No.145 病院長 小林滋様(東京臨海病院)前編:患者さんに優しい医療

インタビュー

 

江戸川区における地域医療に貢献されていらっしゃる東京臨海病院の小林先生にお話を伺いました。

 

区内唯一の総合病院

 

病院の特色を教えてください。

 

小林:江戸川区は大病院が少なく、400床以上は当院の他もう1施設のみです。

さらに、産科や小児科等も備えたいわゆる総合病院は、当院が区内唯一の存在です。

そのため区民の方々の我々に対する期待は非常に多岐に渡ります。

当然それだけ病院としての責任もあり、やりがいを感じています。

 

 

医師になろうと思われた動機を教えてください。

 

小林:若いころ「何か困った人に自分ができることがないか?」と常々考えていました。

その思考の一つとして高校生の時に医療に出会い「ぜひ医学の道に進みたい」と思いました。

医学部に入学し、勉強することの一つ一つが驚きの連続でした。

解剖実習しかり、生理学の実習しかりです。

 

 

今も外科医として研鑽

 

外科を専門とされることは、卒業前に決められていたのですか。

 

小林:卒業の時点で決めていました。

在学中の実習で様々な診療科に回りますと、全ての科に進みたくなり、随分迷いました。

迷った挙句、神経内科、小児科、外科の三つの選択肢が残りました。

神経内科は、脳内の神経で生じている変化と患者さんの症状がしっかり符号することに非常に興味を持ったからです。

小児科は、医者になった以上は一人で全身を診られる医者になりたいという思いがあり、

それが可能な診療科は小児科だろうと考え、最後まで悩みました。

 

 

最後は「外科をやっておけば将来いろんなことができるだろう」と、勢いで決めた感じです。

そして外科の中で消化器外科を選択したのです。

 

卒業から消化器外科医としてひとり立ちするまで、何年くらいかかりますか。

 

小林:非常に難しい質問です。

外科医は常に勉強の連続で、今でも手術に入る前に手術書を読み直すことがあります。

術式も常に進化しています。

新たなエビデンスも日々蓄積されています。

常時それらを吸収していかなければなりません。

外科の医者になった以上は「何年経てば一人前」ということは、なかなか言えないのではないでしょうか。

 

患者さんに優しい外科治療

 

外科領域において、過去から大きく進化したことはどのようなことでしょうか。

 

小林:我々が若い頃は、病気を治すことが第一義でした。

もちろん今もそれは変わりません。

しかし、それに加えて低侵襲であること、身体に対するダメージが最も少ない方法で治すことの重要性が増してきています。

 

 

つまり、外科医は「病気を治しさえすれば良い」という時代から、

「患者さんに優しい医療」を目指す時代に変わりました。

そういう意味では、私が順天堂大時代に始めた腹腔鏡手術は、より推進すべきでしょう。

 

 

先生が腹腔鏡手術を始められたのですか。

 

小林:順天堂大の第1例からおよそ100例目まで行いました。

その頃、先輩方からしばしば「腹腔鏡と開腹のどちらが良いのか?」と聞かれたのですが

「受けるなら腹腔鏡、やるなら開腹」と答えていました。

しかし機器が進化して非常に操作しやすくなったことで、今なら

「やるのも腹腔鏡、受けるのも腹腔鏡」と言って良いと思います。

 

 

救急を断らず、小児科医療にも注力

 

現在、院長というお立場で最も大切にされていることは何でしょうか。

 

小林:病院長になる際に非常に簡潔なスローガンを立てました。

「良い病院にしたい」ということです。

では「良い病院とは何か?」ということになりますが、私が考える「良い病院」は、

我々の評価ではなく地域住民の皆さんと開業されている先生方が「あの病院に行くと必ず良くしてくれるよ」と言ってくださる病院です。

そういう病院にするためには、切磋琢磨し医療レベルを上げていくことが一番必要です。

職員に対しても日々、その必要性を伝えています。

 

 

実際に一番最初に取り組んだことは、救急の応需率を上げることでした。

いま「断らない医療」というフレーズが標語のように使われていますが、

私が医師になった頃はそれが当たり前であり、救急車は全て受け入れていたのです。

私が当院院長になって2年間、救急にかなり力を入れてきました。

当直に当たるスタッフの協力を得て、現在、応需率の向上という形で結果が現れてきています。

 

後編に続く

 

Interview Team