1/3、2/3に続き、今回では苦手な看護師が多い「看護がいかに病院経営に関わるか」ということについて伺います。みなさんは日々の業務の中でどれくらい経営を意識しているでしょうか?そんなことを考えながらお読み下さい。
看護に経営の視点を
工藤さんは積極的に経営に携わって看護部を成長させてこられました。看護師が経営に関わろうとしても診療報酬のとりもれが生じたり、業務に追われて経営に意識がいかない現状があります。看護師が経営に対する視点を持てるように工藤さんはどう関わっていらっしゃるのでしょう?
工藤:先読みが得意なので診療報酬の改定も「これがくるだろう」と考えて先手を打つと当たっていることが多いんです。退院支援や認知症ケアの読みも当たりました。認知症ケアに取り組むとなった時に、最初は「急性期に力入れているのになぜ?」という意見があったんです。当院での認知症ケアの現状、入院患者さんの高齢化を織り交ぜながら、「来年からこうなるから今これをやっておこう」と説明するとみんな納得しましたね。
師長等の管理職に診療報酬や経営に対する知識を提供して説明することで、気付き興味がわいて目が届くようになり、黙っていてもできるようになっていきます。そうすると次は師長自ら使えそうな診療報酬をみつけてくる。当院では各病棟の入院単価等のデータを毎月出しているので、それを見た師長たちが「今回単価が下がったのはこれが原因だ」と言ってくるわけです。「新しい車いすが3台欲しい」となった時に「欲しい欲しい」と言うのではなく、利益率や売上から考えて事務を説得できるようになる。お金のことばかり考えているわけではないですが、そうやって経営に関わっていくことが必要だと考えています。
きっかけは看護部から
そういうことがわかっていないと「ただお金を使うだけ」の看護部になってしまって看護はどんどん経営に参加させてもらえなくなりますね。
工藤:診療報酬で使えそうなものを看護部から提案していくことが多いです。就任当初「看護部は経営に参画しない」と言われたのですが、参画しようにも経営データがなく、そんな状況で稼働率が上がった下がったと言われても何も対処できません。「データを下さい」こちらから提案して初めて医事課が作るようになったんです。そこから各部署に経営データを求める声が広まっていき、今では全部署で共有し経営に携わっています。
最近のトピックでもある特定行為研修も、当院が全国で一番最初に導入した病院となりました。3月に厚生労働省で説明会があったので聞きに行ったところ「うちでもできそうだ」と考えて院長に相談して始めることになりました。その後5月にスタートするまでの1ヶ月間は研修のカリキュラム作りに追われて必死でしたね。
先日一期生7人の研修が終わったところです。21区分中13区分の研修を病院単体でやっているのは当院だけです。当院では各病棟の各勤務帯に1人の特定看護師を配置することを目標に進めています。100人の特定看護師がいれば実現できる計算です。実現できる日はそう遠くないと思いますよ。
進化し続ける看護部
今後看護部はどのように成長していくと予想されていますか?
工藤:先日この地域のケアマネージャーさんたちが集まる会合があり、そこで「上尾の看護師さんたちすごくレベルが上がったよね」という話題になったんだそうです。それを聞いてすごくうれしかったですね。退院支援に関わるようになってから、病院以外のことに目が向くようになりました。これまでは介護保険や在宅のことって実はあまり病院で考えてこなかったんですね。当院では退院支援の専門コースがあるので、そこで学んで実践してきたことがケアマネージャーさんたちをはじめとした在宅の方たちに評価されてきたのだなと思います。今後2025年に向けて、地域の中で包括ケアを実践する上で理想たる看護師像へと成長していきたいですね。
今後のご自身の目標はどんなことでしょうか?
工藤:来年グループホームを担当することもあって、あと数年したら介護の世界を勉強してみたいと思っているんです。2025年を迎えると病院よりも介護が中心の時代がやってきます。私自身まだ介護のことには弱いので、経営面でも業務の面でも勉強してきちんと理解する。介護って看護師と介護士がメインの世界ですよね。介護と看護で中を変えることができる、そこが魅力的だと思うんです。そのためにまずはケアマネージャーの資格をとろうかなと考えています。
<シンカナース副編集長 インタビュー後記>
看護が経営に関わる。診療報酬上ではわかっていても、その仕組みについて説明できる看護師はそういないのではないでしょうか。看護部から病院を変えていくことを言葉だけでなく実行されており、確実に結果を出されていることが未来の看護の創造につながっていくのだと思いました。
工藤副院長が今後どう進化されていくのか、ケアマネージャーにいつ合格するのか、今後の活躍を思い浮かべながら病院を後にしました。工藤副院長、貴重なお話をありがとうございました。
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