前編に引き続き、入間川病院の細谷看護部長へのインタビューをお届けいたします。
■看護師とチーム医療
部長になる前、42歳以前のお話を伺えますか。
細谷:看護主任をしていた35歳の時に子宮がんになりました。
手術、抗がん剤治療、放射線治療が終わった頃に師長職を打診されましたので、この身体では勤務に自信がないと答えると「病気をしたことで職員に伝えられることもあるでしょう」と言われ、師長職に就き、計7年ほど従事しました。
師長職に慣れた頃は体調も整っていて、周囲の人から相談を受けることが多くなっていましたので、全体をとりまとめる仕事はどうかと言われて、部長職を引き受けました。そして5年前に入間川病院に部長として就任しました。
入間川病院の基本理念は「地域の人たち、1人ひとりの健康をまもる、今、こころの医療を…」として50年の歴史を持ち地域住民のための医療に取り組んでいます。
看護師が地域の人たち一人ひとりに、心のこもった看護を提供することは実に大きなことです。
訪問看護、リハビリ、栄養指導など、看護師は提供できるものが実に多い。
「必要な人たちに必要なタイミングで、人と人、人とモノをつなぐ」、「今この患者さんを往診してもらわないと手遅れになる」、「いまリハビリをしないと寝たきりになる」、「個々のタイミングを見逃さないで強い意志で患者さんの安全を守る」など、その意識の積み重ねが結果的に患者さんの命につながっていくのです。
地域性が強く、地域の病院であるほど、その力が必要です。
地域医療には医師や多職種(薬剤師、リハビリ、医事課他)と患者をつなぐ「看護師のマネジメント力」が必要だと私は思います。
看護師がチーム医療の中心的な役割を担っているとお考えですか。
細谷:はい。看護師はやはりそういう役割を担うべきだと思います。
なぜならば、24時間365日、患者さんの周りにいるのは看護師だけだからです。
2交代、3交代までして患者さんに寄り添い、患者さんの状況を把握しているのは看護師だけです。
そのために、看護研修など何か力を入れていらっしゃいますか。
細谷:看護教育です。
技術をしっかり身につけた看護師こそ患者の急変時の対応や家族のサポートに力を発揮できます。超高齢社会に突入した日本の安心を支えるには多様な場面での対応が必須になりますので精神的にも技術的のも安定している看護師の需要が高いと考えます。
ところで、入間川病院では以前から病院職員がよく使う合言葉があります。
それは「断らない医療」です。当たり前と思われるかもしれませんが、実現するには職員が一丸とならなければ困難を極めます。
意外に思われるかもしれませんが、患者の受け入れを断らないカギを握っているのは、看護師なのです。
救急搬送にしてもそうです。3次医療の高度急性期医療は別ですが、救急車を断る・断らないは医師ではなくて、看護師の采配によります。
医師は非常に忙しくしていますので、その医師たちを上手にサポートできれば、「断らない医療」が実現していけるのではないでしょうか。
サポート力は大事ですね。
細谷:そのとおりです、断言できます。
大きな影響力をもつのですから、やりがいも生まれてきますね。
細谷:そのためには師長が、看護師のマネジメント力についてどの程度理解しているか、看護師がマネジメントしていくことで医療が大きく変わることを理解できているかが重要なポイントです。
現場の師長が看護職員を支え、また多職種の連携を上手の取れることが病院を支える根幹になると考えます。
よって、師長たちがきちんと看護師のマネジメントを理解し1つのチームを作り上げていけば「断らない医療」は実現可能だと思います。
素晴らしいですね。いま、外来患者さんはどのくらいですか。
細谷:病棟は199床で、外来患者は平均600名を超えています。
インフルエンザがアウトブレイクした際は、199床をどう上手く運用して患者に感染を広げず全ての患者さんを受け入れるかというのが、師長たちの采配、いわゆるベッドコントロールが重要です。
そのためには師長のコントロール+マネジメント能力に加えて多職種への交渉力と師長間のチームワークが不可欠です。
たとえば、救急外来の師長たちはどんな状況下でも患者を断らない、そして、それを受け継ぐ病棟師長たちは外来師長が安心して患者を受け入れることができるようにベッドコントロールを行うのです。更に多職種への適切な連絡も必須となります。
いろいろな条件が重なるほど、マネジメント能力も高く要求されることになります。
■看護補助者の仕事とは
チームマネジメントのお話がでたので伺いたいのですが、看護補助者は採用なさっていますか。
細谷:はい、おります。
ケアワーカーと呼んでいます。
配属と仕事の内容を教えていただけますか。
