前編に引き続き、山形徳洲会病院の井澤照美看護部長へのインタビューをお届けいたします。
「他のスタッフの成長を見る事が一番うれしい」
ここに来てからは、すぐにトップのポジションでしたか。
井澤:いいえ、違いました。師長としてきて、誘ってくださった元上司が部長でした。
その時は、ここの病院は作っている途中だから、師長としてきて一緒に作っていかないかと言われたので、やりますという事で来ました。
元々前の病院でも師長だったので、異動という形になりました。
こちらで師長を務めた部署も、また神経内科でした。
一番初めに勤めた所も、色々な出会いがあった場所も神経内科の患者さんもおられた場所だったので、配属になった所で自分が思い描いているような病棟にすることが出来ました。
患者さんにこういった事を提供する、例えば患者ファイルを作る事や、患者さんとのコミュニケーションの中で話題となった、呼吸器を付けた患者さんの神経難病学会等の学会への参加をすることなど、行うことができました。
患者さんをお連れすることで、学生さんや学会参加の方に、神経内科の疾患を知ってもらいました。
呼吸器をつけている他の方もいましたが、その方とのコミュニケーションも取れました。
決められた仕事の中では、中々できない事だとは思いますが、この徳洲会病院だからこそ、出来たと思います。
患者さんに不利益が被らなければ大丈夫であるという事です。
またそういった学会に患者さんをお連れする事が出来た事で、病棟内もモチベーションが上がりました。
そういった患者さんへ看護支援をして学会に行ってもらう事で、患者さんもまた自分の絵葉書や書いている絵や手帳をお見せしていく事が出来ます。
またその学会に来ている看護師の方や学生の方が患者さんへ声をかけるので、新たな刺激になり、患者さん自身も喜ばれますし、患者さんの自立にもつながっていきました。
そういった事が出来ました。
その後にまだ部長になられるまでは副部長になられた訳ですか。
井澤:そうです、一年ごとに変わっていきました。
最初は神経難病の師長をやり、次に一般病棟の師長をやりましたが、その途中から副部長になりました。
その次の年、3年目に看護部長代行を務めることとなりました。
何もわからない自分がいたので、看護部長という仕事がどういった仕事かもわからないままに見様見真似で手探りの状態でしたがやっとここまで来る事が出来たという感じもしています。皆さんの協力があったからだと思います。
部長になってから経験されて良かった事はありますか。
井澤:やはり、新しい師長さんになる方や、副主任や主任に上がっていくスタッフの人達を見ていく中で、成長していく姿を見る事はとても嬉しいことです。
色々な事が出来るようになり、部署をまとめる事が出来るようになっていくそんな姿を見る事が一番嬉しいことです。
「優しくなければ看護はできない」
看護部の方の理念で「心に届く看護」というものを打ち出されていますが、具体的にどのようなものでしょうか。
井澤:「心に届く看護」という事は徳洲会の看護部、全国72病院の理念として挙げている事です。
山形ではそれをどの様にして具体化しているのかといえば、患者さんに優しく親切に丁寧に看護する事が基本だと思っています。
そうすることで患者さんに伝わるという思いもあります。
徳洲会病院の中でも特に山形徳洲会病院では、患者さんの高齢化が進んでいます。
平均年齢も70歳になっています。患者さんは、一般病棟はまだ若いのですが、4階の難病病棟、そして7階の療養病棟などで療養されている透析の患者さん等、高齢化しています。そのような患者さんへの看護は特別なものではなくなっていますので、やはり看護の基本である、優しく親切に丁寧にする事に尽きると私は思います。
患者さん本人もわかっていても、行動が少しずつゆっくりとなっていくので、そこに合わせていくためには基本的に優しくなければできないと思いますし、そういう人間でなければ看護師はできないと私は思っています。
確かにベースの面で看護に向いている、向いていないという所はあります。
井澤:男女ともに、誰かに何かをしたいという気持ちをお持ちで、その気持ちを深める事が出来る人が看護師になっていくのだと思います。
皆さんが誰かに何かをしてあげたいという思いを持っていて、それが出来た時に自分の満足感にもつながっていくのだと思います。
今も、写真やビデオを撮ってくださっていますが、この人にとってこういう風にしたほうがいいのではないかという事も、その人に対してどうすれば良く出来るかという事を考えてくれていますよね。そして上手くいったとき、それが、仕事における、満足感に繋がる。
その感情は、病んでいる患者さんに対して、どうすれば良いかという事だけでなく、医学的な面も含めて、看護師という専門家としての満足感に繋がっていると思います。
「優しく親切に丁寧に」をモットーにやる様に、皆に言いますが、それだけではなく、そこから自分が得意とする分野を深めるなど、学ぶという気持ちで勉強もすることがなければ看護師としてはできないと思います。
一生勉強だと思いますし、実は看護師の中には勉強したいと思っている人が多い。
今まで、研修にあまり行かない病院でしたが、行けるという話や色々な研修があるという事を提供すると、皆が希望をしてきますし、勉強をしたいという思いが強いのがわかりました。
自分もそうで、もっと何かあると思うとまだまだと思いますし、別の事を深めて、勉強していきたいと思います。
そのためには時間を作らなくてはいけません。
「看護補助者がいなければ看護はできない」
