前編に続き、三芳野病院の草野先生に看護師への思いや将来の展望についてお話を伺いました。
久保:看護師を中心とした人材確保が課題ということでしたが、
貴院に入職される看護師は、中途採用の方が中心ですか。
草野:そうですね。当院は大きい病院ではありませんので、
新卒をたくさん受け入れて教育するというよりは、
既にどこかで働いた経験を持つ看護師に来ていただくケースが多いです。
実際看護師の平均年齢も30代〜40台で、お母さんナースもたくさんいるという状況ですね。
久保:そういった看護師にとって貴院の職場環境はいかがでしょうか。
草野:当院には、託児所があるので、お母さんナースには働きやすい職場だと思います。
また、中途採用の看護師にとっては家庭と仕事の両立が課題になりますが、
当院では、なるべく定時に上がれるように配慮するなど、
働きやすい病院をめざして取り組みを進めています。
久保:なるほど。
では、草野先生にとって、看護師というのはどのような存在なのでしょうか。
草野:それはもう、病院に無くてはならない存在です。
特に、当院のような中小病院にとっては、場合によっては医師以上に重要な存在ではないでしょうか。
患者さんの最も近くで、最も多くコミュニケーションをするのは看護師ですし、
最近では、退院調整や退院支援など、ソーシャルワークのようなお仕事を看護師が担うケースも増えてきました。
お話したように、当院は高度医療と生活を繋ぐ病院をめざしていますので、
看護師の持つ、そういったケアマネジメントの力がとても重要になるのです。
また、今後、在宅療養の支援機能を高めていくためには、訪問看護が重要になり、
当院でも人材が確保でき次第、24時間の訪問看護をやろうと計画しています。
この点からも、看護師は当院にとって何ものにも代えがたい存在だと思いますね。
久保:看護師はケアマネジメントのようなスキルをどこで磨くのでしょうか。
草野:看護学校で学ぶものではなく、臨床現場で学んでいくのでしょうね。
もちろん通信教育など個別に勉強する場合もあるかもしれませんが、
現場で、ソーシャルワーカーなどと一緒に働いていくなかで、
少しずつスキルを身につけていくのではないでしょうか。
久保:ありがとうございます。
今後も継続的に人材を確保して行かれると思いますが、
その先で草野先生はどのような病院づくりの展望をお持ちですか。
草野:やはり、まずは在宅支援機能を高めていくことですね。
先ほどの24時間の訪問看護もそうですが、訪問診療についても、
知り合いの医師などに協力してもらえるのであれば、24時間対応にしていきたいですし、
在宅療養を支える病床として、地域包括ケア病床を開設したいとも考えています。
また、介護サービスやケアマネジメント機能も高めて、
総合的に療養生活を支援できる病院になることが展望です。
久保:そうすると、現在の医療法人の枠には収まりきらない可能性もありませんか。
草野:そうですね。
ですので、今考えているのは、サービス付き高齢者向け住宅を建て、
そこに充実した医療・介護・福祉のサービスを送り込むというものです。
当院のある三芳町には、サービス付き高齢者住宅が無いと聞いておりますので、
地域への貢献にも繋がると思います。
久保:地域のために、地域包括ケアシステムの拠点を作るというイメージですね。
とても素晴らしいと思います。
ここからは少し目線を変えまして、草野先生個人についてお話をさせてください。
草野先生は、現在関心のある医療テーマなどをお持ちですか。
草野:今は、5G(第5世代移動通信システム)を活用した遠隔地医療に興味がありますね。
これまでに比べ、高速で大容量の通信ができるので、
オンライン診療はもちろんのこと、遠隔手術も可能になるかもしれません。
また、患者さんの状態をリアルタイムで別の先生にも診てもらい、
セカンドオピニオンをその場で行うこともできる可能性があります。
今後を考えると、とても期待の膨らむ技術ではないかと思います。
久保:医療技術の進歩というところ言いますと、医療のAI化についてはいかがですか。
草野:私は、AIは診療だけでなく、医事課の仕事で使えるのではないかと思うのですね。
現在、医療事務の人材は不足していますし、人間がやる以上ミスも多くなります。
例えばレセプトをAIが選別してくれたりすれば、
限られた人材で効率的な病院運営を行うことができるのではないでしょうか。
久保:なるほど。
では、次に先生の趣味についてお聞かせいただけますか。
草野:私の趣味は、車の運転と、あとは釣りですね。
釣りは、海で真鯛を狙ったり、湖でブラックバスを釣ったりと、幅広くやります。
実は、昨日までの休みも、福島県にある桧原湖にブラックバス釣りに行っていたのですよ。
久保:お一人で行かれるのですか。
草野:いいえ。釣り好きな仲間がいますので、一緒に行きますね。
久保:車もお好きということですが、これまでどんな車に乗ってこられましたか。
草野:スポーツカーを始め、いろいろな車に乗ってきました。
40を超えてからは、全然スピードを出さずにゆっくり走るようになりましたが、
昔は特にスピードの出る車が好きでしたね。
久保:ありがとうございます。
それでは最後に、看護師に向けてメッセージをお願いします。
草野:当院は、高度急性期を担う大病院とは違い、比較的アットホームな病院です。
看護自体も、そこまであくせくせず、みんなで話し合いながら行うので、
これまでバリバリ働いてきたという方でなくても、活躍していただけると思いますし、
一旦看護師を離れた方でも、少しずつ感覚を取り戻していただけるのではないでしょうか。
また、当院には託児所が完備されており、お母さんナースも多いので、
お子さんを育てながら看護師を続けていきたい方には良い環境だと思います。
興味を持たれた方は、是非お問い合わせをいただければと思います。
シンカナース株式会社 代表取締役社長
看護師として勤務していた病院において、人材不足から十分な医療が提供出来なかった原体験を踏まえ「医療の人材不足を解決する」をミッションに、2006年に起業。 現在、病院に対しコンサルティングおよび教育を通じた外国人看護助手派遣事業を展開。25カ国以上の外国人看護助手を育成し、病院へ派遣することで、ミッションを遂行している。 東京都立公衆衛生看護専門学校 看護師 東洋大学 文学部 国文学科 学士 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院 総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 元東京医科歯科大学非常勤講師 元同志社大学嘱託講師 元日本看護連盟幹事 元東京都看護連盟幹事 日本看護連盟政治アカデミー1期生 シンカナース株式会社/代表取締役社長 著書 『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社 『医師の労働時間は 看護業務の「分業化」で削減する』幻冬舎 『外国人看護助手テキストブック』幻冬舎