獨協医科大学埼玉医療センターのスタートと同時に勤務され、現在、看護部長をお務めの多田則子様(※2020年3月末退職)。
「笑顔と活気のある看護サービス」をモットーにマネジメントされている多田様の手腕と魅力に迫ります。
病院開設と同時に勤務をスタート
中:今回は、獨協医科大学埼玉医療センター、多田則子看護部長にお話を伺いします。
看護部長、どうぞよろしくお願いいたします。
多田:よろしくお願いいたします。
中:まず、貴院の特徴を教えていただけますか。
多田:当院は高度急性期+急性期病院で、
手術件数が非常に多いことと看護師教育が充実しているところが特徴です。
中:看護部長に就任されるまでのご経歴をお伺いしたいのですが、
まずは看護師になられた動機をお聞かせください。
多田:最初の動機は「何か人さまの役に立つことをしたい」ということでした。
その希望にあう職業の一つに看護師という選択肢があったということです。
実際に看護師として仕事を始めてみてから、この選択をして本当に良かったと実感しました。
中:仕事をしてみて看護師の楽しさをお知りになれられたということですね。
学校を卒業されて最初にお勤めされたのはどちらでしょうか。
多田:最初は埼玉医大病院に就職しました。
その後、別の資格を取得するためにいったん離職し、一年後に当院に就職しました。
当院の開設が昭和59年で、ちょうどそのスタートのタイミングから働き始め、以来ここで頑張っています。
ほぼ全診療科の看護を経験
中:どのような診療科をご経験されてきたのでしょうか。
多田:看護師になってすぐは、整形外科病棟に3年間勤務しました。
その後、当院に来ましてからは、ほぼ全科を回りました。救命救急センターが一番長かったと思います。
中:医師と同じように看護師にも外科系と内科系があるとしたら、看護部長は外科系でしょうか。
言い方を変えますと、何かを決断する時に、
きっぱりと短時間で決断されるのか、じっくり考えて決められるのか、どちらでしょうか。
多田:意識していませんと何かを言われた時、即座に返答するタイプです。
臨床現場においては対象が人ゆえに状況判断として命を左右することもあり、
瞬時の判断力がとても重要なことと思います。
しかし看護部長としてマネジメントをする上では、
時として待つことも重要であると思うようにもなりました。
中:看護部長になる段階で、マネジメントや経営などの勉強をされましたか。
多田:日本看護協会の認定看護師の研修に参加する機会があり、
そこでマネジメントや経営についての土台を学びました。
その研修で学んだことや、今までの経歴の中での経験を、いま生かすことができているように感じています。
ただ、看護部長に就任しましたのは縁があっての結果でして、
それを目指すために勉強したわけではありません。
人との出会いに導かれて
中:新人の頃を振り返られて、将来ご自身が看護部長になられるとイメージされていましたか。
多田:いえ、全くございません。
中:そうしますと、人との出会いの影響を受け、自然に管理職の道へ進まれたという感じでしょうか。
多田:そうですね。
私は恵まれていたのだと思います。
例えば上司から、自分では思ってもいなかった一面を見出していただいたり、
研修に参加したり新しいことに挑戦する機会を用意してくださったりしました。
それらのいただいたチャンスをいかにクリアするか、それは自分の課題ですが、
少なくても一人ではできませんし、多くの人の支援があってのことだと思っています。
人から元気をもらい、人を元気にする
中:お話を伺っていて、看護部長からはとてもポジティブなオーラを感じます。
これから看護師を目指す人たちは、たいへん力づけられるのではないかと思います。
多田:やはり人と接した時には元気をもらいたいですよね。
私はそうでありたいと思っています。
人から元気をいただきますが、自分からも元気をあげられればと、常に心がけています。
笑顔と活気のある看護
中:そのようなお考えを持たられのには、何か背景がございますか。
多田:若かった頃、患者さんに教えていただきました。
夜勤あけに病室を回る際、たとえ自分が疲れていても私は
「おはようございます」と気持ちのいい元気な挨拶を心がけ入室するようにしていました。
するとある時、一人の患者さんから
「あなたが朝、元気よく『おはようございます』って入ってくるのを聞くと、私も元気をもらうのよ」と言われたのです。
それが原体験です。
病棟には「今日も生きて朝を迎えられて良かった」という状態の患者さんがいらっしゃいます。
そういった患者さんに元気をあげられる看護師でなければならないと思います。
当院の看護部の理念の中に「笑顔と活気のある看護サービスを提供します」と謳っているのも、
基本はそこにあります。
人間として輝いていられる看護師
中:シンプルな中に看護師として一番大切な要素と詰め込んだ素晴らしい理念ですね。
多田:何か優れた特技を持っていなくても普通にきちんと挨拶ができるということが、
相手にどれだけ好ましい影響を及ぼすか、後になってからわかってきたように感じています。
看護師であれば、元気に挨拶を続けることによって、やがて患者さんと心が通じ
「看護をしていて良かったな」と言える日が必ずや来るのだろうと思います。
中:看護部長が本当に一番大切な原点を守っていかれているからこそ、
強い意志・理念のもとに貴院の看護部をまとめることができるのではないかと感じました。
ところで、いま看護部長が看護師に期待されることはどのようなことでしょうか。
多田:やはり自分で考えて自分で判断でき、
常に一人の人間として輝いていけるような看護師であってほしいです。
後編へ続く