三愛会総合病院は昭和61年に20床でスタートし、現在は178床。
さらに数年以内に移転し増床する計画があるとのこと。
院長の清水弘文先生にお話を伺いました。
地域の発展とともに成長
久保:今回は三愛会総合病院院長の清水弘文先生にお話を伺います。
先生、よろしくお願いします。
清水:よろしくお願します。
久保:最初に貴院の特徴を挙げてください。
清水:当院は埼玉県東部の三郷に位置します。
三郷市は南北に長く、その中央をつくばエクスプレスが横切っています。
つくばエクスプレスが開業して以来、ここは人口の増加が続いています。
その一方で、この辺りは人口当たりの医師数が全国的に最も少ない地域の一つでもあります。
このような環境の中で当院は、昭和61年にわずか20床でスタートしました。
人口の増加とともに当院も規模が拡大し、
現在は178床を有する総合病院として、埼玉県東部地区の医療の一角を担っています。
幼少期に体験した母親の死
久保:次に先生が医師を目指そうとされた理由をお聞かせいただけますか。
清水:私が小学校6年生の時、母親が目の前で急死しました。
それが大きいと思います。
恐らく急性心筋梗塞です。
昭和40年代の東京下町のことですから、近所のことを考えると救急車など滅多なことで呼べない時代でした。
母親は夜中から苦しみ出し、前日受診した開業医に連絡しましたが、
医師が到着したのは明け方過ぎで、その時にはもうこと切れていました。
久保:小学生の時の辛い体験が医師への情熱に繋がったのですね。
医学部在学中はどのように過ごされていましたか。
清水:私は東京医大で学んだのですが、試験が多かった記憶があります。
今の医学生ほどではないかもしれませんが、結構勉強をさせられました。
勉強の他にはバスケット部に所属し汗を流したり、時には友人と酒を飲んだりして交友を深めました。
久保:先生のご専門は泌尿器科と伺いましたが、泌尿器へ進まれたのはどのような理由でしょうか。
清水:もともとメスを握ろうと考えていました。
外科系の中で泌尿器科は手術だけでなく内科的治療のウエイトも大きいことが特徴です。
その当時、外科は切るだけ、内科は薬だけという傾向が強かった中で、
両方を手がけられる点に、魅力を感じました。
東京医大を卒業し研鑽を積んだ後、泌尿器科医として一般病院に勤務したあと、
帝京大の泌尿器科に入り直しました。
帝京の泌尿器の教授が退官される際の人事で医局員の多くが関連病院に行くことになり、
私も板橋の大和病院、現在は当院と同じIMSグループの一員で
東京腎泌尿器センター大和病院になりましたが、その前身の病院に勤務しました。
そして前任の院長が退職されるタイミングで私が院長に就任しました。
その後、明理会中央総合病院泌尿器科部長を経て、当院に平成22年4月に院長として異動しました。
救急をできるだけ断らない体制を目指す
久保:そういった人事はIMSグループの本部から出されるのでしょうか。
清水:そうですね。
私が当院に異動する時には「先頭に立ってやってきてくれ」という感じでした。
久保:ということは、先生がいらっしゃる前は、少し停滞気味だったのでしょうか。
清水:泌尿器科に関しては手術件数が少なかったのですね。
やはり現在の保険診療システムは、急性期医療を提供する以上、
手術を多く手がけられる体制でなければ収入につながらない仕組みですので。
久保:では先生が院長になられてから手術件数が増えているのですね。
清水:急増しました。
特に私の専門の泌尿器科は爆発的と言えるほど増えました。
以前は月に1件程度、経尿道的膀胱腫瘍切除術(TUR)を施行するだけだったところが、
今はさまざまな手術を月数十件行っています。
当時、手術の現場スタッフにとっては黒船襲来のような忙しさだったと思います。
久保:院長ご就任は先生にとって2度目のご経験に当たるかと思いますが、
貴院の院長就任時に、どのようなことをお考えになりましたか。
清水:現在は救急を充実させたいと考えています。
当院では24時間365日すぐに検査もできますし、もちろんレントゲンもとれます。
医師は救急医療の教育も受けているはずですしfirst touchは行えるはずなのですが、最近の若いドクターは
当直の際、自分の専門外の救急受入要請を断る傾向があるので、それを改善していきたいです。
もう一つはドクターの専門性をより高め、専門医資格を取得できる体制に
しなければいけないと感じています。
泌尿器科に関しては当院も教育認定施設に認定されていて、実際に専門医も多数いますし
研修医も集まってきますが、これからは他科もそのようにしていきたいと考えています。
実は現在、当院を移転・新築する計画が進行しています。
新病院が開設される際にはハードとソフトの両面において、
若い先生方が積極的に集まってきてくださるような病院にしていかなければいけません。
移転・新築・増床
久保:移転計画があるのですね。
話が横にそれますが、少し詳しくお聞かせください。
移転先はもう決定しているのですか。
清水:ベッド数はまだ決まっていませんが移転先はもう決まっていて造成工事もスタートしています。
久保:この地区は人口が増えているとのことですので、移転新築を機に増床されるのでしょうか。
清水:最大で300床ぐらいにできるよう、県に許可申請しています。
最終的に何床になるかは未定ですが、仮にこの計画が許可された場合、
現在から100床以上増床することになります。
ただ、決して驚くほどの病床数ではないと思っています。
と言いますのも、南北に長い三郷市は、北部は当院、中央は三郷中央総合病院、南部はみさと健和病院という
主にこの三つの病院が急性期医療を担っていて、当院以外の2院は300床近い規模があるからです。
尊大にならず、範を垂れる
久保:では話を戻しまして、先生が院長としてマネジメント面で注意されていることはございますか。
清水:組織では上が働かないと下は絶対についてこないのですね。
例えば、上の人間が遅刻をすると、下の人も遅刻するようになります。
ですから院長としては、決して偉そうにするというわけではありませんが、
行動で範を垂れる必要はあると感じています。
また、院内スタッフ同士がリスペクトしあうような環境にできないかと考えています。
診療科の異なるドクター同士、あるいは、ドクターと看護師・コメディカルスタッフが
互いにプロとして敬意を払うことが、病院の雰囲気を良くしていくために欠かせないと思っています。
後編に続く