No.158 病院長 別役徹生様(東京天使病院)後編:モチベーションの一つは危機感

インタビュー

前編に続き、別役先生に病院経営のお話から病院で行なっている取り組みなどお伺いさせて頂きました。

病院が黒字であることが地域のニーズに応える条件

中:先生ご自身、現在も診療をなさっているそうですが、

臨床医としての楽しみとは異なる、経営の面白さを教えていただけますか。

別役:組織を持続し職員に満足してもらうために、病院経営は黒字でなければいけません。

経営状態が悪化すれば職員の待遇に影響し、勤務のモチベーションも上がらなくなります。

きちんと患者さんをみて、それが病院の収支に反映され、

結果として、患者さんのニーズによりしっかり応えていくという流れが重要だと考えます。

中:そうしますと2年ごとの診療報酬改定の動向も目が離せないですね。

別役:今まで以上に敏感になりました。

中:循環器ドクター時代と比べて今のお仕事はいかがですか。

別役:循環器内科関連病院の時代は、時間外でも入院患者の要件は、主治医に連絡が来ますし、

緊急カテの待機もあり、身体的な負担が大きかったです。

今はだいたい夕方6時前には仕事を終えられますし、当直医が夜間の対応をしますので、

労働環境的には楽になりました。通勤時間が長いのが、玉に瑕ですが。

患者さんの生活や地域に根づいた医療・看護

中:今、働き方改革が問題になっていますが、貴院はいかがでしょうか。

別役:たぶん、大規模病院や専門病院の勤務で忙殺されていた方にとっては、

働きやすい職場なのではないかと思います。

中:確かに院内を拝見いたしますと、看護スタッフもかなり患者さんと密に接されていて、

ゆとりが感じられます。

別役:当院はどちらかというとリハビリ中心ですので、患者さんの生活を考えての看護が多くなります。

病気を治すだけではなく、その後の生活も一緒に考えながらアドバイスをし、

一度退院しても具合が悪くなれば当院に戻ってこられるという安心感を与えるようにしております。

中:すぐにいつでも入院できる病院が身近にあることは、地域住民にとって心強いに違いありませんね。

しかし2025年問題を間近に控え、高齢者の割合はさらに増加します。

貴院では何か対策を立てられていますか。

別役:この問題はやはり、医療だけではもう解決できなくなってきています。

今、高齢者介護の一線にケアマネージャーがいますので、その方々と情報交換し、医療から介護へ隙間なく

ニーズをカバーし、それぞれの患者にあったサービスを提案していかなければならないと思います。

通院ができなくなり、病院に長期間来なかったケースなども散見されるようになってきおり、

訪問看護、帆門診療の必要性も感じます。

当院には介護老人保健施設が併設されていて、ショートステイサービスも提供しています。

危機感からの自己研鑽

中:先ほど「通勤に長時間かかる」とおっしゃっていましたね。

電車の中では何をなさっているのでしょうか?

別役:読書が多いです。

病院経営に役立ちそうなビジネス書や、最近は医学文献や参考書もよく読みます。

中:既に病院長であられるのにまだ勉強されているのですね。

そのようなモチベーションを維持するには、どうすれば良いのでしょうか。

現状に満足し、なかなか危機感を持つことが難しい人も多いと思うのですが。

別役:私の場合、モチベーションの一つは危機感です。

第一線の臨床医の頃と比べると学会参加の機会も減りますし、

最新情報から遅れてしまうという危険を感じます。

周りから取り残されたくないとの焦りが私のモチベーションです。

そういう意味では仲間の存在も大きいと思います。

周囲の人が資格をとり知識や職域を広げていくのを側でみれば

「自分もやってみよう」となるのではないでしょうか。

当院の看護師もいろいろな研修を受けに行っています。

看護師の明るさが病院を変える

中:ちょうど今、先生ご自身の自己研鑽のお話から看護師へと話題が移りましたので、

看護師の成長についてお伺いさせていただきます。

先生が、看護師に今後もっと進化してもらいたいと思うことはどのようなことでしょうか。

別役:技術面を磨いていただくはもちろんとして、やはりコミュニケーションを大切にすることですね。

今の時代、何事も一人で行うのは危険です。先輩も含めて周りの人と仲良くしながら、

しっかりコミュニケーションをとり、業務を安全に進めていただきたいです。

その意味では、仲の良い雰囲気を作る力も大切です。

中:医師が治療に専念するために必要な、安全な環境や安心できる明るい雰囲気といったものは、

やはり看護師が作り出していく部分だと思います。

そのために、看護師自身が安全を意識し、明るさを心がけなければいけないのかなと

お話をうかがっていて思いました。

別役:明るさは重要です。

看護師はやはり人数も多いですから、病院の雰囲気を決めます。ですから明るい看護師がいいのです。

あとは、気のつく看護師も大切です。よく気がつく看護師がいると仕事がはかどります。

中:ご指摘は、医師と連携をとる中で看護師がいかにきちんと全体を見ているかという意味だと拝察します。確かに看護師が手際よく外来をコントロールできれば、医師はより治療に専念できるようになりますね。

別役:仕事の効率が良くなるだけでなく、見落としが減って安全性が向上する可能性もあります。

看護師へのメッセージ

中:それでは最後に、こちらの病院で看護師として働きたいと考えている方に向かって、

ひと言お願いします。

別役:看護師を目指している皆さん、看護師の皆さん、東京天使病院の別役です。

当院は地域の人たちの安心安全のために、職員スタッフ一同、研鑽しております。

職場の雰囲気が非常に明るく、楽しく働けるような職場を目指しております。

地域の方々のニーズをしっかり聞き出して、それに応えるような医療、看護を目指しております。

このようなことに関心がある方は、ぜひ当組織にも、興味を示していただけたら幸いです。

シンカナース編集長インタビュー後記

病院周辺も穏やかな雰囲気でしたが、

別役先生とお話しした時間は更に穏やかに時間が流れたという感じでした。

病院長の中にも、サポート型で家族を守るスタイルの先生もいらっしゃるのだということを知り、非常に新鮮でした。

一方で、医療に関しては経営者として、バランスを保ちながら経営をされていらしゃいます。

経営陣になることによって臨床から取り残されてしまうのではないか?という危機感をお持ちになるということからも、臨床も経営も第一線で活躍されようとされることが伝わってまいります。

また、病院長として看護師に望まれていることは

「コミュニケーションを取り、業務を安全に進めていただくこと」

「明るいスタッフが病院の雰囲気を決めます」

と病院内が明るく、患者さんも安心、そして安全な病院を目指されているということを教えて頂きました。

シンカナースのコンセプトとピッタリ合ったお話でした。

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