前編に引き続き、茨城西南医療センター病院の宮本留美子副院長へのインタビューをお届けいたします。
やろうとする意思が有るか無いか
まだ経験が浅い人だとしても、やりたいことを後押しされていらっしゃるのでしょうか。
宮本:やらせます。
卒後1〜3年生にとって「研究発表はまだ早い」「できない」「させない」と言う方も多いですが、私は違うと思います。
歳を取ったから、経験があるから出来る可能性があるのではなくて、出来るか出来ないかは、やろうとする意思が有るか無いかだと思います。
なので、やらせます。
古い話ですが実際新人のチームが申し送りの廃止を成し遂げて学会発表も行いました。
部長にはいつ頃なられたのでしょうか。
宮本:平成24年に副看護部長としてこの、茨城西南医療センターに入りました。
副看護部長としてこちらに来られて、取り組み始められたことはございますか。
宮本: 救急を受け付ける病院ですから、前の病院よりは進んでいると思いましたが、各
部署を見て回って気づいたのはバランスが悪いことでした。
確かに知識やスキルは素晴らしいのですが、全体的に縄張り意識が強くて自分が持っている知識を誰にも教えない風潮があったのです。
ですから、その弊害を取り除いて組織を立て直すことに取り組み始めました。
看護師の靴のことから通勤の服装まで徹底して言い聞かせましたし、認定看護師の数も10名以上に増やしました。
地域を牽引する茨城西南医療センター病院
「地域で一番の看護を実践する」ために取り組まれていることは御座いますか。
宮本:地域貢献と教育を2つの柱にして、地域連携に取り組んでいます。
この地域で三次救急を持っているのは当院だけで、この地域を牽引していく役目があります。
ですから、その病院内の一番大きな組織である看護部がしっかりして居なければいけませんので、先ほど述べたように教育も含めて組織の立て直しを行いました。
地域連携の面では、当院で開かれる研修会へ小さなクリニックからも参加して貰えるように招待しています。
この病院だけが良くなって生き残るのではなく、地域全体にある病院が皆生き残らないといけないと思います。
それぞれの病院の役割分担もあります。
病院がお互いを資源として動くならば、当然それができるようにスタッフのレベルを上げていく必要もあると思うので、そういった活動をしています。
当県は医療資源としての医師や看護師など医療従事者の数も日本の都道府県で下から2、3番目と低いのです。
その中でも残って働きたいという病院を作っていかないといけないと思います。
地域の看護のレベルを上げることが最終的な目標です。
地域貢献とはどのような意味でしょうか。
宮本:同じ地域で現存している病院が残っていけば、この地域の患者さんが困ることは無くなります。
そして医療に困らなければ、当然そこに定着する人たちも増えてきます。
ここは2万人の小さな町で、ずっと人口は減り続けて居たのですが、昨年から増加に転じました。
町政の取り組みの成果ではないかと思います。
つまり、病院は地域住民の生活を支え、貢献しているのです。
職業名ではなく、名前で呼ぶ
こちらの病院に看護補助者は配置されていますか。
宮本:当院では看護補助者のことをナースエイドと呼んでいますが、今25対1を取って居ます。
役割はナースの補助になりますが、皆プライド持って働いています。
看護師の補助ではなくパートナーです。
ですから、看護師にも「職業名ではなく名前で呼びなさい」と注意しています。
彼らの存在はとても有難いものです。
看護師がとにかく働きやすいように、患者さんのことに真っ先にやれるように、と率先して片付けをしてくれています。
その方々向けの研修会もあるのでしょうか?
宮本:彼らも勉強したいので、教育プログラムが作られています。
リハビリに関係するスタッフには移乗の練習もして貰いますし、接遇に始まり感染予防や医療安全まで様々な勉強をして頂きます。
気分転換には何をされていらっしゃいますか。
宮本:海外旅行が私の趣味です。
世界各国巡っていますが、お気に入りはバリ島です。
私は海を見ているのが好きということもありますが、何より日常から離れて頭の中をリセットできます。
料理もしまして、今はヨーグルトとそのソースを作るのに嵌っています。
スタッフに配るのですが、病院内の名物のようになっていて、看護師だけでなく医師も楽しみにしてくれているようです。
職場の人とも良い関係性を築くためにしていらっしゃることは他にございますか。
宮本:400人以上、スタッフ一人一人に誕生日カードを贈っています。
これがあるからか、廊下で会うと話しかけてくれる看護補助者もいますし、ロッカーに保管してくれている方もいます。
スタッフ一人一人をとても大事に扱われているのですね。
宮本:やはり人が大好きでそして仕事が好きなのです。
仕事が趣味とも言えるかもしれません。
スタッフをサポートするために、少しでも職場に居たいので、家とは別にアパートを借りてしまうくらいです。
本当に、看護部のスタッフのことはとても好きで、私の自慢です。
色々な性格の人がいますし、私より優れている人も沢山居ます。
私が叱ることもありますが付いて来てくれています。
私の周りに、私より優れているスタッフをどれだけ集めておけるかが、私の力だと考えております。
宮本看護部長からのメッセージ
宮本: 自分が望むものは何でも手に入ります。
だから、まず看護の楽しさを知り、そのあとに自分がやりたい看護を望んで欲しいと思います。
やりたい看護を望めば、具体的に何をしなくてはいけないかが分かるはずです。
それを自分一人でできなかったら、上司や先輩の力を借りれば良いのです。
やりたい事があっても、それをやりたいと言わなければ、誰も分かってはくれません。
もしダメだったとしたら撤退することもいいと思います。
それも勇気です。
チャレンジすることを怖がらないで欲しいです。
頑張ってください。
シンカナース編集長インタビュー後記
宮本副院長のスタッフの皆様を大切にされていらっしゃる日常が伺える内容でした。
ご自身より優秀な方を周りに集めるというお言葉も、いかにスタッフのことを信頼されていらっしゃるかということがわかります。
仲間を守り、育て、共に成長されるという姿勢は、リーダーのある姿としてとても尊敬致しました。
また、意思の大切さについても、非常に大切なご示唆をいただきました。
出来ない言い訳や理由はいくらでも探すことが出来ますが、そこを乗り越え、まず「やる!」という意思を持つことで乗り越えていける。
これは、看護職としてもとても大切な考え方であると感じます。宮本副院長、この度はパワー溢れるお話、誠にありがとうございました。
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No. 51 宮本留美子様(茨城西南医療センター病院)前編「看護師ほど素晴らしい仕事はない」