JR相模原駅の駅前に位置し、急性期医療と地域包括ケアに力を入れている総合相模更生病院。
今年2月にその院長に就任された松本豊先生へのインタビュー前編では、
先生のご経歴や院長としてのポリシーをお聞かせいただきました。
急性期と地域包括ケアに加え、介護も充実
中:今回は総合相模更生病院病院長の松本豊先生にお話を伺います。
先生どうぞよろしくお願いいたします。
松本:よろしくお願いします。
中:まず貴院の特徴を挙げていただけますか。
松本:一般急性期医療に加え、社会復帰を目指す地域包括ケア病棟、そして介護病棟という、
この三つで病棟を構成しています。
現時点では急性期病棟と地域包括ケア病棟に力を入れています。
つまり、疾患や怪我の急性期にある患者さん、あるいは他の高度急性期病院を経て
転院されてきた患者さんに、ご自宅へお帰りいただき社会復帰していただくことを目標にしている病院です。
医師への憧れ
中:ありがとうございます。
本日は貴院や先生ご自身のことなどをお尋ねさせていただきます。
まず、先生が医師になられた動機はどのようなことでしたでしょうか。
松本:だいぶ昔のことですが、私が高校生の時に母親が心臓の手術を受け、
しばしばお見舞いに通っていました。
その時に目にした医師の姿への憧れがスタートです。
正直なところ、当時はまだ高校生ですし身内に医療関係者はいないものですから
「人の命を助けて役に立ちたい」という崇高な考えはあまりなかったと思います。
母も父も執刀してくださった先生に非常に敬意を払っていたことと、「白い巨塔」などで見ていたとおり
教授回診で先生方が列になって病室を回っていたことが印象に残っています。
中:医学部進学後に印象に残っていることはございますか。
松本:いま思い返してみますと、在学中よりむしろ卒業後の教育が非常に充実していたように感じます。
北里大学だったのですが、卒業してから先輩方に愛情をもって鍛えていただいたという思いがあり、
良い大学、良い医局に入れたことは幸せでした。
フィーリングで適性を判断
中:ご専門領域はどのように決められましたか。
松本:自分に何が向いているかを知ることは、なかなか難しいことですね。
看護職の方も「自分は内科系、それとも外科系が向いているのだろうか?
あるいは24時間の救命救急なのか?」といろいろ適性を考えると思います。
私の場合は5〜6年生の臨床実習の時に回った科の中で、外科が最も楽しそうに見えました。
先生方の物の考え方や雰囲気も自分に合っているように感じました。
と言いましても、その後わたしは消化器外科医としてキャリアを積むことになるのですが、
卒業時点では自分が本当に消化器外科に興味を持って続けていけるのかどうか判断がつきません。
結局は医局の雰囲気で決めたようなところです。
中:外科の志望者数の減少が話題になっていますが、先生が卒業された頃はいかがでしたか。
松本:私の卒業年度は平成元年です。
今から30年前、外科の人気は高く、みんなこぞって「俺も俺も」という感じでした。
大学で私はサッカー部に所属していましたが、
スポーツ系のクラブに入っている学生は特に外科系の診療科を志望することが多かったように思います。
中:ご卒業後から現在の院長に就かれるまではどのようなキャリアを積まれたのでしょう。
松本:外科の医局に入り2年間、研修医として過ごしました。
今のような医師臨床研修制度がない時代でしたから、
救命救急センターや麻酔科、消化器内科のローテーションを除き、ほとんど外科のみでの研修でした。
研修終了後は関連病院に出向し外で鍛えていただき、大学に戻ってまた外へという一般的な流れです。
最終的に卒後13年目に当院に着任し、以来いまに至るまで勤務しています。
最初は何の役職もないところから始まり、外科の部長職、副院長となって、
今年の2月に院長職を拝命しました。
自分たちができる最善の医療
中:院長をお務めされる上で、病院の経営や運営上のポリシーといったものがおありではないかと思います。
お聞かせいただけますか。
松本:経営に関しては、厳密な意味では法人本部が管理することだろうと思います。
ただしそうは言っても法人唯一の病院であり、その病院を支えていくためにはやはり
「先立つもの」が必要ですから、院長として経営上のマネジメントも重要です。
しっかりお金が入ってこないと、優秀な方々を採用し新しい事業を展開することが難しくなりますので。
ただ、当院がなすべきことで一番大事だと考えることは、
やはり患者さんやご家族に誠心誠意きちんと向き合って診療をするということです。
それによって地域住民の方から選んでいただける病院になると考えます。
病院としての評価を高めることが最初にすべきことです。
大事なことはお金を儲けることではなく、自分たちにとって最善の医療を提供していくこと、
それが私のポリシーです。
その一環として救急要請、受診要請があった患者さんは、ともかく断らずに受け入れています。
このような考え方を、看護職や事務スタッフも含めた全職員に、常々強調しています。
中:院長自ら、患者さんの接し方等に関するメッセージを発していらっしゃるのでしょうか。
松本:そうしています。
ただし私は院長職に専念するだけでなく、
今も当院の仲間とともに、チームの一員として臨床を続けています。
院長が臨床を兼務することに関してはさまざまな考え方があると思いますが、
私は病院長が現場で奮闘することは非常によいことだと考えています。
経営ももちろん重要ですが、一臨床医であることをこれからも大事にしていきたいと思っております。
後編に続く