自治医科大学の教授を退任後にJCHOうつのみや病院院長に就任された草野英二先生。
常に目的を持ち目標を失わないという信条に基づき、
大学教授時代からのご研究とご自身の健康管理を今も継続されていらっしゃるとのことです。
病院完結型の機能
中:今回はJCHOうつのみや病院院長、草野英二先生にお話をお伺いします。
先生どうぞよろしくお願いします。
草野:よろしくお願いします。
中:まず貴院の特徴について教えてください。
草野:当院は、急性期病棟を持ちながら、回復期病棟や付属の介護老人保健施設を備え、かつ、
健康管理センターという健診部門も有しています。
予防医学から看取りに近い部分まで担い得る「病院完結型」の機能が特徴だと考えています。
野口英世の伝記に触発
中:続いて先生のご経歴についてのご質問ですが、医師になろうと思われたのはいつ頃でしたか。
草野:小学校3、4年生ぐらいの時には医師になろうと決めました。
中:それは早いですね。
草野:父親の影響だと思います。
父親が医師だったという意味ではありません。
実家が福島の矢吹で、野口英世の出身地のそばです。
そのため子どもの頃から父親に勧められて野口英世の伝記を何回も読んでいました。
そして「困っている人のために自分も医者になってみよう」と思ったというわけです。
ひょっとすると、自分はがんを治せる人間になるかもしれないと、子どもらしい夢を抱いていました。
人生100年時代を地でいきたい
中:小学校3、4年生の時に抱いた目標を失わずに実現されたのですね。
医学生時代はどんな生活を送られていましたか。
草野:卓球をやっていました。
大学に入ってから始めたのですが、医学生の全国大会で優勝したこともあります。
中:素晴らしいですね。
今でもスポーツをなさっていますか。
草野:卓球ではないですが、週3回ほどは水泳をしています。
他にも毎日15分、ストレッチを続けています。
私は「人生100年時代」を地でいきたいと考えています。
また「健全な精神は健全な肉体に宿る」といいますので、
病院長が病んでいては患者さんや職員に元気を与えることができませんから。
中:では、毎日のストレッチは長く続けていらっしゃるのですか。
草野:自治医大の教授に就いた頃からですから、もう17〜18年継続しています。
教授時代からの研究を継続
中:先生が大学で研究されていた頃のことを少しお聞かせください。
自治医大の腎臓内科でいらっしゃいましたね。
草野:「腎疾患と老化」をテーマに研究していました。
今もそれを続けています。
子どもの頃の「がんを治せるかもしれない」という夢からは少しずれたかたちですが、
病気が腎疾患であろうとがんであろうと「人はなぜ老いるのか」という人類の永遠のテーマに関連する
研究だと思います。
先ほど「人生100年時代を地でいく」と申しましたが、「腎疾患と老化」はその中心に据えた主題です。
自分を突き動かしてくれる大きなテーマがあれば、どこまでも努力できます。
中:大学を離れ病院長になられ、
そしてさらにこれから先も研究テーマを堅持されていくということでしょうか。
草野:人によっては、定年退職後は海外旅行に行きたいといった自適な生活を思い描くようですが、
私はキルケゴール(19世紀のデンマークの哲学者)の「美的実存、倫理的実存、宗教的実存」
という言葉が好きで、そのうちの「宗教的実在」に当てはまるのかどうかわかりませんが、
自分自身の精神が充実した状態で生きることが大好きです。
病院長としての新たなチャレンジ
中:少し話題の時間軸を今に戻しまして質問させてください。
現在、貴院の病院長として、ふだんどのようなことを考えて経営にあたられていますか。
草野:現代の医療はかなり流動的ですので、
当院の職員が変化に対応できる医療者であってほしいと考えています。
また最新の医療を提供していくには病院経営が黒字である必要があり、
それが患者さんの期待に応える道でもあります。
中:院長というお立場ですと、
医療プラス経営という視線をあわせもつ難しさのようなものがおありでしょうか。
草野:そうですね。
自治医大での長年の経験から学問的な面は自信を持っていましたが、
医療経営については事務の方々と十分相談しながら方向性を決めていっている状況です。
中:そうしますと大学教授時代とはまた違った「楽しさ」のようなものを今お感じになられていますか。
草野:教育には「後楽思想」と申しますか、若い方の成長後の姿を想像しながら楽しむことができます。
病院経営にはその部分が少なく、むしろ私にとっては新たなチャレンジです。
新しい領域に自分を置くことで刺激を得て日々充実しているという感覚です。
看護師に期待すること
中:これから病院という存在はこのように変化していくべき、
といったお考えがございましたらお聞かせください。
草野:一つの方向性として一般的に言われているように、予防医学に力点を置く考え方は健全だと思います。
生活習慣病をできるだけ克服できるように、患者さん自らが運動や栄養改善や社会参加に取り組まれ、
医療従事者はそれに対して的確なアドバイスをするということです。
私は患者さんに対して
「人生100年時代に向けてご自身で計画を立て、目的を持って生きてください」とよく言います。
仮に目的を持たずに生きたとしたら、
人生は80年だろうが100年だろうがあまり差がないのではないかという気がします。
中: 私どもは看護師対象のWebメディアですので、今のお話を看護師にあてはめ、
看護師が持つべき目標とはどういったことが想定されるか、お聞かせいただけますか。
草野:看護師は患者さんにダイレクトに関わる非常に大切な職種だと思います。
さらに、要求されるスキルも年々増加しています。
看護業務に必要な基本的なスキルをしっかり覚えつつ、
同時に患者さんを元気づけるような接遇・態度を持ち合わせていただきたいと考えています。
後編に続く