No.272 三芳野病院 草野淳 院長 前編:地域に根ざした病院づくり

インタビュー

医療法人社団草芳会三芳野病院は、昭和63年の開院以来、

埼玉県入間郡に根を張り、地域とともに歩み続けてきた病院です。

現在は2代目として、初代院長のご子息お二人が病院を経営されています。

今回は、院長の草野淳先生にインタビューを行い、

めざす地域医療の支え方や、看護師への思いをお聞きするとともに、

草野院長の趣味などについてもお話を伺いました。

 

「整形外科」と「地域のための病床運用」という2つの特徴

 

久保:本日は、三芳野病院の院長である草野淳先生にお話を伺います。

初めに、三芳野病院はどのような病院か、教えていただけますか。

 

 

草野:そうですね。当院は二次救急医療機関として地域の救急医療を担いつつ、

整形外科と内科を中心とする複数の診療科と97床の病床を持ち、

感染症の治療や手術などの急性期医療から在宅医療まで幅広く対応している病院です。

そのなかでも当院には大きく2つの特徴があると思います。

1つは、整形外科の診療機能です。

 

 

理事長である私の兄が整形外科の医師ということもあり、

当院では整形外科の手術と術後のリハビリテーションにかなり力を入れています。

実際、当院で手術を受けられる患者さんの9割以上は、整形外科の患者さんですね。

そして2つ目は、地域のための病床運用です。

 

 

当院では、他の病院や施設から、慢性期の方や廃用症候群を患っている患者さん、

行き場に困っている患者さんを受け入れ、リハビリテーションを主体とした入院治療を提供しています。

また、地域の在宅療養を支援するために、レスパイト入院の受け入れも行っています。

 

久保:ありがとうございます。

整形外科が強みなのは、開院当初からなのでしょうか。

 

開院時から続く「整形外科」を継承

 

草野:少し複雑なのですが、当院は先代である私の父が、父の弟2人と一緒に始めた病院です。

 

 

長兄である父は産婦人科医師だったのですが、次兄は整形外科の医師でしたので、

最初は婦人科と整形外科の病院として開業しています。

そして、途中から内科医師である私の母が加わり、内科の診療にも対応するようになりました。

整形外科を担っていた次兄はその後当院を離れるのですが、

以降もいろいろな先生にご協力をいただきながら、整形外科の診療機能を維持してきたという状況ですね。

最終的に、現理事長である私の兄が整形外科医師になったことで、

整形外科の機能は安定し、より高まったと思います。

 

 

久保:2つ目の特徴のなかで、慢性期や行き場の無い患者さんを受け入れるというお話がありましたが、

どういった病院から患者さんは送られてくるのでしょうか。

 

高度医療と生活を繋ぎ、在宅療養を支援する

 

草野:急性期病院、特に大学病院から送られてくることが多いですね。

 

 

大学病院をはじめとした高度急性期・高度専門医療を担う病院は、

短期間で密度の濃い医療を提供したり、他では診れないような難しい疾患を扱ったりします。

そのため、一般的な慢性期疾患や廃用症候群などの患者さんを長期的に入院させておけないのですね。

私たちは、そういった患者さんをできるだけ断らないように受け入れています。

 

久保:患者さんやご家族にとっては、とてもありがたいことですね。

在宅療養支援にも力を入れているということですが、この地域は高齢化が進行しているのでしょうか。

 

 

草野:当院のある地域は、他地域に比べ高齢化率が高い訳ではありませんが、

それでも高齢化は着実に進行し、90代の患者さんも徐々に増えてきている状況ですね。

それ故、当院のような病院が、高度急性期・急性期を終えた患者さんを受け入れるとともに、

在宅療養中に急性増悪した患者さんやレスパイト入院に対応し、

また在宅へお帰しする流れを作ることは非常に重要なことだと思っています。

 

 

最近では、高齢で通院が難しい方も増えてきていますので、

患者さんを受け入れるだけではなく、私や母が往診に対応するようにもなりました。

 

久保:それだけ地域に根ざした病院ということですね。

往診にも出られているとのことですが、草野先生のご専門領域はどちらになりますか。

 

将来の家業を見据え、専門領域を決める

 

草野:私は、当院では一般内科を担当していますが、

もともとは、代謝・内分泌領域、特に脂質異常症や動脈硬化を専門としています。

大学院時代にも、高コレステロール血症の薬であるエゼチミブについて、

遺伝子多型による効果の違いについて研究していました。

 

 

久保:脂質異常症や動脈硬化に興味を持たれたのはなぜでしょうか。

 

草野:私は、家業を継ぐために医師になりましたので、

将来的に、母が担っていた内科領域を継ごうと考えて内科を選びました。

そのなかでも、当時、私の母校である帝京大学には、

寺本先生という脂質異常症や動脈硬化で有名な先生がいらっしゃったのと、

脂質異常症や動脈硬化自体が、日常の診療で頻回に診る疾患なので、

今後に活きると考えて、専門領域を決めました。

 

 

久保:医局に所属されてからこちらの病院に戻られるまでの間は、

いくつか関連病院に赴任されてきたのでしょうか。

 

草野:いいえ。基本的に大学病院のみですね。

実は、私は研修医の時に激務で体を壊してしまいましたので、

医局の配慮もあって、お礼奉公はしていません。

 

 

久保:そうなのですね。

こちらの病院に戻られたのはいつですか。

 

院長としての取り組みと課題

 

草野:平成25年ですね。

私が赴任する前は、兄が父を継ぎ、理事長と院長を兼務していましたが、

父はまだ医師として当院で働いていたのですね。

私は、父が引退するタイミングで院長として当院に戻ったという経緯です。

 

 

久保:院長に就任されてからこれまで、どのようなことに注力されてきましたか。

 

草野:とにかく病院をより良くすることです。

拡大路線ではなく、質の充実を図ろうと考えましたね。

例えば、高度医療と生活を繋ぐ当院のような病院では、リハビリテーションの役割は非常に重要ですので、

人材面を強化して、手厚いリハビリテーションが提供できるよう、体制を整えてきました。

また、先ほども申し上げたように往診なども行い、在宅医療にも力を入れてきましたね。

 

 

久保:ご苦労をされたことなどはありますでしょうか。

 

草野:現在も続いていることですが、やはり、人材の確保には苦労してきました。

特に看護師については、まだまだ十分な人数が整っているとは言えない状況です。

私も、できるだけメディアに顔を出し、ホームページを充実させるなど、

当院を知っていただき、直接応募が来るような仕組みを作るために努力していますが、

さらに改善が必要でしょうね。

 

 

後編に続く

Photo by Carlos