11月30日は何の日?〜ヴァージニア・ヘンダーソンの誕生日

コラム

今日は看護師なら知らない人はいないであろう、ヴァージニア・ヘンダーソンの誕生日です。今年は彼女が98歳で亡くなってから20年の節目となる年でもあります。

ヘンダーソンといえば、皆さんが看護を学び始めて最初に学んだ看護理論家ではないでしょうか。その業績の高さから日本はもちろん世界にその名を知られた存在です。看護学校に入学するまではナイチンゲールしか知らなかった私たちの脳みそに新しい1ページを刻んでくれました。初めての看護過程をヘンダーソンの理論で展開した人も多いことでしょう。

ヘンダーソンはどんな人

アメリカミネソタ州で生まれたヘンダーソン。弁護士の父を持つ彼女は、第一次世界大戦中、家族が従軍する姿を見て自分も何か役割を見つけようと看護学校に入学したと言います。卒業後はキャリアを重ね看護教育のフィールドで活躍し、彼女の代表的理論でもある「基本的看護ケアの14の構成要素」いわゆる「14の基本的ニード」は看護教育史に残るものだと言われています。彼女が執筆した「看護の基本となるもの」でその詳細は述べられていますが、時代変化を経た今もなお「看護の基本」として講義・実習で取り入れられています。

ヘンダーソンは「看護の基本となるもの」の中で看護の機能について以下のように定義づけています。

「病人であれ健康人であれ各人が、健康、あるいは健康の回復(あるいは平和な死)に資するような行動をするのを援助すること。その人が必要なだけの体力と意思力と知識をもっていれば、これらの行動は他者の援助を得なくても可能であろう。各人ができるだけ早く自立できるように助けることも看護の機能である」

これは日本で考えると保助看法に定義付けられている看護師の業務の1つ「療養上の世話」の部分にあたると考えることができます。「療養上の世話」はあまりにもその範囲が広く、例えば清拭も退院前調整もそこに含まれます。でも、すべてはその人のゴールである「健康の回復」と「自立」につながっていくと考えると、非常に納得できるものです。

「14の基本的ニード」を読み返す

看護師として働き始めると、看護理論について考えることに縁遠くなってしまいがちです。人間の基本的欲求に基づいて考えられた「14の基本的ニード」を挙げてみました。改めて見てみましょう。

1.正常に呼吸する

2.適切に飲食する

3.身体の老廃物を排泄する

4.移動する、好ましい肢位を保持する

5.眠る、休息する

6.適当な衣類を選び、着たり脱いだりする

7.衣類の調節と環境の調整により、体温を正常範囲に保持する

8.身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する

9.環境の危険因子を避け、また、他者を傷害しない

10.他者とのコミュニケーションを持ち、情動、ニード、恐怖、意見などを表出する

11.自分の信仰に従って礼拝する

12.達成感のあるような形で仕事をする

13.遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する

14.「正常」発達および健康を導くような学習、発見をする。あるいは好奇心を満足させる

こうして改めて見てみると看護師はどんなフィールドで働いていても、対象者に対して日々これらのニードが充足するように関わっているのだと再確認できます。身体的な支援はもちろんのこと、心理的・社会的支援も行うことで、その人を全人的な意味で「健康の回復」へと導いていくことができるのです。今の看護でもこれについて共感できる部分が多いのではないでしょうか?だからこそ長い間読み継がれ、教育教材としても高い評価を得ているのでしょう。