No.201 札幌厚生病院 狩野吉康 院長 後編:看護師に求める「優しさ」について

インタビュー

前編に続き、院長に就任されてからの病院運営上の新たな取り組みや、これからの看護師に期待すること、

コンサドーレ札幌とのご関係などを語っていただきました。

ホスピタリティを第一に

中:院長に就任された時、どのような目標を立てられましたか。

狩野:最初に申しましたように、ホスピタリティを大切にしたいということです。

患者さんやご家族から「この病院に来て良かった」と思われるような病院にするということです。

病院がホスピタリティを重視するのは当たり前のことですが、それができていないケースが多いと思います。

ですから「札幌厚生病院はそれに徹底して取り組もう」と考えました。

中:臨床医から院長へと段階を踏んでいく中で、先生ご自身の視野や考え方が変化したと思われますか。

狩野:地位が人を作っていくという面はあると思います。

また、そうならなければいけないと思います。

中:今の質問をいたしましたのは、看護師ではポジションが変わるタイミングで離職する人が多いためです。

例えば、主任や師長を指名されると「あっ、自分には無理」と言って結局、

退職してしまうという事例が目立ちます。

新たなポジションに挑戦し次に進むことによって、見える世界が広がるのではないかと思うのですが。

狩野:看護師が医師と少し異なるのは、やはり肩書が付くことで、

ご家庭の環境に影響が現れるという悩みがあることだと思います。

仕事と家庭を両立できなくなってしまうということです。

看護師に求められる「優しさ」とは

中:女性ならではの悩みということですね。

先生は今、看護師にどのようなことを求めていらっしゃいますか。

狩野:患者さんが接している時間が最も長い医療職は看護師です。

いわば看護師は病院の顔です。

そういう存在である看護師に私が求めることは、やはり優しさです。

看護師が優しいということだけで、治療が奏功しているか否かとは別の意味の「救い」になるはずです。

中:ありがとうございます。

実は、病院長にお話を伺いしておりますと、

同じように「看護師には優しくあってほしい」という言葉をよくお聞きします。

患者さんに優しくすることは看護の基本でありながら、

実はそれほど簡単なことではないのではないかと最近考えています。

狩野:おそらく基本的には皆さん優しくしようとされているのだと思います。

ところが、忙しさや仕事が順調に進まないストレスなどのしわ寄せが、

つい患者さんに向かってしまうのではないでしょうか。

もちろんそれは看護師に限ったことではなく、医師も同じです。

中:ただ、ドクターの立場からすると、看護師がきちんと患者さんに優しく接していれば、

より安心して治療に専念できると思われるのではないでしょうか。

それが正に医療チームにおける看護師の役割なのかもしれませんが。

狩野:その点はその通りだと思います。

中:看護職者は、自分たちが医師から求められる優しさというものの意味を、

もう一度しっかり振り返る必要があるのではないかと思っていたところでしたので、

少し詳しくお尋ねさせていただきました。

お話を伺い、いま医師から看護師のタスクシフティングやデリゲーションが話題になっている中、

看護師の優しさをベースにした信頼関係を築くことで、

移譲できる業務の質が変わってくるようにも感じました。

狩野:患者さんに対してもスタッフに対しても、芯に優しさがあれば、

互いに理解し合うためにしっかり話し合うなど、

当たり前にすべきことを自然にできるようになるかもしれませんね。

札幌の地域性と病院の方向性

中:ありがとうございます。

貴院の特徴についてまだあまり伺っていませんでしたので、その点をもう少しお尋ねします。

北海道の札幌という地域での総合病院として、他地域にはない特色のようなものはございますか。

狩野:札幌は北海道内で急性期病院の数が突出して多い都市です。

しかもこの中央区はさらに突出していて他の区に比較し病院が1.5倍あり、急性期病院は12箇所あります。

全国でも有数な医療過密地区です。

中:そうしますと7対1看護の算定条件が厳しくなった、今年の診療報酬改定は大変でしたね。

狩野:かなり急性期病院維持のハードルが高くなりました。

おそらく2年後はさらに厳しくなると思います。

ただ、札幌は市外からの患者さんも多いので、行政の施策どおり回復期病棟への移行を進めて行って、

うまくいくのかどうかちょっとわからない面もあります。

中:これから貴院をどのように発展させていこうとお考えですか。

狩野:最初に申しましたように当院はがん診療連携拠点病院です。

現在はどちらかというと消化器がんの比重が大きいのですが、

これをオールマイティに受け入れられる病院にしていきたと考えています。

コンサドーレ札幌サポーター

中:最後に先生のご趣味についてお聞かせください。

狩野:趣味は二つ、サッカーの応援とマラソンです。

サッカー観戦は最近のにわかファンではなく、メキシコオリンピックの釜本、杉山時代からです。

今はコンサドーレ札幌の熱烈なサポーターで、仕事と重ならない限り、

ホームの試合は全て応援に行きます。

幸いにも数年前からコンサドーレ札幌のメディカルチェックを私が担当していて、結構、役得もあります。

院長室はユニフォーム・グッズだらけです。

中:マラソンはどのくらいやっていらっしゃいますか。

狩野:フルマラソンは18回、うち2回はホノルルを走りました。

私のマラソン好きが家族にも伝染して、家内もフルマラソンを2回走っています。

中:北海道の自然の中でのマラソンは気持ちいいでしょうね。

それでは、まとめとして看護師へのメッセージをお願いします。

狩野:当院は24の診療科をもつ総合病院です。

また、がん拠点病院に指定されており、がんの治療実績が豊富です。

多くの病める患者さんが当院にいらっしゃいます。

そういう患者さんの力になりたい、治したいという気持ちのある皆さんをお待ちしております。

ぜひ札幌厚生病院で一緒に働きましょう。

仕事をしましょう。

患者さんを癒しましょう。

インタビュー後記

自らの仕事、地域、仲間に誇りを持ち日々より良い医療を提供するため日々邁進されている狩野先生。

ホスピタリティというお話をしていただきましたが、患者さんは来るものだという姿勢から「来ていただく」

という深い思いを感じました。

そこには職員の中心的存在となる看護師の意識が書かせません。

医療を明るく変革するには、まさに看護師の意識の変革が必要なのでしょう。

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狩野院長インタビュー前編

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Photo by Fumiya Araki