国際医療福祉大学三田病院の宮崎先生に、
肝胆膵外科に進まれた経緯や外国人患者さんへの対応の工夫などお伺いいたしました。
昂まりとともに受講していた学生時代
医学部在学中のエピソードをお聞かせください。
宮崎:私が進学した当時はちょうど学園紛争の最中で、入学後しばらく授業がありませんでした。
正常化に半年ほど要し、その間、学生も教官も授業に飢えていたのです。
その反動で紛争終結後は熱心な講義が行われ、学生も非常に昂まりを感じて学習していました。
私もその一人でした。
卒業後、外科に進まれた理由をお聞かせください。
宮崎: 医師を目指したのは高校時代に遡ります。
心臓外科医の叔父の姿を目にし、自分の手を使って患者さんを救うことができる職業に魅力を感じたのです。
そのため医学部入学時点で既に外科医を志していました。
卒業後は迷わず外科を選びました。
暗黒の臓器へのチャレンジ
外科の中でも肝胆膵外科に進まれた経緯をお聞かせください。
宮崎:当時、肝胆膵は「暗黒の外科の臓器」と言われていました。
切除率は低く、手術関連死亡率も極めて高く、外科医はタッチできない領域とされていたのです。
かつ、内科的な治療もあまり奏功していませんでした。
そのような状況では結局、外科が進歩しないと患者さんを救えません。
その壁を打破すべくチャレンジし医療に貢献する可能性にかけ、この領域を選びました。
現在はこの領域もかなり進歩しましたが、いまだ難治な疾患が数多く残されています。
ハイレベルの外科医療
貴院の特徴を教えてください。
宮崎:都心に位置し、病床は291床です。
規模的には中規模病院に該当します。
急性期の高度医療を提供しており、その柱は各種外科系領域の診療科ですが内科急性期医療も熱心に行っています。
外科の診療レベルは病床数から想像されるよりも非常に高いと自負しています。
外国人患者さんからの高評価
三田という場所柄、外国人の患者さんも多いのではないでしょうか。
宮崎:外来患者の約2%が外国の方です。
三田という立地だけでなく、当院が国際的な病院機能評価である
JCI (Joint Commission International)やJIH、JMIP等の認証を受けていることも、関係しているようです。
海外からの渡航者や国内在住外国人の患者さんに、高く評価されています。
外国人患者さんへのスタッフの対応は、どのように工夫されていますか。
宮崎:英語に関しては、多くの医師は特に対策をとらずに対応可能です。
しかし看護師や事務スタッフは必ずしも全員がクオリティーの高い英語を駆使できる方ばかりではありません。
また、英語以外の言語については医師も対応困難です。
そのため院内に国際室という部署を設け、英語や中国語に対応可能なスタッフを配置しています。
少数言語に関しては外部の通訳機能サービスを導入し、診療が支障なく進む体制を整えています。
外国人患者さんへの対応は、2020年の東京オリンピック・パラリンピックも関係してきます。
地理的に近いお台場会場で発生する医療サポートの需要を当院で担うべく、既に委員会を組織し準備をスタートしています。
急性期機能を堅持
2018年の診療報酬改定に合わせ取り組まれたことはございますか。
宮崎:個人的には、医療の在り方は本来そういうものではないと思っています。
しかし病院運営および経営上は無視できません。
当院の強みを生かすという観点では、従来の7:1を算定するための看護必要度が25%から30%にアップした影響が大きいです。
いわゆる重症、急性期の患者さんの受入れをより増やしていくことが、病院経営にプラスとなります。
当院でも全身麻酔手術の件数を増やしたり、患者さんの絶対数も増やすことを目指しています。
当然一時的に現場の負担が増えますが、それが当院の大きな役割であり、進むべき方向です。
この方向性は、高度急性期医療を必要とされる患者さんに、引き続き当院をご利用いただくためにも、求められることだと思います。
後編に続く