前編に引き続き、大西脳神経外科病院の上原 かおる看護部長のインタビューをお送り致します。
気付いてなんぼの世界
看護に大切なことは何でしょうか。
上原:やはり看護というのは、関西弁で言うと「気付いてなんぼの世界」なので、気付かないと始まらない、気付くからこそ次があります。
気付かなければそこで終わってしまいます。
それを知ってもらうために、新入職者に「みる・きく」研修というものも行なっています。
「みる」というのは、ただ見ているだけなら誰でも一緒で「手をかざして目でみる」のが看護の「看る」、看護の診断のための「診る」、観察の「観る」、それらの視点が看護師には必要です。
「きく」というのも、その方が「何を言いたいか何をしたいのか」ということを「聴く」ことが大切で、自分で捉えようとしていかないと物事は入ってこないということを伝えています。
リスクマネジメントでよくやるのですが、ある一場面の写真を撮って「この中に危険はありますか」と問うと、危険が見えてきます。
同じものを見ているのに、普段は見えないのです。
見つけようとするから見えるけれども普通に過ごしていたら見落としいるものがあるということをまず認識して、看護の視点を磨いていってほしいと考えております。
目が届く教育
今、看護師は何名程採用されていますか。
上原:117名ほどおります。今年は7名、新人が入りました。
まず総合病院を希望される方が多いと思いますが、脳神経外科単科の当院を希望した理由を聞くと実習で印象に残った患者さんがいらっしゃった、という方が多いです。
新人をサポートするシステムについて教えていただけますか。
上原:当院は固定チームナーシングですので、チーム支援型の教育体制を組んでおります。
新人もそれぞれAチームとBチームに分かれて、チーム毎の教育実施者が主となって、新人教育の方法を検討します。
そしてそれをスタッフナースと情報共有しながら、チームみんなで新人を育てていこうという形です。
大きな病院に比べたら新人の数も少なくて、各病棟にだいたい2人ずつ配置されますので、目が届きます。
それぞれの状況について共通の認識をもつことができるというのは強みかなと思っております。
看護師以外ではどのような職種の方がいらっしゃるのですか。
上原:看護部に所属しているのは、看護補助者として介護福祉士と看護助手がおります。
また医療秘書が、医師の補助業務をするために病棟にも配属されております。
そのほかにはリハビリテーション科、放射線科、薬剤部等があります。
病棟の業務の中で、看護補助者の業務はどのようなことがあるのでしょうか。
上原:介護福祉士と看護助手がおりますので、業務を分担しています。
介護福祉士は国家試験を受けて免許を持っている介護のプロですので、入浴介助など直接のケアをお願いすることが多いです。
看護助手には患者さんの身の回りのこと、ベッドメイクやメッセンジャー業務、配膳・下膳などをサポートしていただいています。
疾患や症状特有の援助の仕方について、看護師から看護補助者へ伝えることはあるのでしょうか。
上原:研修を組んでいます。
例えばポジショニングや移動の方法について、リハビリテーション科の方にも協力いただいて、年1回勉強会をしています。
先月にも、麻痺のある方の車いすからの移動の方法について、実施しました。
あとは、やはりみんなで情報共有するということで、ベッドサイドに「この方の場合は右側から」、「左側から」というようにピクトグラム風の文を置いています。
一目見たら分かるようにするのは大切ですね。
上原:はい。
どうしても転倒・転落が多いので、防止策検討するチームが病院内にあり、リハビリテーション科や看護部で一緒に考えて実践しています。
ほかにはどのようなチームがあるのでしょうか。
上原: RSTという呼吸サポートチーム、NSTという栄養のチームがあります。
少し独特なのは、その転倒・転落の予防プロジェクトチームだと思います。
循環器など他院との連携が必要なケースでは、住民の方が住み慣れた地域で医療が受けられるように地域で連携を図り、それぞれの特色をいかしてフォローし合っています。
仕事以外の時間はどのように過ごされていますか。
上原:通勤時間は、私の中での仕事のon・offをつける時間にしています。
朝来るときはonにする時間なので、考えごとをしたり時には仕事をしたり音楽やニュースを聴くなどしています。
帰りはoffにする時間なので、帰ってから何をしようと考えたりして過ごします。
休みの日は、温泉が好きなので、時間がとれれば信州や岐阜へ足をのばすこともあります。
ワーキングシンデレラというのは、どのような制度なのでしょうか。
上原:3カ月の休暇をとって、自分のやりたいこと、自己実現のためにその時間を使ってくださいという制度です。
4人1組で、4人分の仕事を3人でするという考え方で、交代で3カ月のお休みをとる。
4人集まらないと成り立たないのですが、昨年度は1組成立し、それぞれ国内外のボランティアや資格取得、旅行など、思い思いに3カ月過ごされました。
上原看護部長からのメッセージ
病院のアピールをお願いします。
上原:当院は脳神経外科の単科の病院ですが、脳外科には看護の原点があると考えております。
意識障害や運動障害、言語障害など、多種多様な症状をもった患者さんの看護に携わることで、どこへ行っても通じるものが身につくと考えます。
本当に看護師でよかった、と感じることもたくさんあります。
回復の過程に関わることができますので、状態が悪かった患者さんがどんどん回復していかれる姿には元気をいただきますし、その方が「ありがとう」とおっしゃって退院される姿に、やりがいを感じている看護師もたくさんおります。
ぜひ脳神経外科で一緒にこの醍醐味をあじわってみませんか
お待ちしております。
シンカナース編集部インタビュー後記
看護は気付くことから始まる。気付かなければ何も始まらない。
上原看護部長に、本当に看護は「気付いてなんぼ」の世界なのだということを改めて教えて頂きました。
ただ何となく見ているだけ、聞いているだけ、では看護を提供するために必要な情報は手に入れることはできません。
患者さんも常にご自身の希望や状態を言葉で教えてくれるとは限りません。
それでも看護師はその方々の希望を汲み取って代弁し、支えるという大切な役割を担います。
常に看護の視点を持ち、意識して物事を見聞きし続けることは最初は大変かもしれませんが、それだけ重要な役割を担うことのできる看護はとても素晴らしいものだと感じました。
上原看護部長、この度は素敵なお話を頂きまして誠に有難うございました。
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No.91 上原 かおる様(大西脳神経外科病院)前編「常に患者さんの視点で」