No. 112 イタリア日本語教室「TOZAI」立本勝也様/森田陽子様

No. 112 イタリア日本語教室「TOZAI」立本勝也様/森田陽子様

  • 2018年4月15日
  • インタビュー 海外
No. 112 イタリア日本語教室「TOZAI」立本勝也様/森田陽子様
No. 112 イタリア日本語教室「TOZAI」立本勝也様/森田陽子様

ミラノ在住の日本人へインタビュー

 

イタリア人との接し方、日本語をイタリア人に伝えるということについて、

イタリア、ミラノにある日本語教室「TOZAI」のオーナーである立本さんと、日本語を教えていらっしゃる森田さんにお話を伺いました。

何故、日本語をイタリアで教えようと思われたのですか?

 

立本:17年ほど前になりますが、日本人とイタリア人が出会う場所を作りたいと思いました。

当時は、イベントを開催していて、少なくとも月に1〜3回と不定期ではありましたがイタリアの方々にかなり喜ばれました。

その中で、日本が大好きで日本語を勉強したい!というイタリア人の要望で、小さな日本語教室を作ることになりました。

日本語以外にも、日本食や文化、漫画なども教えています。

 

現在、日本語の先生になってもらった森田さんに出会いました。

とても優秀な先生なので、グループレッスンや個別レッスンなど、様々なタイプで日本語教育を実施していただいています。

特にグループレッスンでは、用意したテキストを使用して、会話、読解、筆記の練習を12時間分、8回に分け実施しています。

サブカルチャーから日本を知る

 

学生の方々は何故、日本語を勉強しようと思われるのでしょうか。

 

立本:多くのイタリア人はアニメ等のサブカルチャーの文化と出会い、日本に興味を持つようです。

また、最近ではイタリアでも日本食もブームですので食事の興味から参加する方もいます。

 

アジアの国々で日本語を学ばれる方は、割と日本で技術を学びたい、日本で働きたいという真剣に将来とリンクさせることが多いように感じます。

ただ、イタリアでは、割と遊び感覚や興味で学ばれる方が多いように感じますね。

もちろん、中には日本で就職したいという方もいらっしゃいます。

 

森田:最初のきっかけは本当にアニメや食事、旅行などが多いですね。

ただ、そこから転じて、日本の大学や大学院に進学したいという方々も増えてきました。

本格的に将来は日本に住みたい!という方々もいらっしゃるので、私自身、びっくりすることがあります。

 

立本:そうですね。

アニメを通して日本とイタリアの距離がかなり縮まることになり、その後に日本をより知ってもらう。

現代的でとても面白い結果が出ているなと思っています。

 

 

イタリア人が触れる日本のアニメや漫画は何になるのでしょうか?

 

立本:ドラゴンボールやガンダムはよく聞きます。

 

森田:女の子ですと、セーラームーンという方や、もう少し世代がさかのぼると、キャンディキャンディを観たという人もいました。

昨日も、年齢は40代半ばの、とてもダンディな感じの男性が生徒できています。

彼はアニメが好きでガンダムや宇宙戦艦ヤマトの大ファンだと言っています。

そこで、日本語の歌詞を知りたい!というので、ガンダムの歌を日本語からイタリア語に訳して観ました。

子供の頃からずっと不思議だったので、とても楽しい!と喜んでくれました。

 

イタリア人から見た日本人の特徴はどのようなものでしょうか。

 

立本:例えば、雨が「ザーザー」などの表現は、漫画的だとイタリア人は気付くようです。

むしろ我々は気が付かないですが(笑)

 

森田:テレビで見た日本人がいつもお辞儀をしていると思ったらしく、こちらに来るようになってからも、生徒が何にも教えてないのに、お辞儀をして「失礼します!」と言って教室にきます。

 

立本:現在、こちらで日本語を学ぼうとするイタリア人は、とても日本を理解しようという意識が高い方々ですね。

ひと昔前ですと、君たちはイタリアに来たらイタリアに合わせなさいという感覚だったと思います。

今は、日本について学びたい!と思ってくれる人が増えたように感じます。

 

日本語という言葉の中には、日本のしきたりや文化が込められています。

日本語をそのままイタリア語に訳すと、違和感のある言葉になってしまうことがあります。

例えば「いただきます」という言葉は諸説ありますが、生き物や食材に対する感謝であったり、食事を作ってくれた人への感謝などが込められています。

イタリアでは、食事前の挨拶として「ボナペティ」と言います。これは直訳すると「良い食欲を!」という意味になるのです。

日本人に「良い食欲を!」と言ってもピンときません。

このように、日本人が普段使っている言葉の一つ一つが奥深く、感謝、尊敬、他者との関係形成など日本人の文化を表している。

イタリア人に日本語を教えながら、自分たちもより日本を知ることになっているなあと感じています。

イメージで決めつけない

 

