No.221 EAファーマ株式会社 松江裕二 社長 後編:薬剤適正使用におれる看護師の役割

インタビュー

前編に続き松江社長に、消化器疾患に特化した新薬メーカーの特色と、

看護師との関わりについて伺いました。

目利き力

中:貴社は2016年に発足し、既に新薬を2剤発売され、3剤目の発売も控えているとのことですが、

それも領域を特化した製薬メーカーの強みの結果でしょうか。

松江:私は「目利き力」という言葉を使うのですが、広い範囲の事業を展開していると、

小さなシーズやニーズに目がいかないのだと思います。

そこを弊社は見逃さずに事業化していきます。

縮尺の小さな地図で広い全体を見渡すのではなく、

縮尺の大きな地図で特定の地域を詳細に見るということです。

それを繰り返していると「目利き力」が着実に磨かれ、アカデミアに埋もれているシーズの活用法を

掘り起こしたり、患者さんが「仕方ないこと」としてあきらめている治療ニーズに気付くことができます。

中:医療者側は既に治療法が確立されたと考えている疾患でも、

患者さんの側からすればまだ満たされていなニーズが存在するということですね。

そういったニーズをキャッチするために、どのような取り組みをなさっていますか。

松江:患者さんと共体験をして患者さんの喜怒哀楽を知ることです。

具体的には患者会・家族会などにご協力いただき、

社員が患者さんやそのご家族と一緒の時間を過ごし寄り添うという活動をさせていただいています。

当社では研究開発スタッフはもとより、

経理や人事の担当者も含めて全員がそのような機会を持つようにしています。

炎症性腸疾患の治療に、QOL改善の余地

中:先ほどお話しいただいた慢性便秘も潜在ニーズが存在する症状の一つだと思いますが、

他にはどのような疾患がございますか。

松江:指定難病とされている潰瘍性大腸炎が挙げられます。

かつては副作用の心配を抱えながらも病勢制御のために経口ステロイドが使われたりしていましたが、

5-ASA(5-アミノサルチル酸)製剤や生物学的製剤等が登場し、

かなりコントロールしやすくなってきています。

実際、患者さんからは「自分の人生が変わった」という声も聞かれます。

何が変わったのかというと「以前はトイレが心配で外出さえできなかったのが、今では外出できる」と

おっしゃいます。

確かにそれは大きな前進です。

しかしそれで患者さんのニーズがすべて満たされたわけではないはずです。

患者さんはひょっとしたら今の生活で十分と思っていらっしゃるかもしれないけれども、

もっと普通の生活、健康な人に近い生活ができるとわかれば、きっと患者さんはさらに喜ばれると思います。

炎症性腸疾患を看る看護師に伝えたいこと

中:潰瘍性大腸炎の治療や療養指導においては、看護師が果たす役割も少なくないかと思いますが、

いかがでしょいうか。

松江:もちろん、看護師のみなさんは我々製薬企業にとって

本当に欠くことのできないパートナーだと思っています。

どういうことかと申しますと、我々は良い製品を開発することを使命として薬剤を生み出しますけれども、

それをお使いいただく時に正しく用いなければ、

せっかくの良い製品であってもその力を発揮できないことがあるからです。

中:看護師が知っておくべき具体的な例はございますか。

松江:例えば、弊社が昨年末に発売した「レクタブル」という潰瘍性大腸炎の

ステロイド注腸フォーム(泡)製剤がございます。

注腸製剤は従来から使われていますが「液剤」のため、注入後に漏れてしまったり、

腸内に薬剤を行き渡らせるために横になって体位変換をする必要があったりするなど、

使い勝手という点で課題が残されていました。

一方、レクタブルは「フォーム剤」と言いまして製剤特性により腸内での保持性が高く、

漏れの心配が少ない製品です。

しかもご自身で立ったまま注入できますので、非常に利便性が高い製品です。

しかし、容器を逆さまにしないと薬剤が出ない設計になっています。

また、使用前に容器をよく振ることや、注入時に押すポンプドームが元の位置に戻るまで

約15秒ほど容器をそのままの状態に維持することなど、いくつかの注意点があります。

そういった注意点を看護師の方から患者さんへお伝えいただきき、通院時には

患者さんが正しく使えているか否か、1日2回使っているか否か等の確認をしていただければと思います。

例としてレクタブルの話をしましたが、すべての薬剤についてそのパフォーマンスを十分に発揮するため、

正しい使い方をお伝えいただく助けとなっていただければ、

看護師のみなさんは私たちにとって非常に心強い存在に違いありません。

スタッフ対象セミナーへ積極的に参加してほしい

中:そのような情報を看護師向けに発信されていらっしゃいますか。

松江:IBD(炎症性腸疾患)のメディカルスタッフ向け教育セミナーが各地で開催されていますが、

それを製薬企業としてサポートさせていただいております。

ぜひそういったセミナーへ積極的に参加していただければ、私たちもサポートのしがいがあります。

その他には、患者さんに対する指導箋はいろいろ作成しています。

中:メディカルスタッフ対象のセミナーに参加することで、

今後の新製品情報や患者さんに対する療養指導のコツを習得できますね。

最後に少し社長ご自身のことについてお伺いしたいのですが、

ふだんお仕事以外の時間にされる趣味はございますか。

松江:座っている時間が本当に長いものですから、身体を動かすようにしています。

「趣味」というほどのことではありませんけれども、テニスとゴルフはよくします。

身体を動かさないと健康に良くないかなと思いまして。

看護師の皆さんへ

中:では、看護師に向けてメッセージをいただけますでしょうか。

松江:医薬品はいま本当に革命が起きているかのように

日進月歩で良い新薬がたくさん登場しつつあります。

中には以前なら想像もつかなかったような効果を期待できるものもあります。

私どもも、もちろん製薬企業として薬剤に関する知識を一生懸命に勉強し、医療従事者の方々へ

お伝えしていきますので、看護師の方々も最新の知識を習得していただき、ともに勉強することによって、

今の非常に高い日本の医療の質をもっと高めることができると思います。

是非一緒に頑張ってまいりましょう。

インタビュー後記

松江社長からいただいた「看護師は製薬企業にとって欠くことのできないパートナー」

というお言葉には、信頼されるありがたさと共に、大きな責任を担っているのだと実感いたしました。

製薬会社と看護師が正しくベクトルを合わせることで、大きな成果を上げることが出来る。

正しい情報を教えていただきながら、看護師は今後、より薬剤に対しての知識や意識を深めていく必要が

あるのではないでしょうか。

松江社長インタビュー前編

松江社長インタビュー後編

Interview with Kubo & Araki