前編に続き後編では、鈴木先生に院長としての取り組み、看護師への期待などを語っていただきました。
病院がすべきことをリストアップ
嶋田:院長としてご苦労が多々おありではないかと思いますが、いかがでしょうか。
鈴木:まだ苦労する段階までたどり着いていません。
自分が何をすべきか整理しているところです。
事務長ほか幹部の協力を得て、当院がすべきことをリスト化し、自分たちはどこまでできているのか、
何が足りないのか、また現在は事足りていても時間とともに必要になること、
例えば医療機器や設備の更新など、なすべきことをできるだけ網羅した計画を立てています。
広い視野でこの計画を組み立てていけば、当院と私がやることは自ずと決まってくると考えています。
以上は病院の運営についての話ですが、
経営に関しては戸田中央医科グループ(TMG)の優秀なスタッフや理事長の指示を受けて進めています。
嶋田:病院に不足していることを把握され、それを改善して行く取り組みの最中ということですね。
鈴木:まだシステムとして十分に機能しているわけではないのですが、赴任した時にまず組織を再編し、
その組織図に沿って報告が上がってくるようにしています。
毎日夕方になると、内科系副院長、外科系副院長、看護部長、事務長から、
その日の報告をしてもらっています。
患者さんの目線を大切にしてほしい
嶋田:幹部以外のスタッフには、ふだんどのようなことを伝えていらっしゃいますか。
鈴木:患者さんの目線になって、自分がすべきことを考えてほしいということです。
それを続けることによって、自分自身のステップアップにもなります。
職員には「今の自分のままでいたら、そのうちに必要ない人間になってしまいますよ」と
厳しく言うことがあります。
嶋田:「患者さん目線」について、少し具体的にお話しいただけますか。
鈴木:自分のことになりますが、私は腹腔鏡手術指導医の資格を早い時期に取得していました。
開腹手術を中心にそのまま続けていても当分の間は不可なく過ごせたはずですが、
患者さんの目線で考えれば、治療効果が同じなら手術の傷あとは小さい方が良いに違いない
というメリットの将来性に着目しました。
その後、腹腔鏡手術の適応は急速に拡大し今に至っています。
患者さんが希望するであろうことを先に考えて対応し、
その希望を満たした時には、新たな要求に応えられるように努力する、その連続が大切ということです。
余裕ができた時はステップアップのチャンス
嶋田:スタッフそれぞれが現状のスキルで満足することなく
さらにステップアップするような意識を持ってほしいということですね。
鈴木:そうあってほしいと思います。
ただ、どうしても自分自身の生活に追われてそこまで考えが回らない人もいることでしょう。
ですから現状に慣れてきて余裕が出てきてからでも良いので、新たなことに挑んでいただきたいと思います。
一番よくないのは慣れた時にそこで成長が止まってしまい、楽な方に向かってしまうことです。
そうではなく、患者さんが望むであろうことを考える視点を持てば
「自分もまだこれからだな」と自然に目標が作られていくのではないでしょうか。
「白衣の天使」がベースにある看護師と働きたい
嶋田:看護師についてお尋ねいたしますが、先生は看護師をふだんどのように見ていらっしゃいますか。
鈴木:お世辞でなく本当に「白衣の天使」だと思っています。
それは自分自身が入院した時の体験からです。
ベッドに横たわっていた時に看護師がかけてくれる言葉というものは、身にしみて助かるものです。
それを実感しました。
逆に少し繊細さに欠けると言いますか、部屋を出ていく時にドアをバーンと閉められたりすると、
もうそれだけで、いつもなら何でもないことが気に障ってしまいます。
入院中の患者さんは周囲の変化に敏感になっているのですね。
そのような繊細さを理解できる感受性のある方は、多少スキルが不足していても必ず良い看護師になります。
そして必ず努力をして勉強もしてくれます。
とても頭が良くてキリキリ働いている人よりは、ベースにそういった心根がある人と、私は働きたいと思います。
優しさと強さを持った看護師
嶋田:やはり患者さんの心に寄り添うことを期待されるということですね。
鈴木:それが一番大事だと思います。
その上で、昔と違い医師の指示に従っていれば良い時代ではありませんから、カンファレンスなどでも
医師の発言を待つだけでなく「自分たちの視点からはこうだ」「看護の面から見て、これが必要だ」
という意見をはっきり言ってほしいです。
何も医師と張り合うことを勧めているのではありません。
看護を学んでいる者としての視線をしっかり持つべきだということです。
嶋田:優しさとともに看護のプロフェッショナルとしての自覚が必要ということでしょうか。
鈴木:それは絶対必要ですね。
優しい人柄であることと、物おじしてしまうことは全く違います。
優しいからこそ患者さんの立場に立った主張をきちっと医師に伝えられる、強いナースを期待します。
西東京地域の急性期医療を支えていく
嶋田:また貴院全体の話に戻りますが、
今後この病院をこのようにしていきたいといった計画や希望はございますか。
鈴木:我々の病院の向かう方向は、急性期医療を通じて西東京の地域医療に貢献していくことです。
当院が災害拠点病院であることからも、
普段から地域に根ざした医療を実践していなければならないと考えています。
もう一点は、患者さんのみならず、職員にも選ばれる病院にしていくということです。
この二点の推進のため、常々スタッフに協力を求めています。
嶋田:では最後に看護師に向けてメッセージをお願いします。
鈴木:当院は西東京にあり、110年の歴史がある病院です。
歴史が長いために建物は少し古いですが、来年から再来年に向けて改築を計画中です。
職員の働き方については、すべてのスタッフがチームになり動けるように配慮しています。
医師、看護師、その他のコメディカルスタッフ、それぞれが同じ立場で、
自分たちのことを思いっきりアピールし合えるような、そういう仲間になってもらいたいと思っています。
働く目的は個人個人いろいろ異なると思いますが、我々の病院は、西東京地域にある急性期病院であり、
さらに災害拠点病院ですから、「この西東京地域を守る、西東京地域の急性期医療を支えていく」という
思いを共有したいと考えています。
もう一つは、病院が患者さんを向かい入れる、それはもちろんであって、我々の病院は患者さんだけではなく
職員からも選ばれるような病院、職員が互いに助け合っていける、
そのような病院を目指していこうと考えています。
インタビュー後記
西東京の地で110年もの間、
患者さま目線で考えること、
スキルアップをすることで、