No. 53 鈴木のり子様(いわき市立総合磐城共立病院)後編「慈心妙手(じしんみょうしゅ)」

インタビュー

前編に引き続き、いわき市立総合磐城共立病院の鈴木のり子副院長へのインタービューをお届けいたします。

助け合うのが当たり前の職場

スタッフに関して伺わせてください。

学生を育てられていたご経験から、最近の新人の傾向など見えてくることはございますか。

鈴木:どうでしょうか。

20年教鞭をとりましたが、あまりベースは変わっていないと思います。

特別困ることもなく、話せばわかってくれるとも思います。

でも確かに新人に限らず変化している部分はありますので、その変化に合わせて私も自分の価値観を変えて対応をしています。

どのような点が変わってきていると感じられますか。

鈴木:以前は出産後も子供を育てながら働き続ける、家庭も大事にしながら仕事中心の生活をする、というのが一般的だったと思います。

ですが今は家庭、子育てが第一に来るようです。

ですから、その家庭と仕事を両立して定着してもらうために、仕組みを変えるとともに、育児休暇中の職員に細やかに声かけをするようにしています。昨年は、育児休暇中の職員同士のコミュニケーションの場として「ママ会」を開催しました。

スタッフの定着には職場環境がとても大切だと思いますが、その点は如何でしょうか。

鈴木:みんなよく「温かい」「優しい」「人間関係がいい」と言ってくれます。

看護師の中には子育てをしている方など夜勤ができない人もいて、「申し訳ない」「夜勤ができないなら続けない方がいいのかな」と感じてしまうことがあるようです。

でも辞めないで続けてくれた方が仲間も増えます。

そのためか、スタッフ達は皆が働き続けられるような職場作りに協力してくれています。

「もう早く帰っていいよ」、「大変そうだからこれやっておくよ」と助け合える職場が出来上がっているのです。

お互いに色々な事情があってもカバーしあうのが当たり前、という風土が出来上がっているのですね。

「優秀な看護補助者」を目指すラダー

看護補助者に関しては如何でしょうか。こちらの病院には何名ほど配置されていますか。

鈴木:今は日勤だけですが、70人くらいです。

どのような業務がありますか。

鈴木:病棟だと日常生活援助、搬送業務、物品点検です。

外来では、医師の診察の介助をしてもらっています。

看護補助者向けの研修などはございますか。

鈴木:看護補助者に長く勤めてもらうため、定年まで勤められるように雇用形態を変えました。それに伴い、目標を持ってもらうことを目的に昨年から看護補助者のラダーを導入しました。

看護補助者の研修は認定看護師も担当しています。

ラダーの内容はどのようなものでしょうか。

鈴木:ラダーは全部で3段階あり、ゴールは一言で言えば「優秀な看護補助者」です。

内容は日常生活援助の方法や患者さんへの接遇などです。

実際に現場で指導をするのはどなたですか。

鈴木: 看護補助者は一病棟に3から4人配置していますので、看護補助者同士でも行いますが、基本的に最初に教えるのは看護師です。

チェックリストも作っていて、1年間ごとに副師長を中心にどの技術ができるようになったかチェックをしています。

慈心妙手(じしんみょうしゅ)

貴院の看護部の理念を実現するために心がけていらっしゃることはございますか。

鈴木:『市立病院の看護職員として自覚を常に持ち、患者さんの意思を尊重しながら真心をこめて、市民に信頼される看護を提供します。』というのが当院の看護部理念です。

看護師でも看護補助者でも、採用したらオリエンテーションや研修では必ず「慈心妙手(じしんみょうしゅ)」という言葉を伝えています。

その言葉を通して、「私たちは優しい心、患者さんの立場に立った優しい気持ちで、今できる最高の看護を提供します。だから学生も看護補助者も看護師も、あなたが今できる最高の看護をしてください。」と伝えています。

何か最後の判断を下す時に戻る場所が共通の価値観、つまり理念ですので、まずはその言葉を浸透させることに一番力を注いでいます。

確かに、理念は壁に飾ってあるだけでは浸透しませんから何度も伝えることは大切ですね。

看護部長がお仕事以外で楽しみにしていらっしゃることなどはございますか。

鈴木:コンサートに行くことと本を読むことです。

本はビジネス書を読むことが多いです、興味があるので。

歌を聴くと瞬間的に仕事を忘れることができます。

どのような歌をお聴きになるのでしょうか。

鈴木:ジャンルは結構限られていますが、絢香ですとか癒される歌が好きです。

鈴木看護部長からのメッセージ

看護師を目指す方、新人看護師へのメッセージをお願い致します。

鈴木:看護の仕事は大変と思われることが多いですが、その反面すごくやりがいがあります。

私たち看護師は人の命に関わることができます。

そういった仕事はなかなか無いと思います。

一生の仕事を選ぶ時、看護師はいかがでしょうか。

そして、新人看護師の皆さんには、自分の夢・目標を持ってほしいと思います。

夢や目標は先にありますが、それがあることで、大変なことも乗り越え、看護の喜びを感じていけるはずです。

当院は人を大切に育てます。

一緒に育っていける病院だと思います。

シンカナース編集部インタビュー後記

鈴木副院長は、病院で3年間勤務した後、看護学校で20年間教鞭をとられていた方です。

常に相手の立場になって物事を考え、その状況に合わせて、ご自身の価値観を変え、そして仕組みを変えていくことを実践されているとお聞きして、とても尊敬いたしました。

また、副院長というお立場でありながら、今も正面玄関に立って、現場の状況を常にご覧になられていらっしゃる。

病院運営、看護管理者トップという重責を担われていながらも、現場を大切に考え、それを行動にうつされている象徴的なお話であると感じました。

鈴木副院長の、現場を大切にされる熱意、優しさに包まれた雰囲気がスタッフの方々にも伝わり、お互い助け合う職場の風土を作っていらっしゃるのだと思います。

鈴木副院長、この度は、素敵なお話しをいただき誠にありがとうございました。

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