No.255 葉山ハートセンター 田中江里 院長 前編:抜群のロケーションを強みに

インタビュー

相模湾を見下ろす湘南の海岸沿いに建つ葉山ハートセンター

心疾患の治療で名を馳せ、現在では内科系疾患や検診にも力を入れています。

院長の田中江里先生に、病院の特徴や先生ご自身の経歴などをお尋ねしました。

 

湘南のリゾート地、葉山

 

荒木:本日は葉山ハートセンター院長の田中江里先生にお話を伺います。

まず、貴院の特徴をご紹介ください。

 

田中:当院の特徴は何よりロケーションの良さです。

眼前に相模湾が広がり、江ノ島や富士山を遠望できる眺望の素晴らしさには、

毎日眺めている我々も心が洗われます。

患者さんの心のケアにも好影響があると思います。

 

 

特徴のもう一点は、比較的女性スタッフが多い病院であるということです。

現在、「ハートセンター」として心疾患の専門治療を行うにとどまらず、

内科系疾患の治療や検診などを充実させて、地域に根付いた病院を目指しているところです。

 

 

荒木:診療の特色などについて、後ほどもう少し詳しくお聞かせいただきますが、

それにしましても確かに立地は素晴らしいですね。

また、建物もたいへん綺麗です。

 

田中:ぜひ写真を撮影していってください。

医療系建築物のカテゴリーでグッドデザイン賞を受賞しています。

当院は徳洲会の創設者である徳田虎雄先生が、地中海に面したモナコのハートセンターを模して、

ある高名な心臓血管外科医とともに2000年に開設しました。

ロケーションの選択だけでなく、建築にもそれなりのコストをかけたと聞いています。

 

血液塗抹標本の美しさ

 

荒木:湘南らしい瀟洒なデザインだと感じました。

それでは次に、先生のご経歴についてお伺いします。

まず、医師になろうとされた動機をお聞かせいただけますか。

 

田中:私が子どもの頃、医師は地域における名士のような存在で、住民から期待と尊敬を集めていました。

そのような存在に漠然とした憧れがあったことに加え、母親が知的障害者施設の寮母をしていた関係で

多少は医療を身近に感じていたこと、加えて自宅のすぐそばに浜松医大が開学したことで、

将来の職業として医師という選択肢をより現実的に感じるようになっていきました。

 

 

荒木:そうしますと浜松医大に進学されたのですね。

先生は血液内科がご専門と伺いましたが、どのような理由から選択されたのでしょうか。

 

田中:血液の塗抹標本を作製すると、それぞれの染色された細胞が

悪性だけれどもとても綺麗に見られるのです。

そういった細胞を観察することが好きだったことと、血液内科は女性に適した診療科だと思ったからです。

 

 

荒木:なぜ血液内科が女性医師に向いているとお考えになられたのでしょう。

 

田中:血液内科で扱う疾患は治療によって「治癒」に至るというよりも、

「寛解」に導入しその状態の維持を目指すことが少なくありません。

そのため患者さんご本人はもとより、ご家族とも年余にわたりお付き合いすることになります。

ご家庭の状況などの把握も必要になってきます。

そういったことは女性が得意とすることのように感じます。

 

研究より臨床の現場にいたい

 

荒木:大学を卒業されてからのご経歴をお聞かせください。

 

田中:在学中にある女性の先生から

「大学に残って活躍したいのであれば、臨床だけでなく研究にも時間を割かなくてはいけない。家庭生活との両立はかなり厳しい」

とアドバイスを受けました。

 

 

その頃の私がイメージしていた理想の医師像は、例えば電車の中などで誰かが倒れた時、

躊躇なく駆け寄り自信を持って助けることができる医師です。

それには研究よりも臨床の腕を磨かなければと考え、医局には残らず、

救急医療の受け入れで実績を挙げていた徳洲会グループに勤め始めました。

 

 

荒木:こちらの院長に就任されるまで、湘南鎌倉総合病院の副院長をお務めされていらっしゃいましたね。

 

田中:卒業してから湘南鎌倉総合病院に長く勤めていて、最終的に副院長を10年ほど務めました。

当時、湘南鎌倉では初の女性副院長とのことでした。

 

 

荒木:どのような流れで貴院の院長に就かれたのでしょうか。

 

田中:当院は心臓外科の専門病院としてスタートし、

その領域では全国トップクラスの診療実績を挙げていました。

しかし経営的にやや落ち込んだ時期があり、その立て直しのために

外科だけでなく内科にも手を広げて集患を図るという意図で、私が選ばれたようです。

2017年の6月に着任しました。

 

葉山ならではのブライダル検診

 

荒木:ではまだ2年弱ですが、この間にどのような取り組みをされてきましたか。

 

田中:当院は心疾患で有名な病院ですが、それだけではなく何かもう一つ別な特色を出せないかと考えた時、

このロケーションを生かさない手はないと思いました。

自然環境を生かした医療というと、人からはよく「緩和ケアが良いのでは」とアドバイスをいただきました。

しかし私は自分が女性だからかもしれませんが、女性専門のドック、

しかも結婚や妊娠を考えている比較的若い女性専門のドックを作ることを着想しました。

 

 

荒木:そのドックの内容を少し詳しくお聞かせください。

 

田中:結婚や妊娠を控えた若い女性の医学的な問題として、感染症が挙げられます。

近年、風疹や麻疹が流行し、胎児ヘの影響を心配される妊婦さんが増えている一方で、

ご自身にそれら感染症に対する抗体があるのか否かをご存知ない方もいらっしゃいます。

加えて梅毒やクラミジアなどの性感染症も増加傾向にあることが報告されています。

 

 

本来、結婚や妊娠の前にそれらをチェックしておくべきなのですが、

若い女性は滅多なことでは病院を受診しません。

特に性感染症の検査を受ける人は本当にごくわずかです。

そのような検診の隠れたニーズは決して低くないはずです。

そのニーズを取り込み、かつ当院の素晴らしいロケーションをパックにして、

「プレコンセプションケア」をスタートさせました。

 

 

結婚する前に湘南への旅行がてらドックを受診してみようという人に、あるいは結婚を控えている女性へ

友人やご家族からのプレゼントとして、このドックを活用していただければと考えています。

乳がんや子宮頸がんの検診も同時に行っています。


荒木:まさに女性ならではの企画と思いました。

 

田中:女性が企画した商品や事業を表彰している神奈川県の

「神奈川なでしこブランド」にも認定されました。

 

後編に続く

Photo by Carlos