2008年から開始されたEPA(経済連携協定)によって、看護の現場にもインドネシア、フィリピン、ベトナムの看護師がどんどん増える?と思われた感もありました。しかし、日本語での看護師国家試験に合格するというのは、外国人看護師にとって、とても厳しいものになっています。受け入れを開始した病院も、準備は徹底したものの、国家試験に合格するまでは、看護助手として勤務してもらいながら、勉強サポートも行うという負担が強くなり、EPA開始当初よりは、消極的な雰囲気が看護界に流れはじめました。
ただ、看護師として勤務するのは難しいかもしれませんが、介護施設等では、徐々に外国人スタッフが数を増やしつつあるのも事実。飲食店やホテルでは今や当たり前の光景となっている外国人スタッフですから、医療業界にも、清掃やキッチンスタッフなど、病院業務のサポーターとして協働する日も近い!かもしれません。
そこで、いつ来ても慌てずに外国人スタッフと協働するための3つのポイントをお伝えします。
そもそも、生まれた国や環境、文化や宗教が全く違う外国人スタッフ。相手を尊重することは大切ですが、これは相手の国のルールに合わせることとは違います。日本で継続的に働く上で大切なことは「日本人的に対応してもらう」ことが秘訣。尊重はしつつ、日本の衛生観念の高さ、倫理観、業務上のルールは「言わなくてもわかるよね?」では絶対に伝わりません。ここを曖昧にして「なんでこんなこともできないの?」となってしまうよりも、きちんと「日本ではこうしています」「ここでは、これがルールです!」とハッキリ伝えることで、外国人スタッフも混乱することなく、職場に馴染んでくれるでしょう。
日本語はとても繊細で、ニュアンスを覚えることは非常に難しい。故に、外国人スタッフとの間で誤解が生じることもしばしば。最終的に「言葉がわからないから」と言葉を理由に心の「壁」を作ってしまうのが怖いことです。言葉は難しい、違って当たり前ということを前提に、違うな?と思ったら「それはこう言う意味?」と言い換えてみたり、反応によっては、正しい言葉を伝えることの繰り返しによって、相互理解が深まっていくでしょう。
外国人スタッフは、時に気を使って、指示がわかっていなくてもニコニコっと笑顔で頷いたり「わかりました」と返事をしてしまうことがあります。それは、本当にわかっているということではない可能性があり、そこからトラブルに発展するということも!外国人スタッフも日本人に分からないと思われたくない、何度も言ってもらうのは申し訳ないなど様々な感情があり、きちんと理解していなくても相手をおもんばかって反応してしまうこともあると知りましょう。同じ言葉を繰り返すのではなく、確認をする時は、少し別の角度から同様の内容を質問するなど工夫することが大切です。
外国人居住者、留学生は年々増加しています。いつ、外国人スタッフと協働することになっても、「英語が出来ないから無理ー」など不安にならず、目標を共有してより良い医療現場を共に作り上げられるといいですね。
シンカナース株式会社 代表取締役社長
看護師として勤務していた病院において、人材不足から十分な医療が提供出来なかった原体験を踏まえ「医療の人材不足を解決する」をミッションに、2006年に起業。 現在、病院に対しコンサルティングおよび教育を通じた外国人看護助手派遣事業を展開。25カ国以上の外国人看護助手を育成し、病院へ派遣することで、ミッションを遂行している。 東京都立公衆衛生看護専門学校 看護師 東洋大学 文学部 国文学科 学士 明治大学大学院 グローバルビジネス研究科 経営管理修士(MBA) 日本大学大学院 総合社会情報研究科 総合社会文化博士(Ph.D.) ニュージーランド留学 帝京大学医学部附属病院 東十条病院 三井住友銀行 元東京医科歯科大学非常勤講師 元同志社大学嘱託講師 元日本看護連盟幹事 元東京都看護連盟幹事 日本看護連盟政治アカデミー1期生 シンカナース株式会社/代表取締役社長 著書 『わたしの仕事シリーズ2 看護師』新水社 『医師の労働時間は 看護業務の「分業化」で削減する』幻冬舎 『外国人看護助手テキストブック』幻冬舎