前編に続き小林先生に看護師へ期待すること、メッセージなどお伺いしています。
ICTで地域の開業医と連携
これからの取り組みについてお聞かせください。
小林:課題はこの地域で弱い医療、具体的には小児医療と周産期医療です。
それらを充実していきたいと考えています。
そのためのスタッフを増員することも考えています。
現状では医師の派遣を大学病院に依存している関係上、難しい面もありますが、
できる限り補強していきたいと考えています。
また、急性期病院として超急性期への対応も含めその機能を維持継続していくことも重要な課題です。
そのためには、地域と積極的に関わり合いを持つ必要があると考えています。
具体的な施策の一つとして、ICTを用い、開業の先生方のコンピュータとつなぎ、
当院にも受診されたことがある患者さんのデーターを直接確認できるシステムの構築を、いま始めているところです。
2018年の診療報酬改定への対応について教えて下さい。
小林:改定された点数に合わせて小児医療・周産期医療を拡充するとともに、
入院基本料の医療区分1をしっかり算定するようにしています。
看護体制については、今回の診療報酬改定とは関係なく昨年から「3人夜勤体制」をとり充実させています。
これをさらに充実させて看護補助加算を算定できる体制とし、適切に看護助手を配置したいと考えています。
いま一番難渋しているのは夜間の看護補助者の人材確保です。
お節介になってほしい
看護師に期待していることは何でしょうか。
いま全体的に看護師のレベルが向上してきています。
技術も向上し知識も豊富になり、我々が医者になった頃に比べて格段にレベルアップしたと実感しています。
現在、私が看護師に限らず医師を含めた医療者に望むことは
「人を慈しんで患者さんを愛おしく思う心」です。
このようなことは、医療者を目指した時に誰もが一度は考えたことがあると思います。
それをいつまでも持ち続けていてほしいのです。
ともすると技術や知識に走ってしまい、
患者さんを優しく思う心が少し疎かになることがあるのではないかという気がいたします。
知識や技術の習得に加えて他者を慈しむ心を培うことは、難しいことも確かです。
常に研鑽し常に高い目標に向かって行くことが求められます。
それを実践し続けることで、やがて心の余裕が出てくるのではないでしょうか。
モチベーションをナースが維持するために必要なことは何でしょうか。
小林:組織としてのバックアップも必要だと考えています。
例えば、病院全体が一丸となって日々の仕事をやりやすくすることも大切です。
余分な仕事はなるべく専門職に押し付けないことが重要です。
そのためには、業務の分業が必要とされるでしょう。
海外ではもう20年以上前から、看護師がすべき仕事とその周囲の補助職の方が行う仕事の区分けが、かなり洗練されてきました。
国内においても今これだけ看護師に高度のレベルの知識と技術を要求するのであれば、
すべてを看護師に要求することは不可能になりつつあります。
少し切り分けを考えなければいけません。
その一環として、先ほど申しましたように、いま看護補助者の充実を図っています。
看護補助者として勤務される方々に対して、気を付けてもらいたいことや期待することを教えてください。
小林:気を付けていただきたいことは特にありません。
むしろ、おせっかいになってほしいと思います。
患者さんの気分が少し落ち込んでいるようだ、といったことを敏感に感じ取り伝えてくださるような、
おせっかいをしていただきたいです。
ナースの名前は全員覚えている
院内スタッフのコミュニケーション維持のために取り組まれていることはございますか。
私自身のことを申しますと、医師はもちろん看護師も大変大切に考えており、看護師全員の名前を覚えています。
春の院内広報誌に新たに入職された方の名前が載りますと、それを手に取り病棟を回り、全員の顔と名前を覚えるのです。
夏前までに、新入職者の名前をほぼ全て覚えます。
顔と名前を覚えてからは、声をかける際になるべく本人の名前で呼ぶようにしています。
職員を大切にするのであれば、やはり「おーい君」ではなく「○○さん」と呼ぶべきではないでしょうか。
組織的なことでは、年に1回、近隣のホテルを会場に懇親会を催します。
一度に全員というわけにはいきませんので二回に分け、職員全員が楽しく過ごすことのできる時間を
確保しています。
また、月に一度の朝礼も行っています。
手術後は帰宅前にランニング
朝礼ではどのようなことをお話しされるのですか。
小林:病院の方針や現状、経営状況などを伝達します。
もっとも、そのような固い話だけでなく、私の趣味の話などをすることもあります。
例えば絵の話や本の話をしたり、あるいは病院周辺の樹木の写真を撮り披露したりしています。
このような柔らかい話をすることは、スタッフとの距離を縮めるのに役立っているのではないかと自負しています。
懇親会や朝礼の他に、院長就任時から多職種間の研修会をやりたいと考えています。
病院を改善するにはどうしたら良いかといったことを職員全員で考えていく機会を持ち、
そのことで職員のモチベーションが上がるのではないかと思います。
院内での研修会というと医療的テーマを取り上げた勉強会が多いのですか、そうではなく、
病院のことを職員みんなで考える研修会を企画しています。
その研修会によって、職員一人一人が何かに気づいてくれることを期待しています。
樹木が好きになられたのはいつ頃ですか。
小林:10年ほど前です。
「この歳になって名前を知らない木が多すぎるな」と思い、注意し見るように心がけているうちに徐々に好きになりました。
趣味として他にオーディオを組み立てることと、ゴルフをしています。
若い頃はトライアスロンをやっていました。
今でも手術のあった日は帰宅前にランニングをします。
長い手術をした後は運動をしてから帰宅しないと、なかなか寝付けないのです。
手術で疲れた後さらに走って帰宅すると、すぐに眠りにつくことができます。
看護師へのメッセージ
小林:私どもの病院は都心にも近く、少し足をのばせば東京ディズニーランドがあります。
非常に環境に恵まれた中にあり、高度な医療機器を備えた大変きれいな病院で、皆さん働きやすいと思います。
病院のスタッフは優しくて親切です。
さらにこれからも、より働きやすい病院にしていこうと思っています。
是非おいでください。
シンカナース編集長インタビュー後記
海を臨む穏やかな立地。
その中で、地域の総合病院として、江戸川区のニーズに対応されていらっしゃるという小林先生もまた、とても穏やかな方でした。
尊敬したお話の一つに、職員をとても大事にされていらっしゃるという内容がありました。
看護師全員の顔と名前を覚えるというのは、小林先生の優しさ溢れる経営者としての対応なのだと実感いたしました。
言うは易しでも、実際に行動に移される方はとてもエネルギーに溢れていらっしゃいます。
小林先生のように、穏やかで優しいリーダーのお話を伺い、自らの行動も改めて振り返るきっかけとなりました。