No.210 宇都宮記念病院 﨑尾秀彰 院長 後編:脳神経外科と循環器内科を軸に展開

インタビュー

前編に続き、﨑尾先生がご専門とされてきた麻酔科領域の変遷や院内マネジメントの手法、

ご趣味などについて、お聞かせいただきました。

麻酔科医療の進化

中:話を戻すようですが、先ほどお話しいただいた救急医療の変遷の関連で、

先生がご専門とされていた麻酔科領域の進歩についてもお聞かせいただけませんか。

私どもは看護師・看護学生対象のWebメディアなのですが、看護師・看護学生にとって

麻酔科医の仕事内容は少し見えにくい部分があると思いますもので。

﨑尾:麻酔薬の種類がたいへん豊富になり、安全性も向上しました。

かつては作用時間の長い薬剤が主流でしたが、今は超短時間作用性の薬剤を持続的に投与します。

これにより術後の疼痛管理も容易になりました。

中:そうなのですね。

ただ、患者さんにとって痛みは今でも非常に大きな苦痛の種かと思いますが。

﨑尾:確かに、多くの患者さんにとって手術を受けるのは初めての経験でしょうから、

痛みの不安を口にする患者さんは少なくありません。

不安が痛覚域値を下げて痛みに過敏になることもわかってきました。

そのため術前に患者さんのもとへ麻酔科医が訪れた際には

「術後の痛みはこういう方法で、できる限り軽くします」とお話しし、安心して手術に臨んでいただきます。

今はかつてのように「痛みが不安で手術前日に眠れなかった」とおっしゃる患者さんが

だいぶ少なくなりました。

中:ありがとうございました。

患者さんに安心して手術を受けていただくことも、麻酔科医の大切な職務の一つなのですね。

スタッフとのコミュニケーション

中:ここで少し話題を変えまして、院内のマネジメントについてお伺いしたいのですが、

先生が病院長としてスタッフの方とコミュニケーションをとられる時、どのような方法でなさっていますか。

﨑尾:病棟で看護師に何か問題が起きていないか確認することもありますが、

一番手っ取り早いのは、お酒を飲んで話をする事です。

中:スタッフの方と一緒に飲みに行かれたりされるのですか。

﨑尾:もちろん。

スタッフから若さをもらうためにもよく行きます。

中:病院外でお話をするチャンスを作ることによって日常の会話も話しやすくなり、

円滑なコミュニケーションに繋がっていくのでしょうね。

﨑尾:院内の問題点の有無を、看護師にチェックすることは大切な仕事です。

もっと簡単に、患者さんの声を聞くという方法もあり、投書箱を設けています。

いろいろお褒めの言葉をいただくこともあるのですが、改善の要望もあります。

投書箱に集まった要望について、看護師とともに改善方法を検討することもしばしばあります。

そのほか、スタッフが一堂に集まる機会を利用して、自分の考えを伝えることはよくあります。

中:どのようなお話をされるのですか。

﨑尾:例えば毎年4月には新人看護師が20〜30名入ってきます。

するとまずは「患者さんとよく接するように、優しい言葉をかけるように、きちんとフェイスとフェイスで会話をするように」といったことを話します。

また「当直あけで疲れている時でも、できる限り患者さんやそのご家族に笑顔で接し、円滑なコミュニケーションをとるようにしてほしい」といったことは、しばしば折に触れて伝えています。

中:看護師に対する福利厚生面はいかがでしょうか。

﨑尾:当院は7:1看護ですからそれに見合う人員を必要とします。

そこで託児所や看護スタッフ用の宿舎を用意するなど、充実を図っています。

趣味の時間ができたら、絵を描いてみたい

中:最後の話題ですが、病院以外での普段の時間の使い方、例えばご趣味などについてお聞かせください。

﨑尾:趣味はなかなか難しいですね、私は救急を担当していますので。

一番のネックは朝7時半から8時半ぐらいの時間帯です。

この時間帯はどの病院も当直の先生がお帰りになる頃で、医療が空白になりがちなのです。

しかも通勤・通学中の人達が交通事故を起こすこともある。

するとどこも「まだ医師が出勤しておらず応需不能」となります。

そこで私はなるべく7時半に病院に来て、空白の時間を埋めるようにしています。

朝が早いので毎日帰宅後は食事して入浴して寝るだけです。

また若い先生は週休2日制が多いですから土曜日がどうしても人手が足りず、私が担当しています。

というわけで、なかなか趣味の時間を作れません。

仮に病院勤務がなければ、子どもの頃からの夢で、絵を描いてみたいと思います。

実際、油絵の道具を買ったことがあるのですが、全く開封していません。

ただ、最近、俳句を始めました。

中:素敵ですね。

お気に入りの作品をお聞かせください。

﨑尾:いやいや、恥ずかしいので、ちょっと勘弁してください。

趣味といえば、たまに妻と温泉に行きます。

中:お料理などはいかがでしょう。

﨑尾:残念ながら料理は全くといっていいくらいできません。

娘の家族が横浜に住んでいまして、しょっちゅう「孫の具合が悪い」といって妻が呼ばれて行くのですが、

出かける前に大量のカレーライスを作ってくれます。

するとしばらく毎食カレーが続くという生活になります。

カレー以外が食べたい時はコンビニで買ってきます。

少し寂しくなります。

中:やっぱり奥様の作られたカレーの方が美味しいですよね。

﨑尾:まあそれは。

あとは冷蔵庫に入っている野菜にマヨネーズをかけて食べるぐらいですね。

看護師へのメッセージ

中:そうですか。

それでは最後に看護師に向けてメッセージをお願いいたします。

﨑尾:当院は現在193床と、中規模の急性期病院で、7:1の看護体制をとっております。

特に脳神経外科と循環器内科はHCUを開設するなど、非常に充実した医療を展開しております。

また職員の就労環境に配慮し、託児所や看護宿舎も立派なものがあります。

さらに立地が街中ですから、快適な生活を送れる環境です。

ぜひ私どもの病院に見学にいらしてください。

すごく綺麗な病院です。

お待ちしておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

インタビュー後記

宇都宮駅にほど近い、病院であると思えないような外観。

オフィスビルのような病院と、優しさと人間味溢れる﨑尾院長の笑顔が融合し、とても明るい雰囲気でした。

コミュニケーション方法も、会話も飾らずにストレートにスタッフの皆様と触れ合う。

ダイレクトに向き合うことで得られる、誠実な人間関係の大切さを教えていただきました。

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