No.217 JCHOうつのみや病院 草野英二 院長 後編:自分が成長しながら患者さんを元気にする

インタビュー

前編に続き草野先生に、看護師が進化を続けていくための考え方や、

障壁を乗り越えるためのアドバイスを語っていただきました。

直接的経験の不足は間接的経験で補う

中:看護師が目標に向かって途上段階にある時、仮に挫折しそうになる局面があったとしたら、

モチベーションの維持にどのような方法があるのか、アドバイスいただけますか。

草野:やはり最初は自分の同僚や上司に相談するのが身近な方法です。

それでも解決がつかない場合には、別の職場の同職種の方々、あるいは院長に意見を求めても良いでしょう。

それ以外に、本を読むなどの間接的な経験を積むことも、私は大切だと思います。

モチベーションを維持できなくなる状況がどのような時かを考えますと、

それは自分の経験が不足し問題を回避できなくなったというシチュエーションが思い浮かびます。

そのような時、読書などを通して得た間接的な経験でも助けになるのではないでしょうか。

一人の人間が生涯を通して直接的に経験できることは、かなり限られた範囲のことのように思えます。

中:間接的な経験を得る方法としては、例えば映画を観ることでも良いのですね。

草野:映画も含め、可能な方法を総動員してでも、自分のモチベーションを維持させる努力をするべきです。

目標を立てて実行する場合にモチベーションは非常に大切です。

私は自治医大で教えていた頃、学生によくこういったことを言っていました。

「ただ単に成績が良いから医師になるとか、経済的に有利だろうという観測で医師を目指すのは邪道であって、自分はこの病気を克服したいとか、患者さんを助けたいというモチベーションのない人は、今からでも遅くないから是非、目標を持ちなさい」と。

厳しい言葉で言えば、

医学や医療に関する目標がない人は医師をはじめ看護師や医療者にはふさわしくないと考えています。

世間を賑わす医療関連の事件がたまに発生しますが、

それらはすべて、モチベーション不足から起こる問題ではないでしょうか。

患者さんにパワーを伝え続けたい

中:どのような職業でもベースとなる目的や目標を見失ってしまっては、

ただ日々の繰り返しになってしまい、達成感を永遠に持つことができないかもしれませんね。

草野:その通りだと思います。

私自身のことで言えば、毎日のストレッチも自分の健康寿命の延伸という目的を持って継続しています。

また私が診察する患者さんに対しては、

自分の経験を通して激励の言葉を語っていきたいと日々考えています。

中:先生のお話を伺っていると自然にパワーをいただいているように感じるのは、

先生がそのような気持ちをお持ちだからなのかもしれませんね。

草野:外来でもそのように言われることが結構あります。

中:やはりそうですか。

草野:そのためにも、あまり後ろ向きなことは考えないようにしています。

私に接した人たちがそのように感じてくださり、結果的に患者さんへパワーを伝えられているとしたら、

それは非常に嬉しいことです。

周囲をエンカレッジする

中:職業に対して真摯に向き合っている方は、ご本人の達成感を得ることができるだけでなく、

周囲の人を幸せにしているのかもしれませんね。

草野:そうですね。

そうでなければ我々医療者が働いている意味は半減してしまいます。

例えば生活習慣病の患者さんは自覚症状がないために病識が乏しいことがあります。

そのような患者さんに対して「あなたはしっかり自己管理すればこんないいことがありますよ」と

エンカレッジする方法と、

「自己管理しないと大変なことになりますよ」とディスカレッジする方法があります。

時には後者も必要かもしれませんが、私はできる限りポジティブな言葉を発していきたいと思っています。

病と人を治す医療体制の整備

中:医療職者は、時には患者さんのコーチやメンター的存在になっていくことが必要なのでしょうか。

草野:そう思います。

医師の資質を表す言葉としてよく引き合い出される中国の古典に

「上医は国を治し、中医は民を治し、下医は病を治す」とあります。

やはり患者さんの病だけを治すのではなく、患者さんの生き方を良い方向に導いてあげられたとしたら

素晴らしいことですし、さらに最終的には国全体を導いていくことが理想的かと思います。

そういった意味で申しますと、私は今年の6月から栃木県医師会の常任理事に就任しました。

少しはそのような大局的な部分へのアプローチもできるのかなと考えています。

私自身の中では、患者さんを診ることと、人間全体を見ること、そして医療体制の改革から患者さんの病に

何らかの貢献をするということは、「病の克服」というテーマにすべて繋がっていて矛盾していません。

中:目標を見失っていなければ、役割が変わることも厭わないということですね。

草野:そうです。

やはり「一事が万事」とも言いますが、一つのことに精通していますと

対象が変わったとしてもそれを極めることができると私は考えています。

大学にいた時に教育や研究、診療を精一杯やり、一定レベルには到達したと自分なりに評価していますから、

今おっしゃったように、役割が変わっても自分の夢や目標に近づいていけると信じています。

ネガティブ思考を前向きに変えるテクニック

中:先ほどからとてもポジティブなお考えをお聞かせいただいているのですが、

一方でネガティブな考え方の人も少なくありません。

そういった方が、ネガティブ思考を前向きに転換する方法があれば教えてください。

草野:それは人それぞれだとは思うのですが、私が毎日15分間ストレッチをして

100歳まで自分は元気で生きるぞという意識を持ち続けているのと同じように、

継続的に何かをするという方法が良いのではないでしょうか。

シンデレラのように鏡に向かう必要はありませんが、

毎日10回ぐらい「自分は明るい」といった前向きな言葉を自分で発してそれを自分の耳に入れる。

これを1、2か月ではなく、年単位で続けていれば、潜在意識が形成されて必ず変化が起きると思います。

あまり科学的とは言えませんが、一度は実践されて良いかと思います。

看護師へのメッセージ

中:ありがとうございました。

それでは最後に看護師へのメッセージをお願いします。

草野:皆さんの看護師という職業は、人に希望や生きる元気を与える職業です。

ですから、自らが明るく元気でいなければいけないと私は思います。

人に元気を与える言動や立ち振る舞いは、日ごろ皆さんが前向きな考え方を持っていないと、

なかなか身についてきません。

そのため、日ごろ自分の日常生活も含めて前向きに捉えるという生き方を、

是非ともしていただきたいと期待しています。

それが、ひいてはご自身もそうですし、患者さん、あるいは患者さんの家族を元気づけ、

前向きに生きる勇気を与える源になるのではないかと考えております。

インタビュー後記

看護師は自らが明るく元気でいる必要がある。

とかく患者さんを思い、疲れて居ても無理をしがちな仕事でもあり、自らのケアを怠りがち。

草野先生には、そうした看護師の特徴に良いアドバイスをいただきました。

病院が変わるためにも、働く一人一人が元気でなければ良い看護が出来ない。

そうした原点回帰をさせていただいたと感じます。

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