サイクルセイフティサミット開催
皆さんはプレホスピタルケア(病院外救護活動)という言葉をご存知でしょうか?院内での急変対応はスタッフ同士連携を取りながら自信を持って対応できるという方も、一歩病院の外で事故や急病人に遭遇したら対応に躊躇することがあるのではないでしょうか。
近年サイクルスポーツの落車事故が問題になっています。その背景には落車する本人の自転車スキルの問題、落車した人を救護する仲間や通りがかりの人のファーストエイドスキルの問題等が考えられ、それらの改善が急がれています。そのような現状を受けて、12月26日に向ヶ丘自動車学校(神奈川県川崎市)で、落車事故対応能力の向上・情報共有を目的とした「サイクルセイフティーサミット」が開催されました。
講師はランニングドクターを務める医師、自転車選手でもある消防士・救命救急士・看護師と、サイクルスポーツをよく理解している医療職者です。参加者は自転車ショップスタッフやイベンターが多い中で、自身もサイクルスポーツを楽しむという3名の看護師もいました。知識の習得はもちろん、参加者が自身の安全を確保しつつ、事故対応をするために必要なファーストエイド方法を身に付ける機会となりました。
落車事故経験者による受傷から回復までの話、医師・コーチによる自転車界の現状等の講義が行われた後、4つのブロックに分けて安全確保や全身観察・CPR等の実習へと進みました。最後はシナリオトレーニングとして実際の落車事故を想定し、参加者が「ケガ人」「救護者」「主催者」「消防」に分かれ、落車事故発生から救急隊に引き継ぐまでのシミュレーションを行い1日の総まとめを実施。自動車学校の教習コース上で行ったことで、よりリアルに近い環境下でのシミュレーションとなり、参加者たちは真剣な眼差しで取り組んでいました。
プレホスピタルケアを考える
1回イベントに参加しただけですぐに落車事故に対応できるようになるとは言えません。しかし、このような実践を重視したトレーニングを行うことで、一般市民でもあるサイクリストが実際に落車事故に遭遇した時に救急車の呼び方、頚椎保護の方法、安全確保の指示、どれか1つでも具体的な行動をとることができるようになることが期待されます。
イベントの実行委員長である株式会社スマートコーチング代表取締役の安藤隼人氏は「勉強熱心な看護師の方たちにもぜひプレホスピタルケアに関心を持っていただいて『何もないところからいかにして救護するか』を共に考えていければ」と話しました。
サイクルスポーツに限らず、趣味のフィールドで・駅で・コンサート会場で、事故やCPAの現場に遭遇する可能性は誰にでもあります。自分しか医療職者がいない、医療機器がないといった環境で最大限のプレホスピタルケアを実施するためにはどう行動すればいいのか、院内の急変対応と同様に考えてみませんか?