前編に続き、院長就任後も臨床を続けられていらっしゃる松本先生に、
患者さんの近くに立ち続けようとされる思いや看護師への期待などを語っていただきました。
患者さんの背景を咀嚼できる看護師
中:看護についてお伺いしたいのですが、
先生は看護師に対しどのようなことを期待していらっしゃいますか。
松本:自分が医師になって働き始めたその日から、看護師と一緒に仕事をしなかった日はありません。
それだけ付き合いの長い仲間であるのです。
しかしそうはいっても異職種ですから、どうしても立ち入り難い部分が互いにあります。
ただ、間違いなくこれから超高齢社会がますます進展し基礎疾患を有する人が増え、
かつ少子化により独居や老々介護が増加します。
このような社会の到来に向けて、看護職員に「こういうふうになって欲しい」といつも思うことは、
個々の患者さんの社会的背景や個人的な事情をできるだけ多く把握し、
それらを咀嚼した上で対応できる力を身につけていただきたいということです。
患者さんが病院を訪れたとき、一番初めに接するのはナースです。
患者さんが安心して白衣の天使に身体をあずけられるように、
医療のテクニックだけでなく社会人としての教養も深め、自分の歳相応の人間力を培う努力を求めます。
中:社会経験が少ない新人看護師に対しては、どのようなことを期待されますか。
松本:今わからないことはわからないでよろしいと思います。
ただし、次からはわかるようにすることです。
決して逃げずに、一人一人の患者さんや患者さんを取り巻くご家族と、
きちっと正面から向き合って真摯に対応してほしいです。
それが私の希望です。
任務を全力で尽くす
中:院長がそういった温かい目で見られていることは、
働いている方々の自信や喜びに通じるのではないかと感じました。
松本:自分が逆の立場だった駆け出しの頃は、さんざん叩かれつつかれ、何とかやってきたわけです。
それを考えると、頑張る気持ちがあれば、
今現在の知識が不足していたり技術が拙くてもよいのだと思うのです。
自分の与えられた任務を全力で尽くす気概が大切で、それがある人を私は大歓迎します。
当院の職員はほとんどがそういう気概のある人だろうと信じております。
中:素晴らしいですね。
そのようなスタンスでスタッフの方々と接し、信頼関係を構築されているのですね。
松本:もちろん、インシデントが発生した際にはレポートを書いていただき
再発防止を徹底するといったことは、当然、当院も行っています。
患者さんにデメリットがあってはなりませんから。
ただ、一生懸命やった上での失敗を個人的に責めようという気持ちは、私には全くありません。
スタッフ一人一人を大切にしたい
中:そうしますと、新人看護師も新人なりの頑張りで自分の役割を果たして行くことで、
しっかり評価をしていただけるということでしょうか。
松本:もちろんそうです。
看護師として入職して3年目くらいになりますと、
プリセプターとして1年目の新人を指導する立場になります。
そのようにして少しずつステップアップしていきます。
その個人個人の成長を合算したものが、病院の実力になるわけです。
今年4月に入ってきた看護スタッフに脱落した人はまだ一人もいません。
みなさん頑張って勉強し、働いています。
中:先生はふだんから看護スタッフの働く姿を気に留めていらっしゃるのですか。
松本:私がジーっと見つめていると「なんか評価されているのかしら? 怖いわ」と思われかねないので、
さりげなく注目して「今日も頑張ってくれているな」と思うことが多いです。
院内くまなくと言ったらやや大袈裟ですが、なるべく前線での皆さんの動き方を見るようにしています。
皆さんやはり当院の大事なスタッフですので、一人一人本当に大切にしていきたいなと思っています。
患者さんの期待に応える喜び
中:先生はとても優しいお人柄なのですね。
松本:どうでしょうか、それは良くわからないですけれども。
性格的には大雑把で、あまり細かい事には気にならないほうだと思います。
ただ、辛そうな人には何とか寄り添いたいという気持ちは強くあります。
中:実際に院長職の重責を果たされながら臨床も続けていらっしゃいます。
そのパワーの源はどこにあるのでしょう。
松本:患者さんやご家族は病院という存在に対してたいへん大きな期待を持ちながら来院されます。
藁にもすがるという気持ちです。
その期待に応えられるように努力を尽くし、患者さんが回復されていく状況に立ち会うことができるのは、
ものすごく幸せだなと感じます。
中:最後の質問ですが、先生のご趣味をお聞かせください。
松本:趣味というにはおこがましいのですが、お酒が大好きです。
当院の職員には結構ばれていると思います。
飲みながらコミュニケーションをとる時間を大切にしています。
あとは、ジョギングと筋トレをしています。
体力勝負の外科医と院長という責任がありますので、身体を大事にしようという目的です。
中:今も筋トレとジョギングを続けていらっしゃるのですか。
松本:趣味といいますか、身体づくりとストレス解消でやっています。
看護師へのメッセージ
中:それでは、まとめとして看護師に向けメッセージをお願いいたします。
松本:当院は今、診療内容の関係上、やや忙しい病院です。
忙しいとはつまりどういうことかと申しますと、個人個人に過重な負担がかかるというよりも、
チームとして良い仕事、Good jobを続けていることの表れだと感じています。
このような状況において、看護師の皆さんに期待される大事なことは何かと考えますと、
それはやはりチームワークです。
良い雰囲気の中で皆さんが助け合いながら、しっかり患者さんと向き合って、
ご自身の技術を発揮していただける、当院はそういう病院だと思っております。
私自身も、当院のあらゆるチームがみんなで好ましい雰囲気の中、楽しく頑張れるような、
そういう病院であることを願って日々努力しております。
もしお仕事を一緒にする機会があるようでしたら、是非お待ちしております。
心から歓迎いたしますので、よろしくお願いいたします。
インタビュー後記
松本先生にインタビューを行わせていただいたのは夜間でしたが、
先生のみならず病院内にいらっしゃるスタッフの皆様も
素敵な笑顔で明るく活気のある雰囲気に大変驚きました。
常に現場を大切に、自ら患者さんの側で寄り添う医療職であることが伝わってまいりました。
努力することを怠らなければ、たとえ困難なことでも一歩ずつ克服していける。
自らたゆまない努力をされていらっしゃる松本先生だからこそのお言葉だと感じます。