No.152 病院長 宮崎勝様(国際医療福祉大学三田病院)後編:相手をリスペクトすること

No.152 病院長 宮崎勝様(国際医療福祉大学三田病院)後編:相手をリスペクトすること

  • 2018年6月12日
  • 病院長 インタビュー
No.152 病院長 宮崎勝様(国際医療福祉大学三田病院)後編:相手をリスペクトすること
No.152 病院長 宮崎勝様(国際医療福祉大学三田病院)後編:相手をリスペクトすること

前編に続き、宮崎先生にチーム医療の大切さや病院運営、ご趣味などお伺いさせて頂きました。

 

真のインフォームドコンセント

 

これまでの外科治療の変遷を簡単に教えていただけますか。

 

宮崎:肝胆膵領域、中でも肝・胆道領域は目覚ましく進歩したと思います。

私は数年前まで日本肝胆膵外科学会の理事長を務めていました。

当時、手術に伴う事故が連続して報告され、社会的な関心事となったことがあります。

それに契機として学会では、全国の医療機関の手術関連死亡率を把握し、そのデータを外部に開示する取り組みを開始しました。

国内では初めての試みでした。

この取り組みで意図したことは、患者さんが病院を選択する際の一助としていただくことと、医療施設や医師の意識向上です。

患者さんと医療者がリスクを正確に知った上で治療に臨むことが医療安全の第一歩だと考えたのです。

患者さんにも、医師に「お任せします」と自分を委ねるのではなく、ご自身で情報を集めて検討することをお勧めします。

検討した結果、手術治療を躊躇するのであれば、迷いがなくなるまで受けるべきでないと、私は考えます。

 

 

患者さんもチーム医療のメンバー

 

インフォームドコンセントのあり方が大きく変化したのですね。

 

宮崎:かつて医者、特に外科医は、いわゆる父権的なタイプが多く、それが正しい態度だとの認識もありました。

しかし今は、チーム医療の時代です。

チーム医療の基本は相手をリスペクトし、各々の立場を理解して全員で治療に当たる姿勢です。

私が考えるチーム医療の構成メンバーは、医師や看護師等の医療者のみではありません。

患者さんも一員です。

単に医療者が横並びで手をつなぐのではなく、患者さんも輪の中心でとどまっていずに医療者と繋ぎ合うことが大事なポイントです。

「自分の病気を自分で病気を治す」という気概をもたなければいけません。

私はつねづね「一緒に頑張りましょう。あなたも頑張ってもらわないと、私どもだけ頑張っても良くなりません」と患者さんに伝えています。

 

 

チーム医療の中での看護師

 

チーム医療の中で看護師にどのようなことを求めますか。

 

宮崎:手術室で、執刀医と助手、麻酔科医、看護師の間に上下関係はなく、同列です。

ただ役割が違うだけだと理解すべきです。

確かに執刀医はオーケストラの指揮者かもしれません。

しかし指揮者だけでは音楽を奏でられません。

チェロを弾く人、バイオリンを弾く人、それぞれが協調しないと、美しい音は出ません。

それと全く同じだと私は思います。

看護師自身が主体性をもって手術に関わり、遠慮なく発言することが大事です。

一人の執刀医の2つの目よりも、4つ、6つ、8つの目で確認したほうが良いのは明らかです。

 

 

臨床医として患者さんに接することと、院長として病院運営に関わることを、どのように両立されていますか。

 

宮崎:医療の現場は刻々と変わります。

進化し、進歩していきます。

病院長だからといってマネージメントにのみ専念してはいられません。

変化する医療の現場を肌で理解し続けなければ、現場にそぐわない方針を打ち出してしまう不安があります。

看護や事務部門のトップにも同じことが言えると思います。

 

 

Patient first

 

病院を今後どのように変えていきたいとお考えですか。

 

宮崎:病院運営は‘Patient first’であることを絶対に忘れてはいけません。

先ほど診療報酬改定が話題に上りましたが、病院としては社会的に決められ診療報酬という枠組の中で、運営の方向性を探っていきます。

一方、診療報酬の改定内容が患者さんのためにならないのであれば、現場の医療者は声を大にして異を唱えるべきです。

医師のみならず看護師もそうです。

それも‘Patient first’の実践に求められることだと考えます。

 

 

ご趣味でランニングをされるそうですね。

 

宮崎:外科医は常に早足です。

院内でもそうです。

それが高じて走り出したのかしれません。

海外へ講演に行く時などにもジョギングシューズを携え、講演の合間に必ず走ります。

街中のランニングは観光バスで巡るより余程楽しいです。

身体を動かすのが好きなのは、外科医の特徴かもしれません。

 

看護師へのメッセージ

 

宮崎:看護師は医療チームの一員です。

手洗いをして医師とともに手術室に入ってくださる看護師に対し、私は常にそのように伝えています。

医師と一緒に手術をしているのだという気持ちをもち、医療チームの一員としてプライドを持って仕事をしてほしいと思います。

それが本当のチーム医療です。

言葉で言うのは簡単ですが、チーム医療の一員として他のスタッフと同等に医療へ関わるということは、それだけ責任も重いということです。

しっかり勉強して、仲間の一員としてしっかりやっていけば、それに見合うプライドが生まれ、仕事への充足感が得られます。

当院はそのような看護師を一人でも多く育てようと思い日々教育しています。

ともに働くために三田病院においでいただければ、大変うれしく思います。

是非どうぞ。

 

シンカナース編集長インタビュー後記

手術室におけるチーム医療をオーケストラに例えてお話いただいた宮崎先生。

指揮者だけでは良い音楽が奏でられないというお言葉には、手術室で勤務した経験のある私にとって美しい表現だなと感じました。

これは、病棟でも、外来でも同じこと。

医師は医師としての役割を、看護師は看護師としての役割をプロフェッショナルとして全うしつつ、お互いの音を感じながら調和させることで最高の医療を提供できるのだということです。

プロとしての自覚も大切ですが、ややもすると、周囲との調和を忘れがち。

チーム医療を表現する時のメタファーとして「オーケストラ」というのは素敵だなと思います。

宮崎先生は「暗黒の外科の臓器」と言われていた肝胆膵を専門とされ、この領域の壁を打破すべくチャレンジしよう!と決意されたことからも、とても前向きに医療に、疾病に向き合われてきたことが分かりました。

看護師も、無難なだけでは未来を切り開けない。

難しいことにもチャレンジし、前向きに医療に貢献する力強さとハーモニーを大切にするしなやかさが必要なのかもしれません。

 

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病院紹介

宮崎院長インタビュー前編

宮崎院長インタビュー後編

 

Interview Team

中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 同志社女子大学嘱託講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社