No.206 つくばセントラル病院 竹島徹 理事長・院長 後編:患者さんの身体と心に優しい医療

インタビュー

前編に続き竹島先生が理想とされる医療や看護師の姿、先生のご趣味などを伺いました。

緩和ケア病棟開設

中:本当にゼロからスタートし、一歩一歩築き上げてきたのですね。

今は先生が当初掲げられていた理想にだいぶ近づきましたか。

竹島:いつの間にかスタッフが10倍に増え、許可病床数313床という規模になりましたが、

私が最も満足していることは、緩和ケア病棟を持つことができたことです。

これにより、がん患者さんに優しい病院という、開院前に抱いていた理想形に近づきました。

末期のペインコントロールや看取りも含め、

そこに医師として介入していくことを私は強く願っていましたから。

低侵襲治療を先取り

中:これから先はどのようなことをしたいとお考えですか。

竹島:時代の流れを考えると、やはりこれからの高齢社会への対応です。

ここ牛久市は若い人が多く全国平均よりも若干人口動態の変化が遅いとはいえ、

数年後には人口のピークを迎え高齢者の割合がさらに増加します。

80歳、90歳のがん患者さんがますます増えていくでしょう。

その方々に一番適した治療、医療は何だろうか、ということを考えながら展開していきたいと思います。

その一つの対応として、数年前にサイバーナイフを導入しました。

切らずがんを治せますので身体への負担を軽減でき、高齢者にも優しい治療です。

この治療を受けるために、北関東一帯の病院から患者さんを紹介いただいています。

その他、やはり手術侵襲を避ける治療法としての結石破砕装置は、かなり高額でしたが

開院と同時に導入していました。

中:先進的な医療機器を早くから使われてきたのですね。

竹島:人様によると「どうも竹島院長は器械好きのようだ」とのことです。

看護の「深さ」と「広さ」

中:高校時代に工学部進学を目指していた名残でしょうか。

竹島:そうだと思います。

機器ということでは、当院には透析機器が充実していて、茨城県南の腎不全患者さんの治療を支えています。

またひと頃はがん温熱治療の装置なども一生懸命、自分で考えたりしていました。

ただしその一方で昔から仲間たちと

「機械で囲まれ線でつながれた患者さんが一人で寝ている姿は、医療としてどうなのだろうか。もっと心を大切にした人間中心の医療が本来の姿ではないか」

と話していました。

 

中:患者さんの身体に優しい医療として最新機器を用いた低侵襲医療と同時に、

心にも優しい医療を志向されていたということですね。

先生は看護師に対してどのようなことを期待されますか。

「こんな看護師に来て欲しい」といったことをお聞かせください。

竹島:看護師だけでなく医師もそうですが、

とかく最近は自分の専門を「深く」掘り下げることに熱心な医療職者が多いと感じます。

もちろんそれは大切なことですが、同時に「広く」も欲しいのです。

研修医によく言うのですが、患者さんと対峙するには「深さ」と「広さ」の両方が必要であり、

何にでも興味を持って知識や経験を積んでいただきたいと思います。

かつ、看護師に対しては、そういった技術的なことに加えて、

やはり患者さんと長時間向き合うわけですから、優しさや真心、誠実さを涵養して欲しいと話します。

看護部は病院組織のエンジン

中:先生にとって病院における看護部、看護師はどのような存在ですか。

竹島:当院は7:1看護を今後も維持していきます。

その組織にあって看護部は中心であり心臓です。

単に人数が多いからではなく、組織運営上のエンジンのようなものです。

治療においては医師が中心かもしれませんが、

病院医療としては看護部が中心となって組織を動かしていっています。

各科・各部門の業績発表会

中:組織を動かしていくための具体的な活動があればご紹介ください。

竹島:はっきり目に見えるかたちのものとしては年に一度、

「セントラル医療・福祉業績発表会」という地域を含めた大会を行います。

病院内の各部門が何をしているのか、それぞれが発表し情報交換するためのものです。

朝から一日かけて全職員の8割以上が参加します。

各診療科の医師とともに看護師をはじめとするコメディカルも、

自分たちが持っているスキルや実績、今後の方針を発表します。

これは院内の情報共有だけでなく、若手の教育という側面もあります。

医療と介護の一体化を目指す

中:先生ご自身は、これからの医療はどのように進化していくとお考えでしょうか。

竹島:医療そのものは、今までもこれからも急速に進化していくでしょう。

がんに対しても近年ではたいへん効果的な薬剤が登場しました。

医療の進歩は日々感じています。

一方で以前から感じている課題があり、それは医療と介護の連携です。

例えば当院は、その時々の医療に不足していることを補うために発足・拡張してきました。

しかし現状において、当院に来られた患者さんの帰る場所がないのです。

在宅で老々介護を続けざるを得ない、あるいは介護を受けられる施設をご自身で探さざるを得ない

という困難な状況です。

この問題の解消に向けて医療と介護が連携を強め、

その中で当院も人のお役に立つ組織であり続けたいと願っています。

業績発表会で詩吟

中:最後に先生のご趣味や仕事以外のお時間の使い方をお聞かせください。

竹島:以前はゴルフをしていました。

もっと遡ると大学時代にはヨット部に所属して年間70日以上、海に出ていました。

「医学部ヨット科」ならぬ「ヨット部医学科の学生」などと揶揄されていました。

今は詩吟を習っています。

茨城の代表の一人として関東大会に出たこともあります。

詩吟というと昔は高齢者が吟ずるものでしたが、

最近は高校生の文化サークルもあり、小学生の生徒もいます。

情操教育に良いとのことです。

中:裾野が広がってきているのですね。

院内のスタッフに披露されることもあるのですか。

竹島:25周年の業績発表会の時に、知らないうちにお膳立てされていて、着物姿で詠う羽目になりました。

中:看護師から見ますと理事長という役職はとても遠い存在ですが、

先生のお話を伺い少し身近に感じられたと思います。

本日はありがとうございました。

インタビュー後記

創業者の熱意と実行力を直接感じ取らせていただくことが出来ました。

思いがあり、そこに人が集まり、実現に向けた努力をし続ける。

病院を最初から作り上げることの偉大さを教えていただきました。

竹島理事長のお話には、看護師、看護学生が病院選びで大切な「何か」が詰まっています。

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