたのは初めに老健を選択したから活かせているんだなぁということは実感しています

たまたま老健という道を選択したけれども、振り返ってみればいい選択だったのですね。

お2人の接点はどこから始まるのですか?

溝呂木:僕が立ち上げた老健に彼女が入ってきたことが最初ですね。

僕がここの療養通所介護を立ち上げる時に、管理者を務める看護師は別にいるんですが、 現場を任せられる、右腕になってくれる看護師がいてくれたらと思っていたところ、僕が老健を辞める半年ほど前に彼女が入ってきたんです

鈴木:それまで9ヶ月ほど仕事をしていない期間があって、そこから仕事復帰する最初の職場を選ぶ時に、いわゆるリハビリ目的で働くには老健がいいかなと思って入りました。

病院はリハビリ目的の場としての選択肢にはなかったのですね。

鈴木:忙しいところにはちょっとついていけないなと思って。

老健が忙しくないと思っていたわけではありませんが、利用者さんのペースを大切にしながら1対1で向き合えるところがいいなと思いました。

彼女に右腕になってもらおうと思ったのはどんなところですか?

溝呂木:それまで僕が出会った看護師さんとはまったく違うタイプだったんですね。

こんなに心穏やかな看護師ってそうそういないと思うんですよ。

鈴木:リハビリ目的でしたからね(笑)。

溝呂木:柔軟性もあったんですね、穏やかだから。

こちらの話を聞いてくれましたし、すごく距離が近いんじゃないかなって思いましたね。

看護と介護、資格や役割は異なりますが、健康に対する考え方や生きるという考えを重視することについて、話し合えば同じ考えのもとできるんじゃないかなと。

療養通所介護は医療に力を入れている施設です。

医療に重点を置いているからこそ、医療や看護にしばられないような、もっともっとあったかい家庭的な場を作りたいという思いもありましたから、僕としてはぜひ彼女にお願いしたかったんです。

鈴木さんが醸し出す心穏やかな雰囲気は、彼女が入ってすぐに気付いたのでしょうか?

溝呂木:老健で利用者さんのベッドの横に座って会話していると「何サボってるんだ」という意見があるんです。

僕はそれをサボっていると思ったことはないし、目的さえあればそれはサボリでも何でもないと思うのですが、看護師さんとそのことを共通理解することが時に難しいことがあると感じていました。

鈴木さんは入って間もない時から利用者さんに寄り添ってたくさん会話していて、利用者さんからの信頼を短期間のうちに獲得していたんです。

それを見て、看護や介護とか関係なく、同じ現場にいるスタッフとしてライバルと思える人だというのがすぐにわかりましたね。

溝呂木さんからのお誘いを受けて、一緒にやってみたいと思われたわけですか?

鈴木:最初は深く考えていなかったんです。

満員電車から解放される、という思いの方が強かったですね(笑)。

基本的にどの職場でも、私が考えることは同じなんです。

自分が楽しく相手も楽しく働ければいいなと思っているので、ここだったらそう思えるかなと思って決めました。

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