No.276 関東脳神経外科病院 清水暢裕 院長 後編:脳神経外科での看護の魅力

インタビュー

 

前編に続き清水先生に病院の将来展望や、脳神経外科で看護師として勤務することの魅力、

求められるスキルなどについて語っていただきました。

 

脳外科看護に必要なスキルとやりがい

 

久保:稼働病床を減らしたとのことですが、それは看護師の業務負担を考慮されてのことでしょうか。

 

清水:はい。

とは言いましても、脳血管疾患の発症にはご承知のように季節変動があり冬季は増えますから、

気温が下がり患者数が増えてくればベッドをすぐに戻します。

 

 

久保:看護師として脳外科で働くことの楽しさは、どのようなことだとお考えになりますか。

 

清水:それはやはり、救急車で搬送されてきた意識のない患者さんが元気に回復し、

退院を見送ることができることではないでしょうか。

脳血管障害の急性期治療が奏功した場合だけに限りません。

硬膜下血腫など、治療介入により劇的に改善する病気がいくつかあります。

先ほどは脳外看護の大変さを強調しましたが、その反面、やりがいもかなりあることは確かだと思います。

 

 

久保:看護の業務内容という点ではどうでしょうか。

例えば、脳卒中急性期には急性冠症候群(ACS)や急性腎障害(AKI)を併発することが多いと思います。

その医療において看護師に期待することはございますか。

 

清水:併存疾患の管理・治療に関して当院は近隣の病院と連携をとりながら適切に対応しています。

その連携は比較的順調で、脳外科のない他院の患者さんを当院でお引き受けすることもよくあります。

そこで重要なのは看護師の観察力です。

脳卒中の患者さんに生じている可能性のある心疾患や腎疾患を見抜く力です。

 

 

そのような患者さんの変化を、医師よりも患者さんのそばにいる看護師の方が早く気付き、

報告を受けることも少なくありません。

脳外に勤務する看護師には、ぜひそのような観察力を伸ばしていただきたいところです。

 

医療者の働き方改革

 

久保:ところで、待合室に学会発表の報告がかなり掲示されていましたが、

院内での指導や教育にそれだけ力を入れていらっしゃると考えてよろしいですか。

 

清水:そうですね。

以前から力を入れている方だと思います。

ただ最近その辺もまた難しくなってきています。

 

 

「働き方改革」のため、学会発表のための調査研究・準備、出張も労働時間にカウントするように

なりつつありますので、昔のようにスムーズにはいかなくなりました。

現在、病院としてぜひ発表を後押ししたいような優れた研究には、

学会参加に時間外・休日手当てを支給することなどで対処しています。

 

 

久保:「働き方改革」も、なかなか一筋縄で行きませんね。

 

清水:いろいろ議論のあるところですが、医療関係者、特に医師に関しては

「それ以上働いてはダメ」というのは少し厳しいのではないでしょうか。

スキルアップの障害になりかねませんので。

むしろ働いた分をしっかり保障するという方針が良いのではないかと思います。

一方、看護師に関しては、もちろんスキルアップも重要ですが、しっかり休んでいただき

長く働いていただける環境づくりが大切ではないかと思います。

 

脳外科診療に特化した医療経営

 

久保:そのほかに今ご関心のある医療問題はございますか。

 

清水:脳外科領域で言えば、治療法が急速に進歩し様変わりしていますので、

その変化にいかに対応していくかという点に関心があります。

例えば先ほどサイバーナイフの話をしましたが、あれも種々ある放射線治療装置の一部でしかないのですね。

数ある先進医療設備を、たとえ大学病院であっても一箇所ですべて揃えるのは、もう無理な時代です。

 

 

ではどうするのか。

結局、ある地域でそれぞれの医療機関が特徴のある治療機器を一つずつ設置し、

それを地域全体で共有する仕組みを作っていかなければいけないのだと思います。

当院もその仕組み作りを積極的に進めていければと考えています。

 

 

久保:医療環境がそのように変化していく中で

先生は貴院をどのように発展させていこうとお考えでしょうか。

 

清水:私としては法人をグループ化してどんどん大きくするという興味はあまりありません。

院長という立場では何よりまず、今の時代を生き抜いていかなければいけないという務めがあります。

それにはこの地域の脳神経外科関連疾患の治療をしっかり安定させ提供し続けることが大切です。

 

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久保:脳外科疾患に特化したスペシャリティのある病院にしたいということですね。

 

清水:そういうことです。

その上で、当院が得意とする脳外を主軸として、

老健施設などのニーズに応えていくことが使命ではないかと考えています。

 

護師へのメッセージ

 

久保:院長に就任されてからまだ日が浅いとことでしたが、

これまでのところで何かご苦労を感じることはございますか。

 

清水:人間関係の調整でしょうか。

院内の組織はさまざまな部門に分かれていますが、

病院としては一つにまとまり同じ方向を目指していかなければなりません。

そのためのマネジメントがなかなか大変です。

 

 

久保:先生のプライベートについての質問ですが、ご趣味などをお聞かせいただけますか。

 

清水:スポーツは学生時代にバスケットをしていましたが、働き始めてからは時間が取れずにしていません。

あとは釣りですね。連休に子どもを連れて海釣りに行くことがあります。

 

 

久保:最後に看護師へのメッセージをお願いします。

 

清水:脳外科の病気の特徴を理解することや、バイタルサインを評価しデータに残すといった作業を

しっかりしていただくことは当然、看護師のみなさんに担っていただきたい業務です。

しかしそれだけでなく、「患者さんと接してほしい。患者さんを診てほしい」と強く思います。

急性期医療の現場では在院日数が短くなり、

患者さんとのコミュニケーションの確立が難しくなってきていますが、その中でも患者さんを

単に病人としてではなく、一人の人間として見る姿勢を大切にしていただきたいと思います。

 

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