No.192 湘南第一病院 嶋村浩市 院長 後編:湘南で最も高齢者に優しい病院

インタビュー

前編に続き、高齢者に優しい病院とはどういう病院なのか、

そこで働く看護師には何が必要とされるかといったことについて、先生のお考えをお聞かせいただきました。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

湘南で一番高齢者に優しい病院

中:先生が掲げられる「高齢社会を良くしていきたい」というビジョンを院内に定着させるには、

どのような手法をとられているのでしょう。

嶋村:5〜6年前から全体朝礼などで繰り返し言い続けてきました。

今では管理職が育ってきまして、私が直接言わなくてもビジョンが浸透していっているようです。

そのおかげで最近はとやかく言わず、いつもニコニコしていられる状況です。

中:やはりコアメンバーが大切で、重要事項はそのメンバーを通して

熱伝導のように組織全体に伝わっていくのですね。

嶋村:そうだと思います。

当院として何が〇で何が×かと、白黒明確に示したことが、マネジメントとしては良かったと思います。

今でも「湘南で一番高齢者に優しい病院は?」

「湘南で一番高齢者に優しい病院の看護師はどうあるべきか?」といった問いかけを続けています。

看護師の「優しさ」とは

中:看護師のお話が出たのでその部分をお伺いしたいのですが、

先生は看護師にどのようなことを期待されていますか。

また、看護師に求める「優しさ」はどのように評価されるのでしょうか。

嶋村:看護師は専門職資格を有する医療従事者ですから、当然、

看護の技術や知識の研鑽が欠かせませんし、組織としてはモラル・マナーも重要です。

それに対して「優しさ」についてはなかなか表現が難しいのですが、ひと言で言えば「他者理解」です。

当院が湘南で一番、高齢者に優しい病院になるためには、高齢社会を知り尽くし、

高齢者になることがどういうことなのかを知ろうとし、高齢者が抱くであろう

「自分が家族に迷惑をかけているのではないか」

という不安や悲しみに思いを馳せ、その高齢者を支えているご家族の気持ちと、

さらには介護福祉に携わるスタッフの考えも察してサポートする、そういったことが優しさだと思います。

では、その優しさをどう評価するのかというと、一番の物差しはやはり外部評価です。

我々が診ている患者様の多くは要介護度が4や5で寝たきりに近い方も多く、

たとえ我々が献身的に接しても、ご本人から直接感謝の言葉をかけていただけないこともあります。

そうであってもご家族や地域の方から「湘南第一病院やっぱり良いね」と言われれば、

それが物差しになります。

中:そうしますとやはり先生が看護師に求めることは、ベースに優しさがあることが第一ということですね。

嶋村:高齢患者様とご家族の気持ちを汲み取り「自分は何ができるのか」と毎日のように思い悩みながら

一生懸命やっていく、そういう看護師が増えれば、日本の高齢社会が良くなっていくでしょう。

当院にはそういうヒューマリティを持った看護師が多くいて、ありがたいなと思います。

さらに看護師以外のスタッフもそのようなマインドを持っていて、

自分で言うのも何ですが「本当に良い病院だ」と考えています。

看護のAI化と優しさの進化

中:少し話題を変えて、医療のAI化というテーマでお尋ねします。

AIは高齢社会とはかけ離れたもののようでいて、サポートにもなるのではないかとも思います。

これからのさらなる技術革新と超高齢社会に向けて、何かお考えがございましたらお聞かせください。

嶋村:その点は正におっしゃる通りで、医療界のみならず、このさき日本は人手不足になるわけですから、

いかに生産性を上げていくかは目前に迫っている社会的課題です。

医療においても今春の診療報酬改定等でクローズアップされてきています。

今後、人でなくてもできることはAIやICTを活用し、極力業務を効率化していき、

人でなければできないことを絞り込んでいかなければいけないでしょう。

人でなければできないこととは、先ほど申しました「心」です。

看護師がベッドサイドで少しでも長く患者様に寄り添えるような環境を作っていかなければいけません。

当院は高齢者医療に特化している病院だからこそ、

どこよりも早くそういった技術を導入して業務を効率化する必要があると考えています。

中:そういう意味では、看護師も将来を見据えて、

新しい技術を積極的に取り入れていく方が望ましいですね。

嶋村:はい。

当院も4年半前にリニューアルした際、看護システムのインフラを整備しましたが、

さらなる効率化に向けてそういったスタッフに期待しています。

 

シンボルマークのメッセージ

中:最後に先生のご趣味をお聞かせいただけますか。

嶋村:私は埼玉の内陸出身ですので「将来は海の近くに住みたい」という憧れがありました。

その夢が叶って湘南に住み、今はサーフィンを趣味としています。

それで当院のシンボルマークにもサーフボードをあしらっています。

中:先ほど拝見いたしました。

海とサーフィン、椰子の木と、明るい感じのマークですね。

嶋村:フラガールも盛り込んで明るさをイメージしています。

さらにサーフボードの上の向日葵は、輝く太陽に向かってみんなで同じビジョンに向いて咲こう

という意思を表現しています。

そして私の専門の心臓と、湘南で一番ハートフルな病院という二つの「心」を込めて、

全体をハート形にしました。

このマークを通して「ちょっとお茶目な病院です」といったメッセージが届けばいいなと思っています。

明るい病院でありたい

中:病院のビジョンや湘南の海など、さまざまな情報が全て凝縮されているのですね。

確かに院内の雰囲気も、とてもトロピカルな印象を受ける明るい病院です。

それでは、看護師に向けてメッセージをお願いします。

嶋村:皆さんこんにちは。

当院は湘南で一番高齢者に優しい病院を目指しています。

我々はこの湘南から、高齢社会の地域の医療モデルを作りたいと思い、日々頑張っております。

その中で、一緒に高齢者に優しい病院を目指していける、優しい看護師さんを心から探しています。

ぜひ我々と一緒にお仕事しましょう。

トゥギャザーしようぜ!

中:ありがとうございました。

嶋村:実はラジオ番組に2回ほど出演したことがあり、その時の記憶が蘇ってきて突然

「トゥギャザーしようぜ」などと言ってしまいましたが、大丈夫でしょうか?

中:先生のお人柄がとてもよく表現されていたかと思います。

嶋村:少し説明させていただきますと、

「明るい」とか「ひょうきん」とか「バカっぽい」と言ってもらえるのが実は嬉しいのです。

しかし実際は、高齢者の終末期医療を診させていただき、

毎日のようにどなたかが亡くなっていくような現場でもあります。

そこを暗くさせない。

もちろん良くなってご自宅に帰っていただきたいのですが、残念ながら亡くられる方にも、

家族みんなに囲まれて逝く最後の安らかな場所を提供できる、そういう病院にしたいと思うのです。

そしてご家族の方から「最後はこの湘南第一病院で良かった、あなたに看護してもらって良かった」と

思っていただける病院を今もなお目指しています。

インタビュー後記

明るい太陽のような嶋村先生のバックグラウンドを知ることで、なぜ元気さや、明るさが大切なのか?

深く感じさせていただくことが出来たように思います。

患者さんや家族を思いやることを忘れず、悲しみをも包括するためには、医療職は強くあらねばならない。

実際に医療職も患者さんに共鳴し苦しんでいる。

その苦しみを超えた先にある「優しさ」により、終末期を支えるとは何か?真の強さとは何か?を教えていただきました。

湘南第一病院関連記事

病院紹介

嶋村院長インタビュー前編

嶋村院長インタビュー後編

Interview Team