No.33 小柳貴子様(武蔵村山病院)前編「素晴らしいスタッフがいれば、乗り越えられないものはない」

No.33 小柳貴子様(武蔵村山病院)前編「素晴らしいスタッフがいれば、乗り越えられないものはない」

  • 2017年8月8日
  • インタビュー
No.33 小柳貴子様(武蔵村山病院)前編「素晴らしいスタッフがいれば、乗り越えられないものはない」
No.33 小柳貴子様(武蔵村山病院)前編「素晴らしいスタッフがいれば、乗り越えられないものはない」

今回は社会医療法人財団大和会 武蔵村山病院の小柳貴子看護部長にインタビューさせて頂きました。

看護部長として看護部をまとめる小柳看護部長の手腕に迫ります。

 

日常の中にあった”看護師”な母の姿

 

部長が看護師になろうと思われた経緯からお話しいただけますか?
小柳:私は「看護師になろう」という強い意志を持っていたわけではなかったんです。

3人兄弟の真ん中ということもあって、自由気ままな子供時代を過ごしていました。

母からすれば私は心配な子どもの1人で「レールを引かなきゃいけない」と思ったのでしょう。

母が看護師をしていたこともあって「看護師になりなさいよ」と言われて、私もフワフワしていたので「お母さんがそう言うなら看護師になろう」と思ったんです。

看護師という仕事の魅力は看護師になってから実感しました。

 

お母さまのことを昔からご覧になって、「働く女性」というイメージはずっとあったということですね。

小柳:小さい頃は母が家にいないことの寂しさのほうが強かったと思います。

ただ、母の職場を見学する機会があって、その時に、普段家では見ることのできない母の顔を見たんです。

また、母が患者さんから手紙を頂いて帰ってきたことがありました。そういった出来事の積み重ねで、少しずつ母の仕事を理解できるようになりました。

仕事の時は、家で得られないようなやりがいや充実感があるんだろうなと思っていたんです。

 

そういう意味ではお母さまの影響は大きいかもしれませんね。

 

患者さんに安心感を与えることの重要性を知った「おたんこナース」な学生時代 

 

看護学校時代の思い出や、実習などのエピソードを教えていただけますか?

小柳:当時「おたんこナース」というマンガがあって、私も”おたんこナース”って呼ばれていたんです。

あまり勉強が出来るほうではなく、失敗ばっかりしていました。

ただ、実習中、患者さんやご家族との会話が楽しかった思い出があります。

基礎看護実習の時、看護のことがまだ全く分からない私でも、ご家族の方から見れば看護師の卵だということでいろいろ話しかけられるんです。

患者さんから「お腹が痛い」という訴えがあって、ご家族に「お腹動いているかしら?」と聞かれたことがありました。

その時私は、お腹の音を聴いてみようと思って、持っている聴診器は使わずに、患者さんのお腹に直接耳を当てて音を聴いたんです(笑)。

その状態で「大丈夫、お腹動いていますよ」と伝えている時に、ちょうど先輩看護師が来て、驚いた顔で「あなた何をしてるの?」とすごく怒られました。

看護師にしてみれば「何やってるんだ?」と思うようなことですが、ご家族は「動いてる!良かった!」と喜んでくれました。

今となっては笑い話ですね。

患者さんやご家族は、受け持ち看護師さんに言いづらい他愛ない事を、実習の学生には言ってくれたということから、本当に微々たる安心感を求めているんだなと感じました。

看護師の立場になると「医療の業界では看護師が患者さんに一番近いところにいる」と思いながらも、「実は遠い」と感じます。

学生には学生の出来ることがあって、色んな立場の人が患者さんやご家族を支えているんですよね。

 

とても素敵なエピソードですね。

心がこもっていて、まさに看護をされてるということですよね。

小柳:ご家族の気持ちを考えると「看護師に伝えておきますね」ではなくて、その場でしてあげられることが大事なケアなんですよね。

 

先輩からすると疑問に思うようなことだったとしても、本人は一生懸命という気持ちがすごく伝わってきます。

 

 

 

同期3人と共に「悩みつつも楽しく」乗り越えた新人時代

 

 

新人時代に戸惑われたことはありましたか?

小柳:配属された消化器内科メインの混合病棟では、治療の副作用で精神症状が強く出る患者さんがいらっしゃって、看護師が動揺することがありました。

私は新人で、どうしていいかわからなかった時、50代ぐらいのベテランの看護師が、すごく落ち着いて対応していたんです。

「経験がそうさせるのかな?」「いずれ自分もそんな対応が出来るのだろうか?」と、いつも思っていました。

病状については医師に相談できますが、突発的な患者さんの行動に、自分で対処出来なかったらどうしよう、という不安が常にありました。

そういった経験があるので、看護師が抱える恐怖心や不安感がとてもよく理解できます。

 

新人看護師同士のつながりはいかがでしたか?

