インタビュー後編では、前編に続き、篠崎先生のご経歴や看護師に期待すること、病院スタッフの働き方などについて、お話をお聞かせいただきました。
高度急性期病院の看護
中:貴院にはまだ他にも多くの特徴がおありだと思いますが、
ここで話題を変えまして、先生ご自身のことや看護師についてお伺いさせていただきます。
まず、先生が医師になろうとされたきっかけお聞かせください。
篠崎:最初に興味を持ったのは小学校4年生の時だったと思います。
しばらく入院したことがありまして、入院中に若いインターンの先生が顕微鏡を覗かせてくれたのです。
それがきっかけですぐに医師を目指そうと決心したわけではありませんが、
子ども心に医学の片鱗に触れたような気がしたものです。
ところが親が転勤族のため各地を転々としていたもので、親に「将来は医者になりたい」と言ったところ
「とんでもない。第一いつまで東京にいられるかわからないぞ」という反応でした。
それでも高校に入学後、勉強を頑張って医学部に進学しました。
中:先生は千葉大ご出身でしたね。
大学時代はどのような学生でいらしたのですか。
篠崎:山登りばかりしていて、あまり真面目な学生ではありませんでした。
医学部内にも山岳部はありましたが、全学の部活に所属していました。
私以外に医学部生はおらず、おかげで友人の幅が広がったように思います。
中:次に看護師についての質問ですが、先生が看護師に期待されることをお聞かせください。
篠崎:当院は高度急性期病院ということもあり平均在院日数が9日ほどです。
このような状況で、他院へ転院される期患者さんが「追い出された感」を抱かないようにするため、
看護師にぜひその役割を担ってもらいたいと思います。
そもそもこの地域の医療を当院だけで支えられるわけではなく、診療連携が非常に大切です。
互いに学びあって、地域の医療・介護レベルを上げていくことが今の課題です。
中:地域連携をする上でも貴院の看護師が情報を発信し、
連携を強化したりボトムアップを図るようなことをされているのでしょうか。
篠崎:それもありますし、その逆もあります。
当院に勤務しているから偉いわけではもちろんなく、
連携先のスタッフから教えていただくこともたくさんあります。
私たちはいつも上から目線にならないように心がけています。
看護師にはプライドを胸に抱いてほしいと期待しますが、常に謙虚でいてほしいとも思います。
すべてのベースは患者さんへの関心
中:看護師に一番大切なものは何でしょう。
篠崎:やはり患者さんに関心を持ってもらうことです。
救急車で搬送されてくる方たちは、ご自身で当院を選んで来るわけではありません。
そういう患者さんたちに、
「自分はこの病院に運んでもらってよかった」と思われるようなケアを看護師さんに期待します。
それは患者さんへの関心がなければできることではありません。
看護師免許は医療従事者として働くための最低ラインの条件ですから、
そこに付加価値をつけいってほしいと思います。
当院にはそれをサポートするシステムも充実しています。
中: 看護師のモチベーションの向上・維持に向けては、どのような対策をなさっていますか。
篠崎:例えば勤務時間をしっかり定義し、帰宅時間を守れるようにしています。
また院内の保育園は24時間保育です。
夜勤明けで疲れていて少し休みたいというときには、そのまましばらく子どもを預けておくこともできます。
そういう意味では、子育てをしながらも働きやすい環境ではないかと思います。
中:一般的な急性期看護のイメージとはだいぶ違いますね。
篠崎:急性期の現場というと時間が不規則でスタッフの目が血走っていて、
という状況を想像されるかもしれませんが、当院は全く違います。
できるだけ長く働いていただくために、継続可能な職場環境を整備しています。
中:ただ「頑張れ」と掛け声をかけるのではなく、個人のライフスタイルにあった働き方ができるのですね。
そのような働き方への配慮の重要性に先生が気づかれたのはいつ頃でしょうか。
篠崎:私も昔は目を血走らせていたものです。
しかし世代が変わって若い人たちの価値観がたいぶ変わってきましたから、
それとどう折り合いをつけていくのかを考えると、結局こちらから寄っていくしかないと思っているのです。
百年後の未来を目指す
中:貴院のそういった取り組みによって、スタッフの方も
「病院に大切にされているな」と感じるのではないかと思います。
篠崎:そうあってほしいです。
中:これまでお話しいただいた先生のお考えを、スタッフの方へどのように浸透されているのでしょうか。
篠崎:毎日朝「8時会」というミーティングを行っています。
各部署のリーダーが集まって、昨日起きた問題点を報告し、
その場で対策を決定し解決することを続けています。
そのような場で自分の考えを伝えています。
私は百年後もこの病院が徳洲会の
「生命だけは平等だ」という理念のもとに存在していてほしいと願っています。
中:100年後のために、日々、朝の会も含めて大切にしていらっしゃるのですね。
篠崎:医療がサービス業とみなされるようになったのは、ここ10年か20年のことですね。
私たちはその流れにいち早く対応してきました。
これからも時代のニーズに合わせてこちらが変わっていかなければいけないと考えています。
そのためにいつも高いアンテナを立てて、時代の動きと医療の潮流を把握するよう努めています。
私たちの現在の姿は、今は正しいのかもしれませんが、
5年後には違うものが求められるように変わっているかもしれません。
中:これからも進化し続けるということですね。
最後に先生のモットー、信条をお聞かせいただけますか。
篠崎:私は「嘘をつかず誠実に」ということを心掛けています。
あえて人に言ったことはないのですが。
中:非常に重要なことですね。
本日はお忙しいところ、ありがとうございました。
篠崎:ありがとうございました。
インタビュー後記
100年後の未来。
救急車受け入れ日本一。
とても印象強いキーワードをいただくインタビューとなりました。
未来を見据えた病院づくり、地域づくり、人づくりを日々行っていらっしゃる篠崎先生。
高度急性期医療の最先端をトップで走り続けるエネルギーを感じさせていただきました。