No.249 テルモ株式会社 佐藤慎次郎 社長 後編:看護師の皆さんに育てられて100年

インタビュー

前編に続きテルモの佐藤社長に、同社製品を使う看護師へ伝えたいことや、

社長の趣味などをお聞かせいただきました。

日本の高品質な医療を輸出する

中:製品だけでなく、供給システムやサービスも含めて品質を高めていくというお話を伺いましたが、

日本の医療システムは世界で極めて高く評価されています。

しかしその一方で、高い品質の医療システムを海外に広げるには至っていません。

そんな中、貴社は売上の海外比率が7割とのことでしたので、製品やサービスを通して

日本の優れた医療の一部を世界に向けて「輸出」できているのかなと、伺っていて感じました。

佐藤:まさにおっしゃるとおりです。

我々が海外に提供している製品やサービスは、日本の医療で培われた結果に他なりません。

当社の製品やサービスのクオリティーを引き上げていただいたのは、国内の医師や看護師の方々です。

我々が日本の医療に育てられて、海外に活躍できるチャンスを与えていただいている状況は、

非常に幸せなことと感じています。

看護師の皆さんにテルモを鍛えていただきたい

中:少し看護師に的を絞って伺いしたいのですが、

貴社製品の中には看護師がエンドユーザーであるものも多いと思います。

そこで、看護師への期待や看護師に伝えたいことがあればお話しいただけますか。

佐藤:私たちの会社はいま述べましたように、医療の現場で

製品・サービスを使っていただいて成長してきました。

医療現場のニーズに応えること自体がビジネスの発展の原動力になっています。

その意味では設立以来100年近くに及び、

本当に看護師の皆さんの声が我々を育ててきたと言って過言でないと思います。

現時点でも、使い勝手や安全性の向上に、現場からの声が欠かせません。

ですからぜひとも、コミュニケーションのルートを確保させていただき、

テルモを鍛えていただきたいと思います。

これは我々の要望でありお願いです。

医療安全への一助に

中:ありがとうございます。

非常に看護師にとって、ありがたいと申しますか、励みになる言葉だと思いました。

具体的に、いま看護師と接点が多く、貴社にとっても重要な製品がございましたら、ご紹介ください。

佐藤:輸液システム全般は、看護師の皆さんが日々使われる製品で、テルモにとっても重要と考えています。

当社は、輸液剤、輸液ライン、針、注射器、輸液ポンプ・シリンジポンプと、

輸液投与に関する製品を幅広く扱っています。

どうすれば医療安全に貢献できる製品になるのか、という点はもちろん、日々使う製品だからこそ

使い勝手についても、看護師の皆さんに鍛えていただきながら、製品改良をしたいと考えております。

中:看護師の業務負担軽減や安全性向上につながるかもしれませんね。

佐藤:さらに現在、IoT対応型シリンジポンプを使い、

より安全性を向上させる研究を京都大学と共同で進めています。

シリンジに貼り付けたICタグをポンプが読み取って、薬剤名が自動で設定されます。

医療機関で発生するインシデントの2割が薬剤投与に関することだと言われていますが、

このような自動化技術によりその減少に一層貢献できると考えています。

機器操作のトレーニングをサポート

中:既に、次の製品開発も進められているのですね。

ところで、2025年問題や医師の働き方改革などの流れとともに、看護師業務の拡大が徐々に進行しています。

そうしますと、従来よりも高度な医療機器を看護師が用いる機会が増えてくるのではないかとも

予測されます。

それに対して、例えば貴社が看護師のテクニック習得をサポートするような体制を整えるお考えは

ございませんか。

佐藤:先ほど「トータルクオリティーの一つにサービスがある」と申しましたが、

実はそのサービスの大半は、まさに今おっしゃったようなトレーニングの機会を提供できるかどうかに

かかっています。

そこで当社では、医療現場のスタッフの方々にお越しいただき、

様々な研修を実施いただける模擬病院のような施設を設けております。

医療機器は販売して終わりではなく、正しくお使いいただいてこそ効果が発揮されます。

また、そこから新たな製品改善のチャンスが生まれてきます。

ぜひトレーニングセンターに足をお運びいただき、我々もともに勉強させていただけたら思います。

中:臨床において看護師が手技を習得する際、先輩からの口伝による部分が少なくありません。

時には正しくない方法が院内に広がってしまうこともあるかもしれません。

貴社のトレーニングセンターのような存在は、若い看護スタッフにとり心強いものだと思います。

佐藤:地理的なことで湘南のトレーニングセンターにお越しいただけない場合、

シミュレーション機械を病院などにお持ちして、ケータリング形式でトレーニングを行ったりもしています。

今も日々オンゴーイングで進化させていっていますので、

これらを積極的に活用していただければ我々としても幸いです。

オンオフのめりはりをつける

中:最後に、お仕事以外の時間の使い方を教えてください。

例えばご趣味は何ですか。

佐藤:仕事上、海外に出かけることが多いもので、空いた時間を縫って街中を散歩するのが好きです。

国内にいる時にも美術館を回ったり、ミュージカルや演劇の鑑賞に足しげく通います。

めりはりを付けオフの時間は仕事以外のことでリフレッシュし、平日の仕事に備えています。

中:生活のリズムを保つためにもリフレッシュは欠かせませんね。

佐藤:何事かをやり抜くためには、あきらめないでとことん続けることが基本ではあるのですが、

やはり疲れてくると新しいアイデアが浮かばなくなったり、かえって後ろ向きの発想になったりするのが

常ですので、他人からそれを指摘される前に休みを取ることを心がけています。

テルモのATM

中:本日お話を伺っていても、エネルギーと明るいパワーをいただいているように感じました。

佐藤:社員に向け、組織のモットーの一つとして「ATMを目指そう」という話をよくしています。

ATMというと一般には銀行の自動預け入れ払い出し機のことですが、

当社では「明るく、楽しく、前向きに」の略称です。

医療に関わる分野でビジネスをしていくことは非常にストレスが多く、

知らず知らずにあくせくしてしまうことがあります。

すると、頑張っているのにもかかわらず良いサービスから遠ざかってしまうことにもなりかねません。

仕事は一生懸命する、しかし明るく楽しく前向きな気持ちを忘れない会社でありたいと思います。

中:ありがとうございます。

看護師に向けて力強い、そしてまた発展性のあるメッセージをいただけ感謝いたします。

ありがとうございました。

佐藤:ありがとうございました。

インタビュー後記

看護師にとって、とても親しみのある「テルモ株式会社」の佐藤社長にお話をお伺い出来ました。

日常的に、使用している医療材料は、どのような思いで製造されているのか?

看護師に対して、どのような関係を作っていこうと思ってらっしゃるのか?等ダイレクトに

お話を伺うことで、とてもポジティブなメッセージをいただくことが出来たと感じます。

パートナーという言葉に恥じない、知識や技術、そして大切な心を看護師はより磨く必要がありますね。

佐藤社長インタビュー前編

佐藤社長インタビュー後編

Interview with Toan & Carlos