スキンケアの重要性と看護の省力化

コラム

人口の高齢化と慢性疾患の増加などを背景に、褥瘡予防や失禁関連皮膚炎(IAD)の管理、

あるいはフットケアにおけるスキンケアの重要性が高まっています。

そしてスキンケアはまさに看護師の腕の見せどころ。

そこで今回は、スキンケアに注力し製品開発している持田ヘルスケアを訪問し、

最近のトレンドを伺いました。

お答えいただいたのは、同社社長の秋田伸二様です。

 

清拭剤の草分け

 

最初に貴社の沿革や業容を教えていただけますか。

 

1913年に母体である持田製薬が「持田商会薬局」という屋号で発足し、医薬品の製造販売を開始しました。

そして1970年に第二の事業として薬粧部門を立ち上げ、「スキナ」という清拭剤を発売しました。

それが当社のオリジンです。

その後、2004年に持田製薬から独立して現在の持田ヘルスケアがスタートしています。

なお、スキナは現在でも清拭剤として看護や介護の現場で使われていて、

来年、発売50周年を迎える息の長い製品です。

50年前という早い時期に貴社がスキンケアという領域に参入したのには、

どのような狙いがあったのでしょうか。

 

持田製薬の当時の社長が、薬剤や手術とは異なるかたちで医療に貢献できる方法があるに違いないと考え、

事業化をはかったと聞いております。

具体的には、スキンケアにより患者さんの療養環境をできるだけ快適にして苦痛を和らげ、

同時に看護や介護をする人の負担を軽くするという、この2点からのアプローチがとられました。

その後、現在までに清拭関連製品は他社から数多く発売されましたが、

当社のスキナがこの領域を切り開いたと考えています。

 

 

清拭剤の他にはどのような製品を発売されてきたのですか。

 

やはり1970年に「スキナベーブ」という新生児用の沐浴剤を発売しました。

ご存じのように産まれたばかりの赤ちゃんは感染予防のため、成人と一緒のお風呂には入りません。

当時は石鹸を用いて沐浴させていたのですが、

それではどうしても手が滑って赤ちゃんを落としてしまう危険があります。

その問題を解決するために開発したのが、

滑りにくく石鹸を使わなくても清潔にできる「スキナベーブ」です。

こちらも来年、発売50周年を迎えます。

親子二代にわたって使われているご家庭も少なくないようです。

ちなみに現在でも沐浴剤トップシェアです。

 

そういった新規性のある製品を貴社が開発されてきた背景に興味が湧きます。

 

その頃の持田製薬は産婦人科系のホルモン製剤が主力製品だったこともあり、

社員も産婦人科によく出入りしていましたので、

看護婦さんや助産婦さんが現場でお困りになっていることに耳を傾け、

自然にニーズを把握できていたのだと思います。

 

そういうバックグラウンドがあったのですね。

 

抗真菌(抗カビ)成分・抗菌成分配合スキンケア用品の意義

 

では、現在の主力製品をご紹介ください。

 

現在は、抗真菌成分のミコナゾール硝酸塩と抗菌成分のオクトピロックスを配合した

「コラージュフルフルネクストシャンプー」が主力です。

ミコナゾール硝酸塩とオクトピロックスという成分をダブルで配合した製品は、これが日本で最初です。

抗真菌成分と抗菌成分を配合した意図は?

 

フケやかゆみの原因の一つに真菌、いわゆるカビが挙げられます。

脂漏性皮膚炎の方などでは、強いかゆみのために頭皮を掻きむしってしまい、

症状を悪化させてしまうことがあるようです。

フケ・かゆみを何とかしたいと悩まれている方にお使いいただいています。

抗菌成分はニオイの発生を防ぐ作用があります。

 

脂漏性皮膚炎のような疾患にも使えるということでしょうか。

 

医薬部外品ですから治療目的での使用はできませんが、

皮膚科の先生から患者さんへ日常のスキンケアとしてお勧めいただいているようです。

 

こちらも古くからある製品なのでしょうか。

 

商品名に「ネクスト」がつく前の「コラージュフルフルシャンプー」は1999年に発売しましたので、

それから数えると約20年です。

この「コラージュフルフル」というシリーズが当社のヒット商品でして、

昨年には緑茶乾留エキスを追加配合した「コラージュフルフルPREMIUM」という商品を新発売しました。

ニオイの発生を防ぐだけでなく、今あるニオイを抑えることができます。

疾患の治療や予防と並行し適切なスキンケアを

 

少し話題を変えてしまうかもしれませんが、

そういった作用成分を配合することの実際的なメリットを示すデータはあるのでしょうか。

医薬部外品ですので医薬品ほど厳格なエビデンスは求められないのかもしれませんが…

 

その点、当社は、しっかりデータをとっています。

当社製品は看護や介護に携わる人にお使いいただくことが多く、

また医師がスキンケアとして勧めていただく機会も多いため、安全性も含めてデータをしっかり収集します。

なお、いま申しました「コラージュフルフル」ブランドには、

先ほどの抗真菌成分ミコナゾール硝酸塩と抗菌成分を配合した「石鹸シリーズ」もあります。

体表面に生じる真菌の増殖を抑制する作用が期待できます。

 

