前編に引き続き、東京臨海病院の髙草木 伸子看護部長へのインタビューをお届けいたします。
認定看護師になり、感染予防対策の徹底を
感染管理の認定を取られた経緯はどのようなものだったのでしょうか。
髙草木: ICUに勤務していた時に、感染が原因で亡くなった患者さんがいらっしゃいました。
それが、医療者として感染予防対策を徹底しなくてはいけないということを強く感じた場面でした。
そこから、感染予防について勉強をしようと思い、日本看護協会が2000年に感染管理認定看護師の教育を始めた年に受講をしました。
その時は、臨床から離れ副看護部長でしたが、自分から受講を希望しました。
その後、諸事情により感染管理認定看護師としての役割を果たさないまま東京医科大学八王子医療センターを退職しました。
一から病院を作るやりがいを感じ
その後、こちらで働いた経緯を教えて下さい。
髙草木:私が尊敬する元上司から、東京臨海病院が開院するというお誘いを受けまして、開院6ヶ月前に師長として就職をしました。
二回開院を経験しましたが、最初の病院では経験が浅かったので、それほど貢献はできませんでした。
ですが、今の病院を開院する時には、感染管理認定看護師過程で学んだファシリティマネジメントや、滅菌消毒、衛生材料の選択、その他の看護用具などの準備を行わせて頂きました。
それぞれ専門性の高い人が集まっていましたので、担当に分かれて作業を行いました。
話を聞いていると楽しそうですね。
髙草木:そうですね、一から病院を作るという、普通では経験できないことをやらせていただき、とてもやりがいを感じました。
感染管理の専従となり、感染管理
勤務をされた部署について詳しく聞かせて下さい。
髙草木:2001年4月に開院し、最初は手術室とICUを担当しました。
その後小児病棟に異動になり、そこで7年ほど勤務致しました。
2009年4月に感染管理の専従となりました。
ちょうどその時、新型インフルエンザが大流行した年で、4月後半に新型インフルエンザが日本に上陸し、日本中が大変な状況でした。
タイミング的には、とても良い時期に専従にしていただいたのではないかと思っています。
皆さんが経験したことがない事ですが、どのように対応をされたのでしょうか。
髙草木:その時、まずマニュアルの見直しを行い、新型インフルエンザ疑いの患者さんが来院した時の診療体制の整備と医療者が感染しないための準備と教育を行いました。
そして、毎日保健所の担当者と連絡を取り合い、患者発生状況を確認し、医療者が混乱しないよう正しい情報提供と受け入れ体制の確認と調整を行いました。
私は1ヶ月間、病院の正面玄関入り口で発熱患者のトリアージを行い、新型インフルエンザ疑い患者を特設の診察室に誘導し、そこで診療チームが対応しました。
医療者は完全防御具を着用して診療するため、汗だくになりながら診療を行いました。
そのような状況から徐々に新型インフルエンザの特性がわかり対応も緩和され、診療が楽になりました。
全てが初めての体験でしたが、これをきっかけに当院での新型インフルエンザ受け入れ体制について、当時の病院長であられた山本博康先生が「ドライブスルー診療体制」を考案し、定期的に入れ訓練を行っています。
感じる心、考える力、関わる技を大切に看護教育を
今年4月から看護部長に就き、看護理念や看護部長として取り組んでいることはございますか。
髙草木:高齢の方がたくさん入院をしてきますので、安全・安心して入院して頂き、
安定した看護を提供できるよう環境作りに取り組んでいます。
転倒・転落予防や、できるだけ抑制しない看護など、今取り組んでいるところです。
看護部の理念である「思いやりのある看護」を実践する為に取り組んでいることはありますか
髙草木:自分のことをうまく伝えられない患者さんもいらっしゃいます。
そのような患者さんは何を言いたいのか、キャッチできる心と、何を私たちに望んでいるのかをきちんと考えてあげられる看護を目指しています。
そのためにも、先読み看護も大切ですし、それを実践するための技術を兼ね備えた看護師になって欲しいです。
教育も、感じる心、考える力、関わる技と、患者さんに対しての接遇を重要視した教育に取り組んでいます。
心を育てる為に大切にされていることはありますか。
髙草木:心を育てるためには、先輩がどのように患者さんに関わっているのか、患者さんと対話をする時などの視線、目線を合わせることや、患者さんの仕草でどういうことを感じ取っているのかなどを、先輩を見ながら学んで欲しいと思います。
あとは、倫理教育や道徳観、スピリチュアル教育も取り入れています。
一番大切なのは、現場教育です。
実際にベットサイドでどのような看護を提供するのか、先輩と一緒に考えながら実践していくことが最も効果的だと思います。
新人看護師をみんなで育てようとする環境
看護師への指導方法はどのようになされているのでしょうか。
