前編に引き続き、荏原病院の村田様(※2020年10月現在はご退職なされています)へのインタビューをお届けいたします。
看護理念を組織に浸透させる
看護部長として気をつけられていることはございますか。
村田:スタッフ全員が同じ方向を向けるようにしたいと思います。
多くの人間が同じ方向を向けば力を結集できますから。
貴院の看護部の理念についてお聞かせください。
村田:「患者に寄り添い生きる力を育む看護」と「患者に責任を持ち、限りになく成長する看護」を目指す、
を理念としています。
これは先ほどお話しした私の信念と全く一致します。
看護部はピラミッド型の組織ですから、上の者がこの信念を大切にしない限り、下に浸透していきません。
そこでまずは師長たちにこれを実践してもらいたいと考え、会議や日頃のコミュニケーションの中で、
理念が意図する具体的な意味を伝えるようにしています。
逃げる退職は許さない
貴院の新人看護師に対して「こういう新人看護師に育って欲しい」という希望はございますか。
村田:何よりも「逃げないで欲しい」と思います。
辛いと感じた時、一度逃げ道を選んでしまうと、その後、辛い時は常に逃げ続けなければならなくなります。
逃げるとは、具体的には退職を指します。
いろいろな都合で退職することは仕方ありません。
しかし、辛いから退職してしまうと、自分の世界が狭くなっていってしまいます。
新人看護師には「辛いから退職するのではなく、次にやりたいことがあり、
そこに向かうために退職するのであれば応援します」と伝えています。
ご自身にも逃げたくなるようなご経験があったのでしょうか。
村田:また父の話になりますが、私が就職して間もなく、辞めたくなってしまい、父に相談したのです。
すると「辞めていいよ」と言われ、とても精神的に楽になりました。
ただし「あと3か月働いたら」という条件も付けられました。
そこで父の言うとおり3か月働いたところ、辞めたいという気持ちがどこかに行ってしまいました。
「時間が解決してくれる」ということが、世の中には結構あるのではないかと思います。
そして、辛い状況を克服してやり遂げると、それは自信になります。
そういったお話をスタッフにされ、効果は現れていますか。
村田:今年度の新人は一人も辞めていません。
年度の初めに「誰一人として辞めさせない」を合言葉として、様子が気になる新人には積極的に声をかけ
相談に乗るよう、師長さんたちに動いていただきました。
やはり部長ではなく、より現場に近い師長職の行動の方が功を奏するのだと思います。
看護補助者への期待
貴院での看護補助者の役割についてお聞かせください。
村田:当院は看護補助者が多く各病棟に4~5人配属されています。
搬送やリネン交換などを担っていただき、非常に助かっています。
看護補助者なしでは看護は回りません。
また、患者さんとのコミュニケーションも良好です。
比較的高齢のスタッフが多いので、患者さんも話しやすいのかもしれません。
看護補助者に対する研修はございますか。
村田:数年前から年に数回行っています。
去年までは医療の動向や看護補助者の役割について理解を深めるための講義が中心でしたが、
今年は口腔ケアや移動介助などの技術を習得してもらうようにしました。
資格をお持ちの方が多いのでしょうか。
村田:介護関連の資格を持っているスタッフもいますが、資格に関係なく採用しています。
看護部長からのメッセージ
村田:当院は公益財団法人東京都保健医療公社荏原病院です。
保健医療公社には6病院あり、公社病院の理念である「医療で地域を支える」という合言葉のもとに、
この大田区で医療を提供しています。
看護の理念は「患者に寄り添い生きる力を育む看護、限りになく成長する看護を目指します」です。
この理念の裏にあるメッセージは、意思決定支援、それに伴う知識に基づいた説明能力だと
私は思っています。
そういう看護師を求めています。
当院でぜひ一緒に看護しましょう。
どうぞよろしくお願いします。
シンカナース編集部 インタビュー後記
「意思決定心」「その人にとってのベスト」この言葉をとても大事に
そして力強く語ってくださった村田看護部長。
ご自身の経験からより患者さんの心に近い存在として努力をされてきたのだと感じました。
どうやったら、患者さんが満足のいく看護を提供できるのか、
どうやったらスタッフ全員が同じ方向を向いて歩んでいけるのか、常に考え、想いを伝えているそうです。
とても話しやすい雰囲気の中に、情熱を感じる村田看護部長、
この度は貴重なお話を頂きまして、誠にありがとうございました。
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No.174 村田千幸様(荏原病院)前編「患者さんの意思決定を支える説明力」
No.174 村田千幸様(荏原病院)後編「辛さから逃げないで欲しい」