細谷:療養病棟では看護師よりもケアワーカーの人数が多くなっています。
仕事内容は、主に患者の身体介護(入浴や食事介助など)ですが、寝たきりの患者さんも多いので、おむつ交換もお願いしております。
病院内のメッセンジャーの仕事もしますし、患者の身体介護から看護師の業務の補助まで広範囲です。
資格をお持ちの方は多いですか。
細谷:介護福祉士の免許を持っているケアワーカーが何人かいます。その方たちは介護の専門家ですので、リーダーシップを発揮してもらいチームをまとめてもらっています。
ケアワーカーは近隣の方たちが多いのでしょうか。
細谷:近隣が多いですね。
動機は誰かのお手伝いをしたいとか、医療に少しでも携わりたいという方が非常に多いようです。
■看護師には切り替えが大事
ところで、細谷さんのご趣味を伺ってよろしいですか。
細谷:旅行が好きです。気分転換は必要だと思います。
「よく遊び」、「よく学び」、「よく仕事する」これが私のモットーでしょうか。
看護部長たちと食事を一緒に摂ることもありますが、たとえ短い時間でもいい気分転換になっています。
お酒も好きです。
地方の美酒に酔い、おいしい料理に舌鼓。
異業種の方々とお話したりすると学ぶことも多く、心も頭も豊かになります。
着物も好きです。
なるほど、そのとおりですね。ところで、あちらに写真が飾ってありますが、皆さん着物姿ですね。真ん中の方が細谷さんですか。
細谷:ええ、私です。(笑)
写っている全員が師長です。
一昨年、当病院の理事長が叙勲を受けまして、その時、「全員正装につき、着物を着用の由」と命じられたのです。(笑)
師長たちには受付をしてもらいましたので、それもあって着物の着用をお願いしたのですが、滅多にない機会だし、一緒に“正装して襟を正す”経験も素敵だろうと思ったしだいです。(笑)
とても素敵です。
細谷:壮観でしたよ。300人以上の招待客で、その方々を迎える受付係はズラリ全員が着物姿。
評判も良かったです。
同じ格好をしているものですから、師長たちも1つにまとまりました。
その日だけではなくて、じつは、うちの病院では師長たちのユニフォームは一般職員とデザインが違います。
患者さんたちが責任者を把握できるように、一般職員と責任者ではユニフォームのデザインを変えているのです。
一般職員は白の配分が多いデザインを用いています。
それはわかりやすいですね。ところで先ほど着物がお好きと伺いましたが、お写真の着物はご自身のものですか。
細谷:ええ、自前です。
着物を買うのも趣味の1つです。
今は忙しくてなかなか買いに行けませんが、少し前までは、お友達と着物を着てお芝居を観にいったりしていました。
「お芝居を観にいく?」「じゃあ、着物でねっ」という調子でお誘いします。
いいですね。切り替えというか、ご趣味も高尚です。
細谷:いえいえ、最後はトイレで大変なことになっています。(笑)
和装でもしっかりお酒は飲みますからね。
はだけないようにしなきゃ。(笑)
細谷:ほんとに。(笑)
帰りはぐったりして帰ってくるのですが、その日は一日が楽しくて、スパッと非日常に切り替えることもできて、着物・演劇鑑賞というイベント性もあって、その上、友達とこんなことをすると話題性もありますでしょ。
人生を楽しむという意味で良いのではないかと思います。
入間川病院で働きたいと思う方に向けてメッセージをいただけますか。
細谷:入間川病院は、地域に根差し、地域の人たち一人ひとりの健康を守るためより良い医療をめざしています。
看護職を志す方には基礎教育を行い、たくさんの技術を教え、長い人生を看護師として私たちスタッフと共に生きていただけるようにお手伝いをいたします。
看護学生、現役看護師の方、長い間ブランクがある方も、その方に応じた教育をカリキュラムに沿って丁寧に行いますので、安心してぜひ当病院にお越しください。
インターンシップもマンツーマンで行います。
シンカナース編集部 インタビュー後記
入間川病院は、病院に受診される方だけでなく、お近くにお住いの方々からの健康相談に乗る活動も行われている病院です。
地域住民の方々に開かれた病院というお話の通り、伺った日も外来にいらっしゃる患者さんが大勢いらっしゃいました。
主に一次、二次医療に取り組まれてる病院ですが、なんと1日に600人ほどの外来患者さんがいらっしゃるそうです。
超急性期でないからこそ必要とされる看護。
それを細谷看護部長は私達に教えてくださいました。
入間川病院で働かれている看護師の方々は、忙しい業務の中にあっても、
やり甲斐を感じていらっしゃるのだろうなと、お話を伺っていてとても嬉しくなりました。
細谷看護部長、この度は貴重なお話をお聞かせ頂きまして誠に有難うございました。