髙草木:一年生に対してはプリセプターと実践指導者が中心になって病棟全体で一年生を育てようという視点で取り組んでいます。プリセプター、実践指導者は院内研修を受講し認定された人が担当します。
教えてあげられる人がいるというのは、私の病院の強みだと思います。
こちらに入職される方はどのような方が多いのでしょうか。
髙草木:北海道から沖縄まで、全国から来ていただいています。臨床実習を4つの大学と専門学校、助産師の教育過程を受けていますので、そこから就職をしてくれる方もたくさんいますから、すごく助かります。
看護補助者はチームの重要な一員
看護職員の人数と看護師以外の看護職員の役割について聞かせていただけますでしょうか。
髙草木:看護要員は、臨時の人や看護助手の人も含めると406人が在籍しています。
正職員ですと、340人程です。
まだ、ベッド数に対して正職員が少ない状態です。
看護補助者は38名配置していますが、定員が51名なので現在も募集はしております。
看護補助者には研修や実習を行いながら、日常業務を行なっていただいています。
看護補助者の業務をマニュアル化して、具体的に行えるようにしています。
直接患者さんのお風呂などのケアに入る時には、看護師と一緒にケアに入ります。
また、事務的な書類の整理や物の移動なども行なっていただいています。
看護補助者として、物を専門に運んでいただくメッセンジャーを取り入れていますので、基本的に看護補助者は病棟から動かないようにしています。
看護補助者さんは資格を持っているのでしょうか。
髙草木:看護補助者さんの中には、ヘルパーを持っている方もいらっしゃいますので、資格を持っている人たちと一緒にケアに入っています。
看護補助者さんは私たちチームの重要な一員です。
笑うことでストレス解消を
仕事以外で何か趣味はお持ちですか。
髙草木:友人と寄席に行き、ただただ笑って帰ってくるのがストレス解消法です。
落語は楽しいですし、笑うと嫌なことも忘れますので、私にとってはとても重要なことです。
一番前の席に座って芸人さんに話しかけられたり、マジックなどでトランプを渡されたりと、芸人さんとのやりとりも出来、面白いですよ。
快適で安らげる病院を目指して
病院というよりも綺麗なホテルのような雰囲気ですが、病院内の特徴を教えてください
髙草木:病室の大きな窓から、スカイツリーや葛西臨海公園の観覧車、冬になると富士山も見えます。
屋上には庭園があり患者さんの憩いの場になっています。
職員の有志が集まり、園芸部を作り活動しています。
私はその部長をしていまして、10月には冬の苗を植える予定です。
病院は三角形で、1フロアに3つの病棟があり一周すると3つの病棟を回ることができる構造になっています。
病棟は一病棟33床で12病棟あり、個室の占有率が4割で病室は広く快適で安らげる環境を提供しています。
また、医療者にとって一病棟33床は患者さんを把握しやすく、働く側の動線も考えて作られている病院です。
ラウンドを通して、スタッフや患者さんに接するが楽しみです。
髙草木看護部長からのメッセージ
新人看護師の方に向けてのメッセージをいただけますでしょうか。
髙草木:新人看護師として、初めて働く病院は社会人としてのスタートになります。
将来どういう看護師を目指すのか、それにはどのような病院で働いたほうが良いかを考えて病院選びをして頂きたいと思います。
将来働くための下準備は、とても大切です。
学生から社会人になり、環境が変わると心身共にバランスを崩しやすくなりますが、経験を重ね一つひとつ自分の引き出しを増やしていくことが大切であり、遣り甲斐に繋がると信じています。
それにはプライベートの充実も重要です。
当院は、国家公務員に準ずる福利厚生で、完全週休二日制で、祝祭日がお休みになります。オンとオフがはっきりしているので、メリハリのある勤務体制になっています
まずは、働く病院の雰囲気を知ることをお勧めします。
是非、当院のインターシップ、見学会に参加して、自分の目で病院・病棟の雰囲気、働くスタッフを見て下さい。
シンカナース編集部インタビュー後記
東京臨海病院は名前の通り海に望んでおり、屋上庭園に出るととても爽やかな空気を感じることができます。
髙草木看護部長は豊富な臨床経験をお持ちであるだけでなく、海外の医療現場を実際にご覧になり、
さらには病院の開設を2回もご経験されていらっしゃる方です。
お話をしている中で経験の豊富さと視野の広さを実感致しました。
また現場を改善しようと、いち早く感染管理の認定資格を取られたというお話から、
看護に情熱を持って当たられていることも感じることができました。
そのような部長の下であれば、看護師は熱意が薄れることなく働き続けることができるのではないかとできると思いました。
髙草木看護部長、この度は大変興味深いお話をお聞かせ頂きまして、誠にありがとうございました。
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No.77 髙草木 伸子様(東京臨海病院)前編「姉の働いている姿を見て看護師に」