体表面の真菌と言いますと、白癬菌(水虫)やカンジダでしょうか。

 

そうですね。

足を洗う際や女性のデリケートゾーンのかゆみやニオイにお使いいただいています。

液体タイプと泡タイプがあります。

石鹸は基本的に泡立てて使うものですが、後者はその手間を省け、

看護や介護でお使いいただく際には、省力化にもなります。

 

WOCナースによるIADの管理

 

私どもは看護師対象のWebメディアですので、お話を少し看護師向けに絞って伺いたいのですが、

貴社製品を使う機会の多いのはどの診療科に勤務する看護師でしょうか。

 

皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)、あるいは皮膚科や産婦人科の看護師の方々に、

特によくお使いいただいています。

近年、WOCナースさんの領域でのホットトピックは

「失禁関連皮膚炎(Incontinence Associated Dermatitis;IAD)」だと伺っています。

皮膚に尿や便が付着し皮膚を軟化させ、そこから感染が広がるという状態です。

その起因菌としてやはり常在菌のカンジダが多いようですので、

皮膚を清潔にする目的で当社製品のメリットを生かせる機会があるのではと考えています。

実際、日本創傷・オストミー・失禁管理学会の編集による

「IADベストプラクティス」という管理指針に、「フルフル泡石鹸」が写真入りで紹介されています。

 

CDE(糖尿病療養指導士)によるフットケア

 

フットケアの領域ではいかがでしょうか。

 

おっしゃるように今、糖尿病や末梢循環障害による足病変が増えていて、

糖尿病療養指導士(CDE)の方にお使いいただく機会が多くなってきました。

足病変というと「潰瘍が怖い」と言われますが、潰瘍の発生よりもっと手前の

足白癬や爪白癬といったリスク因子に対し、肌を清潔にすることが重要で、

やはり当社製品がお役に立つ場面があると思います。

WOCナースやCDEの方に対して、最初は私どもから製品の使い方をお伝えすることが多いですが、

いったん使っていただきますと、しばらくして

「こういう使い方もできますよ」などと逆に教えていただくこともあります。

 

 

そうしますと、貴社製品はどちらかというと一般消費者よりも医療職者からの需要が大きいのでしょうか。

 

いえ。

エンドユーザーはやはり一般の方が中心です。

 

しかし貴社製品の特徴を一般の方へお伝えするのは、時間やコスト的になかなか難しくないでしょうか。

 

その点は確かにプロモーション活動上の悩みです。

ただしありがたいことに、

医師や看護師など医療職の方から患者さんに勧めていただけることがよくあります。

お子さんを出産されたお母さんが産院から退院される際や、訪問看護、訪問介護など、

さまざまな場面で、推奨いただいているようです。

 

貴社製品を携えて患者さん宅を訪問している看護スタッフもいるのでしょうか。

 

そのようにされている看護師の方もいらっしゃいますが、多くは、

患者さんやご家族に購入をお勧めしてご自宅に置いていただいているようです。

患者さん宅を訪問した際には、そのご家庭にある製品を使ってスキンケアをするという方法です。

 

人体で最大の臓器のケア

 

ここでスキンケアの基本を教えてください。

 

基本はやはり、洗浄と保湿という2点になるかと思います。

そして洗浄に際しては、できるだけ愛護的に洗うことがポイントで、その点、

泡タイプのスキンケア製品は皮膚を強く刺激せずに高い洗浄効果を得られます。

保湿に関しては皮膚のバリア機能を担っている、皮脂、細胞間脂質、天然保湿因子の三つが

重要だと考えています。

これに関連して当社製品の話をさせていただきますと、セラミドなどの保湿成分を配合した

「コラージュDメディパワーシリーズ」という薬用ハンドクリームや薬用保湿ジェルなどを販売しています。

看護師さんは仕事柄「手がとても荒れる」とおっしゃる方が少なくないですが、

そういった方には長くお使いいただいています。

また、がん放射線治療を受け皮膚が乾燥したり、敏感になっている方々にも

お勧めいただくことがあるようです。

 

最後に、貴社の今後の展開をお聞かせいただけますか。

 

今後もスキンケアに特化し、洗浄と保湿という2点をしっかり押さえ、

医療や介護の現場でお役に立てるものを品揃えしていきたいと考えています。

よく「皮膚は人体で最大の臓器」と言われます。

それと同時に、皮膚は最も手軽にケアできる臓器でもあります。

そういう意味では、冒頭に申しました、当社設立の基盤にあった

「薬剤や手術とは異なるかたちで医療に貢献したい」という点が大きな意味を持ってきます。

ケアを受ける人とケアをする人が、ともにハッピーになれる環境づくりに、

当社がこれからも貢献していければと思います。

 

持田ヘルスケア社長の秋田伸二様 (左)とマーケティング部長の瀧澤輝之様