こちらの病院には看護補助者さんはおられますか。またどのような役割でしょうか。
井澤:はい、看護補助者は45名程います。看護師の数が107名程います。
看護師の半分程の人数ですが、こういったケアミックス型の病院なので、看護補助者の方に24時間の生活支援をやっていただかなければ、看護は、成り立ちません。
その点について、責任を持ってする事が出来る看護補助者を育てていきたいと思っています。
看護補助者さんもまた、一緒に学んでいくという所もありますか。
井澤:当病院では、合同カンファレンスをします。
その時には、介護士も担当の看護師と一緒に入ります。
担当の介護士が生活支援を行う中での問題を出してもらいます。
1つの問題に対して、医師、看護師、介護士、リハビリ、理学療法士の方といった色々な方面から意見を出し合う形のカンファレンスを開いています。
何か気分転換になるような趣味はございますか。
井澤:そうですね、家庭菜園というものでもないのですが、家の裏に畑があって、それを購入しました。5年ほど前ですが、退職した後にはそういう所を作って、生活できればいいと思っています。
まだまだ退職はできないので、主人がもうメインにやっています。土曜日の午後と日曜日だけですけど。
土が酸性かアルカリ性かといった所のチェックまでしてくれます。
どのようなものを作るかですが、きゅうり、トマト、なす、かぼちゃを作っています。
後はワサビなどを作っていて、水が流れていなくても作る事が出来る品種です。
ワサビは5年越しで、作り始めてから埋めていますがようやく大きくなりました。
あとは、イチゴです。植え替えをしないと大きくならないと言われたので、去年ようやく植え替えをしました。
イチゴは虫がつきやすいなど、難しいといいます。
井澤:そうです。今年はその虫がついて、失敗した所もありますが、数は少なくなりました。去年は多かったので冷凍する事になりましたが、今年は収穫1回で終わってしまいました。
それと、夕顔です。びよーん、と大きい夕顔と、後はひょうたんを今年は作りました。
色々なものを作られていますね。ところで、お肌がお白いので全然日焼けをされていない感じがします。
井澤:一応は予防をしています。帽子をかぶっています。
ここに来るまでも車で来ますが、首にも巻いて、歩く時には日傘で、車の中ではサングラスをかける事もします。
あと、お車の中で音楽を聴かれる事はありますか。
井澤:聴くよりも、自分で歌うほうが好きです。
曲として好きな物は一緒に歌える中島みゆき等の曲で、聴くのは平井堅の大きな古時計です。
お二人とも歌が上手い方の曲が好きですか。
井澤:実はうちの主人も歌が上手で、高校や大学の時にバンドを組んでいました。それで、サザンオールスターズの歌などを好きでよく歌ってくれています。
それではお二人でカラオケに行く事などもありましたか。
井澤:カラオケはあまりなかったですが、どこかに遠出をする時に曲をかける事や、歌を歌う事があります。
ご主人はバンドでボーカルだったのですか
井澤:いいえ、ドラムでした。
実は高校の同級生で、その時の学園祭で主人はバンドで演奏して、私が歌いました。
その学園祭の時だけ組んだバンドでした。
「やりたいことを支援してもらえる環境」
この病院の特徴的な物や、他とはここが少し違うという特徴はありますか。
井澤:徳洲会病院全体がそういった所だと思いますが、
自分たちがやりたい事がしっかりしていれば、しっかりとした支援がもらえます。
そういった経済的な面だけでなく、多くの研修にも参加させてもらえています。スタッフを大切にしてもらえる面だと思います。
ここに来て、そういった所を実感しているので、もっと多くの人に、多くの事を経験し、体験してもらいたいという思いがあります。
井澤照美看護部長からのメッセージ
新人看護師に向けたメッセージをお願いします。
井澤:新人の看護師さんに対して思う事は、自分を作るのではなく、そのままの自分を出す事が出来れば良いと思います。
その中でも、周りにいる人は自分よりも先輩なので、先輩の話を聞ける新人であれば色々な事を吸収でき、大きく成長していく事が出来ると私は思っています。
自分を出して、看護を追求してもらえれば良いと思いますし、そうやっていくうちに自分が本当にやりたい看護が見つかっていくので、その時に「自分の思い描く看護」を頑張ってほしいと思います。
シンカナース編集長インタビュー後記
井澤看護部長から明確に「優しくなければ看護はできない」とおっしゃっていただき、改めて看護には「優しさ」が大切だということを感じさせていただきました。
当たり前、声に出さなくても今更ということは、看護の暗黙知ではありますが、こうしたことをきちんと形式知化する作業が看護界では進みつつあります。
看護師に必要な資質、優しさとは何か、こうしたことをきちんと看護管理者がわかりやすく、声に出していただけることにより、看護に新たに踏み出す方々にとっても、安心して看護の道へ進む指針になると思います。
また、良い出会いを繰り返され今に至っているということでした。
井澤部長とお話しさせていただき感じたのは、温かく受け入れてくださるという明るい雰囲気。
井澤部長ご自身が、良い出会いを引き寄せていらっしゃるもしくは、出会いを良い出会いに変換されるパワーがおありなのだろうと感じます。
井澤部長、この度は素敵なお話どうもありがとうございました。
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No. 60 井澤照美様 (山形徳洲会病院) 前編:良い出会いがあったから、今がある