No.212 メディコムジャパン 藤原慎一 社長 前編:感染症の予防に特化した製品開発

インタビュー

感染管理のための衛生材料を製造販売しているメディコムジャパンの製品は、

今日、国内外の医療機関で広く使われています。

同社を創業された藤原慎一社長に、企業の経緯や事業展開について、お伺いしました。

感染管理に特化した衛生材料を販売

中:今回はメディコムジャパン代表取締役社長、藤原慎一様にお話を伺います。

社長、どうぞよろしくお願いいたします。

まず、貴社の業容を簡単に解説してください。

藤原:当社は、カナダのモントリオールに本社を置く、

感染管理に特化した衛生材料を製造販売しているメーカーです。

中:ありがとうございます。

本日は、貴社の製品や沿革について、あるいは医療・看護に対する社長のお考えをお伺いいたします。

まず、貴社社長に就任された経緯をお聞かせください。

藤原:私は以前、ある製造関連メーカーの貿易部に所属しており、輸出やODA関連の仕事をしていました。

新規事業の担当になりビジネスを開拓していた時に出会った領域の一つが、

現在当社で扱っている製品の輸入でした。

その事業規模が拡大し、本業とは離れスピンアウトするかたちで私が起業したというよう流れです。

サンプル提供で好感触

中:起業に際しまして、日本での衛生材料の市場性をどのように見込んでいらっしゃいましたか。

藤原:15年ほど前のことでしたので、日本では感染管理に関する認知度がまだそれほど高くなく、

海外で使われるディスポーザブル衛生資材も非常に珍しい状況でした。

そこに潜在的な需要を見込み、かつ、医療と社会に貢献できる商品であるという確信がありました。

実際、海外での展示会でコンタクトして入手したサンプルを日本に持ち帰ってマーケティングしたところ、

非常に良い反応を得ました。

中:そうしますと比較的順調に事業を立ち上げられた感じでしょうか。

藤原:初年度から黒字ではありました。

ただ最初はやはり非常に苦労しました。

製品性能への評価が向上

中:ご苦労されたことをお聞かせください。

藤原:よくある話ですが、日本と海外の商習慣の違いがまずネックになりました。

また扱う製品が医療材料ということで、製品の性能・機能性と価格とのバランスを、

いかに病院さんや医療従事者の方々に理解していただくか苦労しました。

 

中:今でこそ、どちらの病院でも医療安全にたいへん力を入れていますが、

当時は感染予防にかかるコストが相対的に過大だと判断されたのかもしれません。

SARS、新型インフルエンザが追風に

藤原:ただしその後、新興感染症としてSARS(重症急性呼吸器症候群)が流行したり、

新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)のパンデミックが起きたりする度に、

感染予防への関心が、医療関係者の間だけでなく、社会的にも高まりました。

中:確かに豚インフルエンザが「新型インフルエンザ」として流行した時には、

街中で誰もがマスクをしていましたね。

藤原:弊社製品もテレビニュースに取り上げられて品薄になり、ネットオークションで

マスクに数万円の値段がついていたこともあります。

我々も次々に輸入を拡大し対応しました。

ところがパンデミックがピタッと終わり、その後1年ほどマスクの在庫の山が減らず、地獄でした。

日本の医療現場のニーズを反映して製品開発

中:本当にいろいろあったのですね。

今はマスク以外に多くの製品を扱われていらっしゃると思います。

貴社の主要製品をご紹介いただけますか。

藤原:マスクやグロープ以外に、ガウン、医療防護服、アイガード、キャップ、滅菌バッグ、などを

すべて海外の自社工場で製造し、日本に輸入し販売しています。

中:機能性や特徴について、もう少し詳しくお聞かせください。

藤原:例えば同じグロープでも、パウダーフリーにして

ラテックスアレルギーの方でもお使いいただけるようにしたタイプがあります。

マスクにしても、小顔の女性の医療従者が使用されることを想定して、サイズを多少小さめにしたものや、

カラフルなカラーを用意しています。

また、耳が痛くならないタイプ、口紅が付着しにくいタイプなどもあります。

このような機能性とともに、医療の現場での視認性も配慮しながら製品をデザインしています。

中:日本人に合ったサイズや好みを、社長から本社に伝えることもありますか。

藤原:あります。

日本人の女性は特に手が外国人より小さいので、看護師の方がお使いになるグロープをXXSの

極小サイズにしたり、手形をとって製造ラインへ戻したりもします。

また医療の現場から営業スタッフを通して「口元をもっとしっかり押さえられるマスクが欲しい」

といった声をいただくと、その都度、病院を訪問しご要望を確認して、製品に反映させています。

看護師の姿に思うこと

中:ニーズの把握のために、病院で看護師と接する機会も多いのでしょうか。

藤原:そうですね。

看護師さんにお声がけいたしまして、当社製品の使用感を伺ったり、

改善すべき点をお聞かせいただいたりしています。

中:看護師に対してどのようなイメージをお持ちでしょう。

藤原:命を預かる仕事ですから、社会的に非常に重要な職業だと考えています。

また、いつも忙しくされているお姿を拝見し「ハードな仕事だな」というイメージが強いです。

これからますます高度化する医療に対応するために、

看護師の皆さんは常に新たなノウハウを習得されていかれているのでしょう。

とても大変な職業だと思いますが、がんばっていただきたいです。

後編に続く

Interview  with Araki & Carlos