No.202 イムス富士見総合病院 鈴木義隆 院長 後編:「ストロングナース」の育成

インタビュー

前編に続き、病院内のマネジメントのコツ、話を人に伝える際のポイント、

看護師への期待などを伺いました。

問題に気づくための感性と想像力

中:お話を伺っていますと、先生はご自分のスタイルを貫くのではなく、

良いことは吸収しながらより新しいスタイルを作り上げていくように物事を進められていくのですね。

鈴木:そうですね。

ですから常に課題を意識するようにしています。

組織では例えば「今までそうしていたから」という曖昧な理由で習慣的に動いていることが多々あります。

それによる問題点に気づくには、感性と想像力を磨く必要があるように思います。

いつも課題を考え続けていれば、いつか良い解決策が見つかり、さらに次の課題へと繋がっていきます。

中:継続していくことによって、自分が成長できるということですね。

鈴木:そこで大事なことは、自分だけでなく周囲も進歩しているということです。

それを感じながら取り組んでいくと「どこまで頑張ればいいのだ」と辛くなる時もありますが、

面白さを感じることも増えます。

たとえ話をしますと、山登りの最中は辛いですが、ふと気づいて後ろを振り返ると

広大な景色を見渡せて「ああ、こんなに登って来たのだ」とホッとします。

そして「さらに上から見る景色はもっと良いだろう」と期待しながら、また登り始めます。

話を一般化して伝える

中:わかりやすいたとえですね。

まさに先ほどおっしゃっていた一般化されたお話です。

鈴木:なるほど。

言われてみれば話を一般化していました。

今の話の要点は「この山に登れば、こういう世界を見渡せるのだよ」ということを、

少しはっきり理解してもらうということです。

ただ、実際には難しく、伝えたいことが組織の末端にほとんど伝わりません。

中間管理職に対しては「10のうち1が伝われば成功で、それを10回やって10点にするような指導を」と

伝えています。

課題のゴールを100点とするとほとんどの場合、最初は0点です。

初めから60点、70点を目指せるとしたら、それはその人にとって課題ではないのかもしれません。

中:そのようなスタイルで院長として舵取りをされてきて、効果は現れてきましたか。

鈴木:私が当院に着任して5年経ち、良くなった部分もありますが、まだまだの部分もあります。

当院だけでなく世の中も進歩していますから、医療安全にしろ感染症対策にしろ、

やはり継続して改善していくことが大切と思っています

褒め褒めプロジェクト

中:スタッフ間のコミュニケーションや院内の雰囲気を改善するための運動はされていますか。

鈴木:「褒め褒めプロジェクト」を推進しています。

とにかく意識して「ありがとう」と、はっきり言うという運動です。

中:それは看護師に対してでしょうか。

鈴木:看護部だけでなく、全職種の主任クラスにお願いしています。

私は「無理、無理、終了現象」と呼んでいるのですが、部署が異なると、

同じ業務を協同で進めるという時に、すぐに「こういう支障があるからそれは無理」ということになり、

そこで「終了」となってしまうことが少なくありません。

これもコミュニケーション不足によるものだと考えます。

自分たちが持っている情報や状況を互いに共有するためには、コミュニケーションが必須です。

ただ、どんな立場の人にも役割と責任があることも理解しなければいけません。

病棟の中心は看護師

中:看護業務に当てはめて少し具体的にお話しいただけますか。

鈴木:例えば、患者さんの退院支援には各職種が関わりますが、

ではそのスタッフがどのタイミングで集まるかということ一つにしても、

全員が日々の業務を抱えている状況では誰かが妥協して接点を見つけなければ始まりません。

互いの問題を共有して最善の方法を探ります。

このような簡単なことにも、意外に日常のコミュニケーションの影響が現れてきます。

中:日々の積み重ねが大切ですね。

鈴木:時間はかかりますが続けていかなければいけません。

また一度決めたルールが永遠に適用できるわけではなく、常に変わっていきます。

中:その中で看護師はどういう役割を担うべきでしょうか。

鈴木:看護師はその中でも中心的な存在でなければいけません。

もともと病棟という存在は、看護師中心の文化で成り立っているものですから。

医師、薬剤師、リハビリスタッフ、ケースワーカー、ソーシャルワーカーなどの真ん中にいて

情報を整理し、各職種に伝えるべき存在です。

昔と比べると看護業務はかなり増えたという気がします。

しかし一方でテクノロジーが発達し、情報収集にも電子カルテを利用できますし、

自己学習もしやすい環境ではあると思います。

経口摂取回復率が上昇

中:ここまでお話しいただいてきた改善の努力によって、

患者さんのアウトカムに反映されている具体的な例があれば教えてください。

鈴木:当院のリハビリテーション病棟は、

経管栄養の患者さんが経口摂取に戻る確率が高いという特徴があります。

患者さんの食事の際の「むせ」を短絡的に「誤嚥」と判断しているケースがあったようなのですね。

確かに「むせ」が頻発する状態は誤嚥性肺炎のリスクではありますが、

口腔内環境を徹底的に改善することや姿勢の調整である程度予防できます。

経口摂取を開始できれば意識レベルが上がり発語も良くなり、離床も早まります。

多彩なイベントで連携強化

中:スタッフ同士の連携を強化するための院内アクティビティはございますか。

鈴木:数々のイベントがあります。

新入職歓迎会はもちろん、職員旅行、納涼会、忘年会、運動会などです。

運動会はイムスグループ全体で行い、毎年6,000人以上の参加があります。

興味深いもので、病院の調子が悪くなると運動会の成績も落ちるのですね。

やはりチームの連携の良し悪しが競技の結果にも表れるのではないでしょうか。

中:どのような競技があるのでしょうか。

鈴木:団体競技が多く、各施設の事務長を4人で運ぶ担走リレーや、

院長が先頭に立ってのムカデリレーなどです。

良い成績を目指して早めに練習をスタートすると職員に負担がかかるので、

運動会直前の短期間でどれだけまとめあげるかがポイントです。

ストロングナースを目指してほしい

中:それでは、最後に改めて看護師に向けてメッセージをお願いします。

鈴木:当院は「ストロングナース」を育てることを目指しています。

ですから研修や職場は厳しいかもしれません。

しかし、3年間がんばっていただければ、一人前の仕事をこなせる看護師に育つと思います。

良いケアをできる、どんなことにも対応できる「ストロングナース」を目指し、

ぜひ当院に来ていただきたいと思います。

インタビュー後記

終始明るく笑顔でご対応いただいた鈴木先生。

「褒めあう」ということでスタッフ間のコミュニケーションを円滑にする工夫はとても勉強になりました。

また、グループの運動会もかなり真剣に取り組まれていらっしゃり

こうしたイベントでもチームワークの醸成を行なっていらっしゃいます。

良い医療を提供するために必要なチームワークは様々な角度から作り上げていく工夫や努力が必要なのですね。

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Interview Team