イタリア人とのコミュニケーションを取る上での工夫は何かありますか。

 

森田:口で説明するだけでは分からないことがありますので、絵を描いたり、パソコンを使って画像を見せたりするようにしています。

そうすると、コミュニケーションも一気に進むことがあるんです。

普段はあまり喋らない子が、初音ミクの話をした途端、夢中になって、「この曲知ってる!」と言って喋り出したこともありました。

人によって、ツボが違うので、何がツボになるかは様々なテーマの中で見つけていくようにしています。

テーマも、スポーツ、音楽、映画、漫画、など幅広く、個別とグループの両面をサポートしながら、全体に日本語を楽しく学んでもらえる工夫をしています。

立本:日本人からみたイタリア人のイメージは「明るい」「分け隔てなく話す」「フレンドリー」などがありますよね。

ただ、実際には、無口な人も沢山いますし、日本語教室に来るイタリア人は不思議と、元々日本人っぽいという人も多いです。

そこでイタリア人の友人から「日本人みたいだな」と言われて、日本語を勉強しようと思いつくこともあるようです。

 

イタリア人からしたら、無口で、アニメが好き、家の中で過ごす時間が楽しい=日本人っぽいということなのかもしれません。

そういう方々が日本語を学ぶ中で、共通の会話や、安心感のようなものを得て、気持ち的な安定を得るということもあるんですね。

 

森田:半年ほどここへ通ってくれた生徒の中には、この人、最初と同じ人なのかな?というくらい喋るようになった方もいます。

やはり、褒められ、認めてくれる場所があるとやっぱりポジティブになっていきますね。

ポジティブになると、それだけで元気になる。日本語の教材のなかに、中級用の難しい教材がありますが「笑うことと健康」というタイトルでした。

笑うことで身体の中の免疫力が高まり、健康に繋がると日本語を教えながらも実感します。

 

10代〜60代まで幅広く

 

イタリアも歴史的な背景からして、北と南で性格的な違いなどあるのでしょうか。

 

森田:やはりオープンな方は南の人に多いと感じます。北は閉鎖的、どちらかというと寡黙という印象です。

 

立本:気候や歴史、土地の形状などから人々の性格も違っているなと住んでみて感じます。

最初は、なぜこんなに複雑な人が多いのかな?と思ったりもしましたが、深くイタリアを知る中で、その複雑性を知っていくことが出来たように感じています。

 

生徒さんの年齢構成を教えてください。

 

立本:10代から60代まで幅広い方々が通っています。

未成年ですと、親御さんが連れて来られるのですが、本人より親の方が熱心ということもあるので、自分がやりたかったことを子供に託しているということもあるようです。

 

森田:やはり、世代が違う人が同じクラスにいることもあると私自身、戸惑うこともあります。

10歳の子と、30歳ぐらいの人がいた時には、どちらに合わせようか?と悩んだこともありました。

結果として、30歳の方も自分にとってわかりやすかったので良かったとおっしゃってくれましたが。

 

 

座学の勉強以外に、日本食なども教えられていらっしゃいますね。

 

立本:我々も日本にいて、イタリア語を勉強するとなると構えますが、ピザを作る教室があるから行ってみよう!というと行きやすくなります。

その感覚で、まず日本の料理から興味を持ってもらうことから、日本を知るきっかけを作っています。

30年ほど前は、アメリカに旅行に行く日本人は既に多くいましたが、イタリアに来る日本人は少なかった。

日本に住んでいた頃、料理をしていましたので、イタリアというあまり日本人にとって未開の場所で第一人者になろうというロマンを持ってイタリアに来ました。

そこで、料理を教えるということも、自分のキャリアに繋がっていましたので、とてもスムーズに開始出来ました。

また、今はイタリアも日本食ブームです。

こうした活動をしながら、時代の流れとあって来たということも、運がよかったかなと思っています。

 

関係構築のヒント

 

イタリア人との関係構築を行う上での注意点は何でしょうか。

 

森田:日本は、家族でも友達でも「言わずとも分かる」という文化がありますね。

イタリアでは「言わなければわからない」という文化ですので、家族でも、友達でも、生徒さんでも思っていることはきちんと伝える必要があります。

分かって欲しい、察して欲しいというのは、こちらの思いであって、それを続けているとストレスがたまります。

それに気付いてからは、きちんと自分の意見や思っていることは伝えるよう心がけています。

 