小柳:当時は、今のような新人教育制度がまだ確立していない時代でした。

3人の新人が同じ病棟に配属になったのですが、新人であるウキウキ感と不安と、3人一緒だという理由のない自信のような安心感がありました。

同じ寮だったので、仕事が終わると3人でいつも夜中までおしゃべりをして過ごしていました。

今の新人さんほど、不安感を抱いたり人間関係に苦労しなかった時代だったと思います。

患者さんとの対応で悩むことはありましたが、悩みつつも楽しく過ごしましたね。

最近は、人間関係で悩む新人看護師が多くなりました。

 

1年目にどういう体験をするかで、看護師として続けていけるかどうか大きな境目になりますね。

 

新人同士で本音を言い合える横のつながりを作る

 

特に1年目は就職して夜勤が始まる時期に大きな不安感を持つと思います。

そこを乗り越えられる人と、そこで止まってしまう人に分かれると思うのですが、部長の場合は乗り越えられた背景には仲間がいたという部分が大きかったのでしょうか?

 

小柳:大きいと思います。

何かあった時に、同僚3人でたくさん話をして、何でも相談していました。

私は悩みを自分一人で抱え込んで、深く考える性格ではないんだと思います。

 

最近、仲間にはあまり悩みを話せない新人の方が増えていて、相談相手が少しずつ上司や管理職に変わってきているような話を聞きますが、こちらの病院ではいかがですか?

小柳:困ったことがあった時に、新人同士で「大丈夫、私たちが支えるから」と言っていても、実はそこに本心がないことがあります。

新人同士でも本音が言えない、弱音を出せないという印象があります。

当院の新人さんには、もっと横のつながりを大事にして欲しいと思うんです。

 

それは重要ですね。

最近の新人さんや学生さんは、仲間でいる時の楽しさとはまた別に、「恥をかきたくない」という気持ちが強い傾向があるように思っていました。

乗り越えるタイミングで、仲間や同じ経験をした人が何か一言言ってくれるのと、師長さんに言うのと結構違うのでしょうか。

 

小柳:仲間の中でも自分を保っていたいのでしょうね。

仕事が出来るように見られたい、認められたいという欲求がすごく強いと思います。

根本的に自分が仕事に悩んでいることや困っていること、失敗を人に見せるよりも、「出来る自分」を保ちたいという気持ちがあるんでしょうね。

 

自分を後押ししてくれた師長の存在

 

スタッフ時代、師長や部長に対して「楽しそう」「大変そう」など思っていたイメージと、実際ご自身が管理職になった時のギャップはありましたか?

 

小柳:スタッフ時代は、師長さんは自分たちを褒めてくれる存在だと思っていました。

たぶん叱られた事もあったと思うんですが、私の中では、「これいいじゃない、やっていきなさいよ」と、背中を押してもらっていました。

師長さんから何かを厳しく言われた記憶が全くないんですね。

私が師長になって初めて、「スタッフが気持ちよく仕事出来るように、ここで自分が還元しなければいけない」と感じました。

それが師長の役割であって、大変な務めだなと思いましたね。

スタッフと近い距離で信頼関係を獲得

 

ご自身が師長になって、同じようにスタッフを褒めることがベースになっていますか?

 

小柳:師長や主任の立場になると、スタッフが頑張っている姿をたくさん目にします。

また、私に何か困ったことがあっても、いつも助けてくれます。

私が他の部署に異動した時は、スタッフが「寂しい、寂しい」と言ってくれて。

もう嬉しくてしょうがなくて、「こんなに素晴らしいスタッフがいれば、乗り越えられないものはない」と日々思いました。

師長になってからは、スタッフが可愛くて仕方なくてたくさん褒めましたね。

患者さんへのケアにとてもまじめに取り組む姿を見ていると、褒めるしかないというのが、私の感想だったんです。

ただ、それが他の師長さんたちとの温度差を生んでいるという事に、後から気付きました。

 

それをなかなか口に出せない人もいると思うんですが、言葉に出せるっていうのは、前の師長から受け継がれたものだとか、ご家庭の影響がありますか?

小柳:私自身が昔から失敗続きなんです。

スタッフと休憩室で話している時に、「昨日こんな失敗しちゃって」と失敗談を話すと、スタッフも話してくれるんです。

また、私の仕事が遅くなった時にも「師長さん、これやっておきますよ」と言って必ず助けてくれます。

だから、意識せずとも褒めたくなるんですよね。

スタッフとの距離が非常に近いような印象を受けますが、普段からそれぞれのスタッフとコミュニケーションを常に取られてるのですか?

小柳:そうだと思います。

私は、一人で黙々と仕事をするタイプではなくて、今日何をするのかもスタッフに言っておきたいタイプなので、それが距離感を近くしているのではないでしょうか。

出来ない事を話すことで、肩の荷が下りるという部分もあるんですよね。

私はスタッフのロールモデルになるような良い師長ではなかったことが、スタッフにとっては一番良かったのでしょう。

 

頑張ってコミュニケーションを取るというスタイルではなく、本当に自然にスタッフと普段通りにコミュニケーションを取る中から信頼関係が生まれてくるんでしょうね。

小柳:そうだと思います。

あまり意識せずやってきたんですけれど。

スタッフに恵まれて本当に幸せです。

 

師長のお人柄ですね。

そういう人が集まってくるのもそうだし、それだけでなく周りにいる人たちが、逆に自分の事を受け入れてもらえるような、そんな気持ちになるのだと感じます。

 

 

後編へ続く

 

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病院概要

社会医療法人財団大和会 武蔵村山病院

 

中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
北区医師会看護高等専修学校 東京都立公衆衛生看護専門学校 東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 博士後期課程在学中 ニュージーランド留学 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社