No.9 渡辺加代子様(渕野辺総合病院)「力の発揮する、道を作ってあげればいい」2/3

インタビュー

1/3に続き、 渕野辺総合病院の渡辺加代子看護部長のインタビューをお届けします。

vol,2では意外とも言える管理職になるきっかけや、管理職になってからの葛藤・やりがいについて伺っています。

 

管理職になる意外なきっかけ

 

ずっと病院でキャリアを積み重ねてこられたわけですね。 

 

渡辺:そうですね。病院の中でもいろいろな部署で経験してきました。途中2人の子供を出産しましたし。

当時は育児休業はなかったので、産前産後休暇だけですぐに復帰するのが当たり前でした。仕事を「続ける」か「辞める」しか選択肢がなかったんですね。

病棟なら夜勤は必須でしたし、夜勤ができないなら外来へ。外来にスタッフの空きがなければ働けない、そういう厳しい環境でした。

そんな中で私は「管理職になれば夜勤から免れることができる」という考えにいきついたんです。

 

それが管理職になるきっかけになったのですね。 

 

渡辺:病棟勤務で夜勤免除を申し入れたら、ひょっとしたら希望が通るのかもしれないけれど、そういうことを言っている先輩が優遇されている、という声も聞いていたので、そうはなれないなと。

堂々と夜勤免除で仕事を続けていくのは管理職だ、という結論に達して30歳で管理職試験の勉強を始めました。

その後ICUで主任になり、管理職としてのキャリアがスタートしました。

 

子育てと仕事と試験勉強、3つを同時進行されたのですね。家族のサポートは得られたのですか? 

 

渡辺:私の母が同居してくれていたのでだいぶ助けられました。家族のサポートがなければやってこられなかったですね。

住居の選択や仕事の仕方を自分で考えて足元をかためながら、仕事が続けられるような環境整備をしながらの日々でした。

特に2人目の出産は新年度までに産休から復帰することを考えて計画的に進めて、1月に出産、3月には復帰して新年度を迎える準備に入りました。

 

辞めるという選択肢はなかったわけですね。 

 

渡辺:まったくなかったですね。仕事がおもしろかったですし。それがよかったのかどうかはわからないですけどね。

子供が小さいうちは一緒にいる、という考え方もありますから。

両親のサポートを得ることが難しかった同僚は二重保育を活用して働いていましたよ。

 

スタッフに教わった「人を育てる」ということ

 

管理職として仕事をしてきた中で印象に残っている出来事はありますか? 

 

渡辺:管理職になって初めの頃は仕事を続けていこうと思いながらも、スタッフナースとして直接患者さんにケアの提供ができなくなったことへのジレンマを抱えていました。

自分が直接ケアをしたいという思いがありましたし、師長になってからも「1番のケアができるのは自分だ」と思い上がっているところがあって。

何か困りごとがあればスタッフから「師長さん!」と呼ばれて家族と話して円満解決、ということに喜びを感じていました。

ある時スタッフが「こういう患者さんへの対応に困っているんです」と報告に来たので、いつものように私が行こうとしたら「私が患者さんと話してみるので」と言って私を制止したんです。

その後彼女は上手に患者さんの対応をして、満面の笑みで「私できました!」と戻ってきました。

そんな、スタッフ自身で解決できる部分が増えてきたのを見た時に、だんだん引き離されたような気分になったんですね。

だけど、私が考えることと同じことをスタッフがやって、患者さんが満足して帰っていくことを誇らしく思えて。

あ、管理者の喜びは人を育てることなんだと思いましたね。そこから少しずつ管理の楽しさがわかってきました。

 

スタッフの成長を促すのが管理職の役割ということですね。 

 

渡辺:新人から育てて5年目くらいにそういう光景を見られると、幸せだなと思うようになりました。

最初は指示を出して進めてやっていたことが、自分たちの判断でやれるようになってきた。そういうところを見ていると頼もしいし管理のやりがいだなと思いますね。

働きたい!と思える手術室に

病棟以外にどこで勤務されたのですか? 

渡辺:大学病院を退職するまでの5年間を、手術室の師長として勤務しました。急性期病院の手術室って病院の要で経営を左右する場で、稼働が悪ければ病院は立ち行かなくなるんですね。そこで病院経営について学んで、手術室内の運営をスムーズにすることでいかに手術件数を増やすか、高度な手術が可能なように人材を育成していくのか、各科のドクターやMEさんたちを含めたチームで考えました。今までは手術室に医事課の職員や薬剤師を配置するという考えはなかったのですが、コストのとりもれがないようにチェックする必要がありましたし、麻薬もたくさん取り扱うわけですから、薬品を安全に使うために専属の薬剤師も必要でした。それを実現するために手術の実績データ等を関係部署に提示して交渉したりしましたね。その後手術件数が増えて、手術室のナースたちにも「あなたたちがこの病院を支えているのよ」と動機づけしながら進めていきました。ナースたちも頑張ってくれましたよ。

手術室勤務する看護師が、自分が経営の要の部署にいるという意識を持つのは難しいでしょうね。 

渡辺:そこをいかに動機づけするかが管理者の役割ですね。看護実習で手術室にも学生さんが来るんですけど、スタッフに「学生が手術室を希望して入職することを目標にして指導にあたりなさい」と言いました。そうするとどういうふうに外に向かってアピールするのか、自分たちの仕事について考えるようになるんです。

なかなかいないですね、最初から手術室を希望するという学生は。 

渡辺:そしたらその関わりの効果で、手術室で働きたいと希望する学生が出てきたり、院内ローテーションで手術室を希望する新人が増えてきたんです。昔からあった「手術の申し送りに行くと怖い」という印象が変わって、行ってみたいと思われるような手術室になった証拠だと思います。手術室の中でフィッシュ哲学を取り入れて楽しく仕事ができるような工夫もしました。

手術室のナースたちに方向性を示せばどんどん力を出してくれるということもわかりました。力の発揮する方法を教えてあげれば、道を作ってあげればいいのだと。手術室チームの一員として、プライドを持ち、スペシャルな部分を持てるようになったことで、モチベーションの高い集団になりましたよ。その時に主任さんたちがしっかりとスタッフたちに寄り添いながら教育をしてくれたのが頼もしかったですね。

スタッフだけでなく主任さんも育てていかなければならないですもんね。 

渡辺:3人の主任がいたのですが、それぞれが持っている力を発揮しやすい方向へ導いていくことが私の役割でした。みるみる変わっていっておもしろかったですよ。ここまでくれば任せて大丈夫だと思って次のステージへ行くことを決めました。大学病院で育ててもらった部分を地域へ還元していきたいと思っていたところに、声をかけてもらってこの病院で働くことになりました。

 

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