No. 70 熊谷恒子様(東北公済病院)後編「パートナーシップ・ナーシング・システムで質と安全を担保する」

インタビュー

前編に引き続き、東北公済病院の熊谷 恒子副院長へのインタビューをお届けいたします。

立場が変わると管理する範囲も拡大する

看護部長にはいつ頃なられたのでしょうか。

熊谷:平成18年に管理看護師長になり、平成22年に看護部次長になりました。

次長としては部長の補佐と病棟管理を兼務していました。

平成24年からは次長業務だけに専念するようになり、部長になったのは平成26年でしたので、今年で4年目になります。

副院長との兼任になったのは今年の4月からです。

役職が上がるにつれてどのようなことが変化してきましたか。

熊谷:管理する範囲がどんどん広がっていくことが一番の変化です。

病棟の管理では、病棟の中のスタッフと患者さんとご家族の方が対象になりますが、副部長になると、それに加えて看護師長、看護部全体の管理も加わります。

副院長と看護部長になると、看護部だけではなく他部門にも関わりが出て来ますので、病院全体になります。

看護部は病院組織の中では一番人数が多いので、他部門との調整をする上でも意見は出しやすい立場にあるとは感じています。

また、今だけ良ければ良いのではなく、今後も継続して良いケアを提供していけるために、今何をしておくかもとても重要であると考えています。

パートナーシップ・ナーシング・システムで質と安全を担保する

看護部の理念「安全、安心な療養環境と質の高い看護の提供を目指します」を実現させるために取り組んでいらっしゃることをお伺いさせて下さい。

熊谷:4年前から病院全体にパートナーシップ・ナーシング・システム(PNS)を導入しました。

先輩と一緒に行動できる方式になって一番喜んでいるのは1年目の入職した新人看護師です。

先輩と一緒に仕事をしますので先輩のやっている手技やケアを間近で見ることができます。

新人からは「注射の手技など様々なケアを間近で見させてもらって、とてもありがたい」

「看護って素晴らしいと先輩を見て気づかせてもらった」と言っています。

2名の看護師で業務に当たることで、確認作業も確実に行えますし、重症患者を持つ看護師の負担感が軽減できると考えています。

ナースステーションに戻ったものの誰もいなかったから仕方なく新人が一人で実施したらミスにつながってしまったというリスクは減ります。

PNSを導入してからの事故報告の中身が変わってきています。

当院は40年程前から新人の教育には力を入れています。看護の質を高めるという部分では国家公務員共済組合連合会が作成したキャリアラダーを基に、当院独自のキャリアラダーを作成し臨床の実践能力を高める教育を提供しています。

看護師は何名程配置されているのでしょうか。

熊谷:今358名程です。

看護補助者の配置数は何名くらいでしょうか。

熊谷:全体では50人弱です。

特に回復期のリハビリテーション病棟と地域包括ケア病棟は、慢性期の方で日常生活の援助が多い病棟になりますので、看護補助者を多く配置しています。

回復期のリハビリテーション病棟については、介護福祉士または介護職員初任者の資格を持っている方に夜勤をお願いしています。

自らの行動を振り返り根本原因を見つめる

患者さんに関わる研修や教育はどのようなことをされているのでしょうか。

熊谷:医療安全管理や感染対策をはじめ個人情報保護に関する研修会など様々やっております。

以前は教育部の方で企画をしていましたが、現在は主任が病棟や外来で直接、看護補助者の業務を指導したりサポートしたりしますので、現在は主任が中心になってプログラムを作成し教育を運営しています。

新人の研修はどのようなことをされているのでしょうか。

熊谷:基本的な看護やクリニカルな部分を学ぶ研修の他に、新人のナースが6か月経験したところで、自分の失敗体験を振り返って、根本原因を考える研修があります。

KJ法をグループで行うもので、チーム発想法と言います。グループワークを通して、自分の失敗の根底にあるものは何かを振り返っていきます。

グループの中で「それは、どうしてそう判断したのか?」「何故その時、そういう行動になったの?」などをグループのみんなから言われることで、「そっか、そうだよね」「その時、何で気づかなかったのだろう」と気付くことができます。

もし、これらのことを先輩や師長から言われるとしたら、言い訳をしたり、「確認不足でした」で終わってしまったりするのですが、新人同士のグループで行うことで客観的に自己の行動を振り返り、問題に潜んでいる根本原因をみんなで突き詰めていくと、「私って、ここができてなかったんだ」「こういうこと気づけなかったんだ」っていうことに自分達で気付いていきます。

その後、インシデント・アクシデントを起こしてしまった時に、自分で自分の行動を振り返ることができるようになっていくと考えています。

何度も同じ失敗を繰り返す傾向がある人は、その根本原因をしっかりと見つめてもらえる良い機会になります。

この研修終わると新人看護師が「何かちょっと一皮むけた感じがする」「何かやる気に満ちてきますね」「表情が変わりますね」と看護師長達は一様に言っています。

私が入職する前からずっと当院で取り組んでいる研修です。

人を育てていくには、教育が大事で、その教育を積み重ねていくことによって、全体の質が担保されていくと思っています。

かなりお忙しくされていらっしゃると思いますが何か気分転換になるような趣味とかお持ちでしょうか。

熊谷:本当はいろいろあるのですが、今はちょっと時間が取れていないですね。

細かいものを作るのが非常に好きです。

ビーズとかでネックレスなどのアクセサリーを作るのが好きです。

小さい頃からレース編みとかが大好きで時間さえあればやっています。

逆に身体を動かすことが苦手です。

娘の影響でクラシックを聴くようになりました。

吹奏楽をしていますので、演奏会など聴きに行くこともあります。

ゆったりと聞いていると、心がほぐされる感じがします。

熊谷副院長・看護部長からのメッセージ

新人看護師や学生へのメッセージをお願いします。

熊谷:国家公務員共済組合連合会 東北公済病院は仙台市の中心部にある病院で非常にアクセスの良いところに立地している385床の病院です。

急性期と慢性期、回復期、透析センター、訪問看護ステーション、健診センターもあります。

様々な分野を持っていますので自分の得意とする分野、あるいは好きな分野を深めていくこともできますし、色々な分野を経験しジェネラルに学んでいくこともできます。

是非、色々な経験をしたいと考えていらっしゃる方に当院を選んでいただけると嬉しく思います。

看護部としては、看護師それぞれの臨床の実践能力向上を支援していくためのキャリアラダーを構築しています。

また、パートナーシップ・ナーシング・システムも採用していますので、先輩方と一緒に看護を実践、提供できる病院です。

是非、当院で一緒に看護を実践してみませんか。ご応募頂けたら嬉しいです。

シンカナース編集部インタビュー後記

学生時代に仲間と看護について語り合ったというお話がとても印象的でした。

毎日忙しく病棟で働いていると、なかなか日々の看護や理想の看護について、改めて時間をとって考える機会を作ることは難しいことだと思います。

研修の中でチーム発想法を用いて看護師一人一人が成長する機会を設けるだけでなく、

さらにパートナーシップ・ナーシング・システム(PNS)も導入して、

看護師同士の関わりも促進されていらっしゃることは看護の質を担保する上で、大変重要な取り組みだと感じました。

また、看護師として迷われた時期を乗り越えられたお話も、実際に現場で働いている看護師にとってはとても貴重な経験知になると思います。

熊谷副院長、この度はとても興味深いお話をして頂きまして、誠にありがとうございました。

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