前編に続き清水先生に、急性期病棟、回復期病棟、地域包括ケア病棟をもつ同院での看護の特徴、
整形外科領域の最近の話題、「目下の趣味は子育て」とおっしゃる先生の私生活の一面、
看護師へのメッセージなどを語っていただきました。
地域密着型病院における看護師の重要性
久保:少し看護師に関して質問させていただきたいのですが、
先生にとって看護師はどのような存在で、どのようなことを期待されていらっしゃいますか。
清水:当院は地域に密着した医療機関で、地域から患者さんを受け入れ、治療後にご家庭に戻られたり、
他の施設に移られるという流れの中、看護師には非常に活躍していただいています。
社会との繋がりや医療・介護の社会資源については医師よりもむしろ看護師の方がよく勉強していて、
チーム医療の担い手としてますます期待しています。
急性期病棟の在院日数は10日未満
久保:貴院のような急性期と回復期病棟、地域包括ケア病棟を擁するケアミックス型病院での
看護師の働き方に特徴があれば教えてください。
清水:当院は整形外科部門の手術が多いことが特徴です。
例えば人工関節置換術などで急性期病棟に入院されます。
回復期病棟には、当院の手術後方や他院で脳卒中や骨折の急性期治療を終えた方などが入院されます。
急性期病棟の在院日数は平均10日前後で、相模原市では最も短いくらいです。
その短い急性期では、例えば整形外科看護では手術後管理を中心とした急性期看護が中心となりますが、
患者さんのバックグランドの把握等も看護師の重要な役割です。
回復期や地域包括ケア病棟では、
看護師が患者さんやそのご家族と密な関係を築き上げた上での看護が展開されています。
早期から家庭環境を把握し、治療とリハビリテーションの結果を把握して、
退院後の社会復帰の方向性に関わっていきます。
このようにケアミックス型病院の特性を生かし、
看護師の方それぞれの適性にあった働き方ができるのではないかと思います。
久保:看護教育という点ではいかがでしょうか。
清水:その点も冒頭の話に通じますが、企業の健保立であることから
一般的な民間病院より余裕があることは確かで、教育や研修が充実しています。
例えば学会参加の際に補助を行うこともあります。
整形外科医療によるQOLの向上
久保:貴院は整形外科部門の手術件数が多いというお話でしたが、ドクターは何人いらっしゃいますか。
清水:現在、整形外科医は8名です。
整形外科は全身の運動器官に関わる診療科で、病院ごとに主力分野が異なることが多く、
当院はもちろん脊椎疾患等も診ますが、どちらかというと膝関節の疾患や骨折、人工関節置換、
あるいはスポーツ整形外科などの運動器疾患が多い傾向があります。
久保:運動器疾患ということでは、以前から日本では
ロコモティブシンドロームの認知向上キャンペーンが行われていますね。
ロコモティブシンドロームについて、先生に何かお考えがあればお聞かせください。
清水:我々整形外科医は昔からQOLを重視し、運動器疾患の予防に努力してきたつもりですが、
それを国民レベルに押し広げ、医療によって単に寿命を延ばすだけでなく、
一人で動き回れる健康寿命を延長しようという考え方は素晴らしいと思います。
同じような疾患予防のための活動として、
メタボリックシンドロームという言葉はすでに十分社会に根付きました。
ロコモはまだ少し認知度が低いようですので、これからに期待しています。
高齢化への一国民として不安と院長としての対応
久保:ロコモのほかに先生が、医師または院長としてご関心をお持ちの医療問題はございますか。
清水:一つは高齢化です。
いま高齢者の割合がますます増加していて、介護の担い手をどうするか、
医療・介護費はどのように負担していくのか、そのようなことを政治がどうやって解決していくのか、
これは医師としてというよりも、一人の国民として心配です。
この問題に対して国はとりあえず急性期の病床数を減らすという方針で進めていて、
診療報酬改定の度に算定が厳しくなっています。
院長としては、その圧力を受けながらも、地域から要求される医療を提供し続けるために、
生き残りを努力することが求められ、それはなかなか大変です。
久保:これからの医療、近未来の医療ということでは、どのようなイメージを持たれていますか。
例えば最近、医療に関わらず多くの領域で業務のAI化という流れが話題になりますが。
清水:医療のAI化の可能性ということではやはり画像診断ですね。
CTやMRI、あるいは内視鏡所見の認識能力は期待できます。
もうすでに一部、研究的に臨床導入され始めています。
画像診断のAI化で見落としが減ったり、
スクリーニングの対象を拡大したりすることができると考えています。
趣味は子育て
久保:最後の質問ですが、先生のご趣味や普段の過ごされ方を教えてください。
清水:子どもが二人いまして、上がもう30歳なのですが下の子がまだ5歳なのです。
ですから目下、子育て中です。
それが本当に面白くて楽しいです。
久保:それだけ年齢が離れていますと、かわいくて仕方がないのでは?
清水:誰でも同じではないかと思うのですが、最初の子を育てた時に後から
「こんなことしてあげられなかった」という反省のよう気持ちがあるではないでしょうか。
その反省を生かしてもう一度、子育てに取り組める喜びがあります。
おじいちゃん、おばあちゃんが孫をとてもかわいがる、あれと同じような心理もあるのかもしれません。
久保:ではお子さんと遊ぶことが現在のご趣味ということですね。
清水:時間があれば、ですね。
私がスキー好きなもので、子どもが3歳になった頃から教え始め、今ではだいぶ滑るようになりました。
そこで冬は子ども連れでスキーに行くのが我が家の決まりになっています。
下の子どもが生まれるまではゴルフが好きでしたけれど、今ではめっきり回数が減りました。
看護師へのメッセージ
久保:では最後に看護師に向けてメッセージをお願いします。
清水:医療に関わる仕事を選ばれた方は、人に役立ちたいとか、困った人を助けたいという、
本当に純粋な気持ちを持っている方が多いと思います。
特に看護師さんはそうなのではないかと感じています。
そういう方々が本当に気持ちよく働ける場所こそが、イコール、
患者さんの幸せに繋がる場所なのではないでしょうか。
私もこの病院を、スタッフが気持ちよく働ける場にしていきたいと考えています。
もしなにか機会がありましたら、当院を見に来ていただければ嬉しく思います。
よろしくお願いします。
インタビュー後記
緑に囲まれた東芝林間病院。
企業の健保組合立とのことで、特徴的な歴史を歩んできているようです。
その院長でいらっしゃる清水先生は、「ここは優しさに包まれた病院だ」と穏やか語ります。
確かに、建物の外には花が咲き乱れて明るく、院内には落ち着いた時間が流れているように感じました。
そんな雰囲気の中、看護師の方々もまた「優しい看護」日々実践されているのだろうな、と
思えてきたインタビューでした。