前編に引き続き、太田西ノ内病院の坂本 美佳子看護部長へのインタビューをお届けいたします。
「自分がこうしたい」という事を「どうしたら遂げられるか」
看護部で大切にしている事や、ご自身がこれはやりたいと思い、実行されたことは今のお話以外ありますか。
坂本:私が科長に話す事は、実際片方の手では自分の患者さんの安心と安全を守る一方で、片方の手ではスタッフ自身を守る必要があるという話をしています。
もう一つ大事にしている言葉は、管理者としてPDCAサイクルは回すべきだと思っています。
それを心がけて自分が管理して欲しい事、マネジメントをして欲しいというのは、常々言っていますし、大事な所の一つだと思っています。
今年一つ変えた事で、会議を色々沢山するのではなく、伝達と管理者が話し合う場の会を2つにし、グループワークを行って話す時間を取りました。
また、可視化という点では、経営的な視点も必要となるので、そういった情報も全てオープンにしています。
部長ご自身マネジメントを学ぶなどのご経験から活かしていますか。
坂本:そうですね。管理者研修の大事さは、身を持って学びました。
経営的視点とか可視化などは、当院の附属の看護学校で4年間看護教員をしていましたので、教育の大切さや人材育成について学んだ事が活かされていますし、安全の専従をやっていた経験も自分の部長としてのベースになっているかもしれません。
また副部長になった時に、そのときの看護部長から直接「看護部長職とは」を学びました。
「自分がこうしたい」という事を「どうしたらこれが遂げられるか」という、交渉力は絶対ものにしたいとも思いました。
例えば2交代制です。
今うちの病院では12時間2交代制でやっていますが「したい」と言えば、「どうしたら12時間2交代で、病院を動かせるか」となります。
どういう手法を使えばそこに行きつくのか、ち密な計算と誰がキーパーソンなのかといったことを急がずにやっていたのです。
それはなるほどとなりました。
評価をしながら改善して、でも急がないでやる。
看護部がやりたいといって出来ない部分もありますし、スタッフの生活リズムも変わるので大きな事です。
そういったことを一つ一つとやっていったのを副部長として近くで見ていて勉強になりました。
教科書などではなく、その人がロールモデルだったと思います。
こちらの看護部が目指されている「患者さんの人権・人格を尊重し、質の高い看護を提供する」という言葉がありますが、これは病院で受け継がれているものですか。
坂本:そうです。病院の「生命の尊厳と平等な人間愛」という理念からも来ています。
そういった看護師を育てたいと思っています。
それに対して、病院として倫理に力を入れています。
臨床倫理や色々な場面でみんなで話し合っています。
例えば事例カンファレンスであれば、痛みのある患者さんが終末期を迎えていて、奥さんの気持ちや本人の気持ちなど、主治医を交えて話しました。
各所属で事例カンファレンスをやってもらっています。
また、看護職は約1,000人いて、3年前から全員に倫理研修をしています。
電話の受け答えや個人情報の事、ナースコールなどの問題について話しています。
それぞれの時間帯に行きやすいように何回も実施しています。当院では、倫理と教育システムをしっかりする事で「大きい2本柱」を大事にしています。
「看護補助者の責任と判断は私たちが守る」
看護補助者はこちらの病院にはおられますか、またその役割をお聞かせください。
坂本:現在110名います。
日常生活の援助をしてもらっていますが、無資格者なので看護補助者の方を守らないといけません。
責任と判断は、私たちがしっかりと行う必要があります。
例えば「この人の口腔ケアは、全然看護の判断を要しない人なのかどうかというのをわかったうえで任せないといけないよね」といった事などの研修をしっかりとしています。
看護職のチーム医療の中ではとても大事な役割です。
看護師が専門的技術のほうを高めるためにも、なくてはならない存在であることをアピールして、看護補助者の研修や看護補助者にも担当者を配置しています。
部長ご自身のお仕事以外での趣味や、余暇の時間の過ごし方は何かございますか。
坂本:私は意外に宝塚が好きで。
昔は、私は歌って踊れる看護師を目指していたくらいです。宝塚を見ると元気がもらえます。
年に一回は行くという目標を立てています。
後、日常的な物であれば、「仕事が終わってから美味しいもの食べて美味しいお酒が飲めたら気分転換になっていいかな」と思っています。
好きな音楽などはありますか。
坂本:この前は、松山千春のライブに行ってきました。
後は、ドリカムも好きですけど、今車で聞いているのは、福山雅治さんです。
きっといろいろ好きで。
幅が広いのかもしれません。
坂本看護部長からのメッセージ
新人の看護師に向けて、カメラに向かってメッセージをお願いします。
坂本看護部長:新人の皆さんへ。
4月に入職し5カ月が過ぎました。
今一番辛かったり悩んだりすることがいっぱいあると思います。
私の周りの新人の職員もそうです。
一人で抱え込んでいたりや、毎日どうしていいか分からない事もあります。
記録に追われ、そして覚えることがいっぱいあって、何がなんだか分からない。
何が分からないか、が分からないという状況だと思います。
しかし皆さん方は一人ではなくて、ちゃんと支援する人が周りにいます。
ぜひ皆さん方が、困った時辛い時に声を出していただけたら私たちに届きます。
きっと届けようとしていて、色々なサインをしているのかもしれません。
ぜひ声に出して「私、今こう悩んでいます」や、「辛い」と言っていただけたら、すぐに周りの人は動きます。
皆さん方が思っている以上に相談してくれたら、もっと大きい意味で「それだったらこうしよう」や、「それだったら、こういうこともあるよね」とか、経験から言えることがありますので、話してみてください。
声に出してみてください。
きっと、皆さん方の周りの人は待っています。
今はきっと辛いですが、大丈夫です。
看護が好きなあなたには、きっとこれから、もっともっといろんな出会いがありますので、しっかりと今の自分を好きでいて楽しんでください。
聞いていて、私、新人の気持ちになりました。
本当に心強いメッセージです。
シンカナース編集長インタビュー後記
病院を訪問させていただき、まず目に飛び込んできたのは、坂本看護部長の素敵な笑顔と温かいオーラでした!
ポジディブなパワーをインタビュー中もひしひし感じることが出来、お話の内容にも引き込まれていきました。
坂本看護部長の素敵なポイントは「全力」ということをどの場面でも感じさせていただけることではないでしょうか。
学生時代であっても、看護師になってからでも、看護管理者としても、行動も思考も「全力」で看護と向き合われている。
新たな役割に向き合われる時も、学びと実践を自ら実施されていらっしゃる。
リーダーとして、とても尊敬出来る行動力をお持ちだと感じました。
また、新人看護師の方とお話されていらっしゃった場面でも、インタビュー中と同様に、明るくポジティブな対応をされていらっしゃいました。
坂本看護部長、スタッフの方々との関係もオープンに見させていただき、より思いが伝わってまいりました。
貴重なお話、本当にありがとうございました。
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No. 56 坂本 美佳子様 (太田西ノ内病院) 前編 「自分がどういう働き方をしたいかを言って欲しい」