立本:イタリア人も現実的には、優しい、カッコいいだけではありませんので、幻想は抱かない方がいいとは思いますね(笑)

イメージで優しいイタリア人、女性に優しいイタリア人と思い込んでいるとギャップに驚くことになるのではないでしょうか。

他には、イタリアで有名なこととして、男性はマザーコンプレックスが多いと知られています。

母親の影響が強いと言いますか、母親が子供のことに深く関わるという感じなのかもしれません。

それ以外ですと、日本語を勉強している間は、性格的にも雰囲気もイタリア人はとても優しくなります。

それが、電話であったり、イタリア人同士の会話になると突然厳しくなったり性格まで変わってしまうような事があります。

日本語を勉強している時が全てだと思わない方がいいなと思っています。

 

明るい未来を構築する役目

 

今後の目標や実施したいと思われていることはありますか。

 

立本:この教室の枠を超えて、イタリア人にもっともっと日本に行ってもらいたいと思っています。

実際に日本に行くことで日本を体感してもらえば、より日本を好きになってもらう事が出来ると信じています。

今は日本食ブームもイタリアに来ていますし、日本食や日本の文化に触れるとイタリア人が「優しい気持ちになる」と言ってくれます。

日本そのものが穏やかで、平和的なのではないかと感じる瞬間です。

これを広げて行く事で、多くのイタリア人が穏やかに、平和的に、お互いを思いやるという日本的な思考が広がることを願っています。

 

森田:私個人的には、イタリア語をもっと上達させようと思います(笑)

イタリア人との関わりの中では、立本さんと似ていますが、自分が教えた生徒が、日本に住みたい、就職したいと言ってくれるととても喜びを感じます。

イタリア人が日本語を習得する大変さは理解しているつもりですが、一生懸命努力して習得した日本語を、彼らが望むように使ってもらいたい。

そのサポートを続けたいと思っています。

もっともっと彼等が育つように頑張って行きたいと思います。

 

お二人は、日本語をイタリア人に教えながら、より広い視野で明るい未来創りを行われていらっしゃるように感じます。

 

立本:そうですね。世直しというか(笑)そうなればいいなといつも思ってます。

 

ナースに元気をもらえるお話をいただけたと思います。教育と医療は一見違いますが、大人の仕事であることは同じです。そこで、人とのましてや異国の方々との向き合い方は、大変参考になりました。

医療との接点

 

立本:生徒の中にも、受け入れ場所がなく、苦しんでいた方がいました。

我々との関わりの中で、少しずつ言葉を話すようになり、最終的には社会生活に復帰する事が出来たという事例もあります。

もしかすると、我々の活動は、心のサポート、健康に繋がっているのかもしれませんね。

 

森田:私は、オペラを学び、歌っておりました。

日本では病院で歌ったこともあります。音楽療法ですね。

患者さんも歌を通じて呼吸器が強くなるということでしたので、簡単な歌詞つくり一緒に歌っていただくという活動もしていました。

やはり誰かを癒す、元気にするということは昔から行なっていたように思います。

イタリアでも多くの方々に触れながら、より健康に、心も元気にしていけたらと願う気持ちは以前の活動も根底にあるのかもしれません。

 

立本:お話をしながら、自分たちの行なっている活動の振り返りをすることも出来ました。

今後、更なる目標に向かって、スタッフ一同力を合わせて邁進していこうと思います。

 

 

シンカナース編集長インタビュー後記

立本さんの開拓者精神、森田さんの教育者としての純粋な想いが伝わってくるインタビューでした。

イタリアという地で、日本語を教えるということは並大抵の努力ではないはず。

日本で将来働こう!というよりは、趣味などを通じて日本語に触れるということは学習するモチベーションにも違いはあると思います。

それでも、明るく「どうすればいいか?」ということを模索されながら前向きに日本語、日本の文化を伝承されていらっしゃるお二人は輝いておられました。

冒頭の写真で一緒に写っていただいたイタリア人は、TOZAIで学ばれた後、現在はスタッフとして勤務されている Luca Cangionoさん(ルカ カンジャーノ)です。

笑顔も素敵でしたが、日本語もとても上手で大変驚きました。

医療も、教育も人に関わる、サポートする仕事。

医療職が学ぶポイントも沢山盛り込まれたインタビューをお受けいただき、本当にありがとうございました。

 

中 友美
A-LINE株式会社 代表取締役社長 シンカナース編集長
東洋大学文学部国文学科 明治大学大学院グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 A-LINE株式会社/代表取締役社長 東京医科歯科大学非常勤講師 同志社女子大学嘱託講師 著書『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社