あなたの看護は大丈夫? 〜基本的ケアにみる看護の質
投書箱に願いを込めて
病院に必ずといっていいほど設置されている「投書箱」。「意見箱」という名前のこともあるかもしれません。みなさんは気にしたことがあるでしょうか?「長い待ち時間をなんとかしてほしい」「食事がおいしくない」「優秀な看護師さんで安心しました」等、いいこと悪いこと様々な意見が寄せられます。院内の掲示板に投書に対する回答が掲示されているのをスタッフとして、また時には患者として・家族として目にすることがあるでしょう。とはいえ実際に自分が患者や家族の立場で投書をする機会はそうあることではないと思います。
以前友人が事故で入院した際、そこでのお粗末な看護実践について意見を書いて投書したことがあります。私は決してクレーマーではありません。後にも先にもこれ1度きり。それだけ黙っていられなかったのです。
初めて目にしたお粗末な看護
事故による転倒で腰椎圧迫骨折となり、とある総合病院の整形外科病棟に緊急入院した私の友人。ベッド上安静での療養生活が始まりました。尿器での排泄、ベッド上での食事・洗面のため、看護師の援助が必須の生活でした。私の自宅から病院が近かったこともあり、よくお見舞いに行ったのですが、そこで友人に実践されていた看護に私は驚きを隠せませんでした。
1.尿器が満タンにならないと捨てない
→中身が入ったまま次の排尿をする屈辱と動作のやりにくさを看護師は知っているのだろうか?
2.昼食後に歯みがきセットを寝たままでは手の届かない床頭台の棚の上に置き片付けにも来ない
→友人が起き上がれないことを看護師は知っているはずなのになぜそこに置いたのだろうか?
3.「座薬を下さい」とお願いしてから1時間たっても持ってこない
→その後悪気もなく座薬を持って現れた看護師
4.私が受け持ち看護師に何度か意見したら、電子カルテに付箋で「友人が看護師、要注意」と書かれていた
→私が悪者になっていた
5.食事の下膳がされない
→面会時間に行ったらまだ昼食のお膳が置いてあった
6.清潔ケアの提案がない
→言われなければやらないのだろうか?
これらのことが複数の看護師で何度も見られたのです。この中に難しいケアは何ひとつありません。入院から数日でこの病棟の看護師への信頼はみるみる低下しました。看護師となって10年以上がたち、これまで自分が行ってきた看護を振り返ってみましたが、こんなお粗末な看護はしたことがありません。この病棟ではこれが「看護」と言われているとは同じ看護師として悲しい現実でした。
投書から数週間後、師長さんから返事が送られてきました。
1.患者さん(=友人)に不快な思いをさせて申し訳なかったこと
2.投書をきっかけに病棟全体で話し合いをしたこと
3.看護のあり方を考えるきっかけになったこと
といったことが綴られていました。
看護実践は看護師の人となりを表す
その後その病棟の看護が本当に改善されたのか、確かめる術はありませんが、いい看護を提供していてほしいと願わずにはいられません。
普段私たちは看護を提供する立場ですが、看護を受ける側の立場になって見えてくることがたくさんあるのだとこの経験で気付かされました。患者さんとの信頼は特別なことをすることで得られるのではなく、日々患者さんに必要なケアについて考えて実施する、そんな「当たり前」なことの積み重ねでしか得られないのではないでしょうか。