1/3に続き、上尾中央総合病院工藤潤看護担当特任副院長のインタビューをお届けします。<中編>では院内の教育制度についてのお話です。
看護部の”売り”は人材確保に通じる
毎年100人もの新人看護師を採用されていますが、確保する上での工夫や苦労はどのようなものがありますか?
工藤:以前は付属の看護学校から就職する割合が多かったのですが、増員に向けて全国で説明会を開催してまわり、今は全国各地様々な学校から応募があります。地方に行くと当院のことを知らない人がほとんどなので、ジョブローテーション研修の話をして何が売りなのかをしっかりと伝えることで毎年100人の採用を可能にしました。今の時代「こういうことができるぞ!」と強みを伝えられるものがないと確保することは難しいと感じています。
ここ数年はジョブローテーション研修のことが口コミで後輩たちに伝わり、それが宣伝となっているようです。採用試験を受ける人のほとんどがジョブローテーションのことに関心を持っていますね。7〜8年前から導入して毎年改善を重ねてようやく体制が落ち着いたところです。
転職せずにキャリアを重ねられる環境を提供
継続教育も様々なコースが充実しています。
工藤:スタッフの勉強・研修制度の充実も当院の”売り”の1つですね。認定看護師も21人まで増えました。ラダーを達成するとその先に専門的な知識が必要になってきます。当院ではがん看護・呼吸管理・慢性疾患看護等7つの看護専門コースで「専門分野研修」を実施しています。ラダーに沿った研修とは異なり、この研修に限っては自主性を重視したものとなっています。勤務時間外の開催ですが、それでも毎年170〜180人の看護師が参加し、半年ほどかけて知識の積み上げをしています。研修終了後は各部署で実践することで、現場のレベルアップもはかることができます。
院内にこれだけキャリアアップの環境が整っていると働き続けられる魅力がありますね。
工藤:でも長く勤めていると「他を見てみたい」という気持ちが出てきて辞める看護師もいます。そういう時私はとめないんです。どんな病院も100%ではありませんし、外を見ないとわからない部分も多いですからね。でも戻ってくる看護師も多いですよ。他を見てみることで初めて良さに気付くこともあるわけです。ここ数年は7%程度の離職率で経過しています。
就任当時は看護基準「10:1」、看護師約450人でスタートしましたが、年々増員して今は900人を越えました。新人看護師を毎年100人規模で採用していますし、これからHCU、化学療法室、緩和ケア、と規模が拡大するので看護師は今後も増員予定です。目標は1000人。「看護師が1000人越えたらいいね」と昔語っていたことが現実になりそうでうれしいですね。
<シンカナース副編集長 インタビュー後記>
新人看護師の教育といえば当たり前だったプリセプターシップを9年前に廃止し、「新人看護師が辞めない教育」を整備してきた工藤副院長。先読みする力で看護部の”売り”を作りその読みを的中させるのですから、経験とデータに裏打ちされた鋭い洞察力が発揮されているのでしょう。自分がジョブローテーション研修を受けて育ったらどうなっていただろうかと考えながら興味深くお話を伺いました。
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・No.3 工藤潤様(上尾中央総合病院様)「つながっていられる。励ましあえる仲間がいる」1/3
・No.3 工藤潤様(上尾中央総合病院様)「理想たる看護師像へと成長していきたいです」3/3
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